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篠田博之の「週刊誌を読む」

PRIDE騒動 訴訟も/フジ撤退の理由を追及

 最近『週刊現代』の元気がいい。『週刊文春』と論争を続けている細木数子問題については6月24日号の表紙にこうぶちあげている。「『週刊文春』読者に告ぐ!真実を知りたければこれを読め」。イケイケである。

 そして何といっても大きな話題は格闘技イベント「PRIDE」の追及キャンペーンだ。同イベント主催団体DSEとヤクザとの関わりを追及した同誌連載の影響か、6月5日にフジテレビが突如PRIDEの放送中止を発表。格闘技界に激震が走った。
 
 昨年末には紅白歌合戦に次ぐ17%の視聴率を獲得するなど同局のドル箱と言われていたイベントの放送を打ち切るというのだから、フジテレビにとっても大きな決断だったに違いない。DSEは人気選手などを揃えて6月8日に記者会見し、『週刊現代』を「捏造であり、事実無根」と激しく非難。既に名誉毀損で刑事告訴しているのに加え、今後損害賠償の民事訴訟も検討するという。

 前述した細木数子問題でも講談社は六億円余の高額訴訟を起こされているから、まさにガチンコ対決。問題はこうした「闘う誌面づくり」が、読者の喝采を浴び、部数が伸びることで支持を得るという方向に向かうかどうかだ。かつての週刊誌黄金時代ならまさにそうなったはずなのだが、この十年ほどは必ずしもそうではない。そのうえ訴訟の賠償金高額化など、逆風も吹いている。PRIDE側も存亡のかかる事態だから必死だろうし、大変なのはこれからかもしれない。
 
『週刊現代』は既に九回にもわたるキャンペーンを展開してきたのだが、今回のフジテレビの決定を受けて『AERA』など他誌も報道に踏み切っている。『FLASH』6月27日号は「仁義なき尻尾切りの全内幕スッパ抜き!!」と題する大きな特集。これまで裏社会の関与を知りながら格闘技人気にあやかって見て見ぬふりをしてきたのに今回突然打切りというのは勝手すぎる、とテレビ局を批判している。
 
 もっとも、フジテレビは打切りは契約違反が理由だとしており、ヤクザの関与を公式に認めたわけではない。日本で芸能などの興行にヤクザが関わってきたのは歴史的事実だが、許認可事業であり「茶の間の倫理」に支配されるテレビの場合、それを認めるわけにはいかない。それゆえテレビが興行の世界を近代化させた面もあるのだが、今回の騒動はその裏側を垣間見せたと言えよう。

東京新聞 2006.06.19掲載/メディア批評誌「創」編集長・篠田博之

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