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篠田博之の「週刊誌を読む」

細木「文春」VS「現代」/誌上をにぎわす占い師

 占い師の細木数子が週刊誌をにぎわせている。

 「週刊文春」や「女性セブン」が一週前に取り上げたのは、彼女がテレビドラマに怒って猛抗議をした事件だった。

 フジの月9ドラマ「トップキャスター」(天海祐希主演)の五月一日放送分にインチキ女性占い師が登場。「地獄におちますよ」というせりふなど、どう見ても細木数子がモデルで、細木はこれに怒って弁護士を通じてフジに抗議。親しいプロデューサーには自ら怒りの電話をかけたという。

 細木は現在TBS「ズバリ言うわよ!」とフジ「幸せって何だっけ」にレギュラー出演、ともに高視聴率を稼いでいる。「女性セブン」6月1日号によると、フジ側は「何かあるたびに高級な花を贈るなど、感謝の意を表してきた」。今回も「親しいプロデューサーがとにかく駆け付けて平謝り」したという。「視聴率の女王」に番組を降りられては大変だからだ。

 「週刊文春」は5月25日号でこの事件を報じていたが、翌週の6月1日号にはその釈明を兼ねて細木本人が登場した。といっても細木の狙いはその件でなく、「週刊現代」が5月20日号から始めた連載だった。

 「週刊現代」の連載「細木数子 魔女の履歴書」は、ジャーナリストの溝口敦さんによるルポで、辛口の筆致で細木の半生を探ったものだ。細木は「週刊文春」のインタビューで、フジのドラマ騒動については「尾を引く問題ではない」と語ったが、続けてこう述べている。「私が真剣に対応せざるを得ないと考えているのが『週刊現代』で連載されている『細木数子 魔女の履歴書』です。ここに書かれていることは、私の両親、先祖などに対する冒涜(ぼうとく)です」

 この「週刊文春」のインタビューも末尾に「以下次号」とあるから連載で、くしくも細木「週刊文春」vs溝口「週刊現代」の対決が始まることになったわけだ。

 少し気になるのは、このところ週刊誌などで細木批判が目につく一方、心霊師・江原啓之の連載や紹介記事が増えたことだ。女性週刊誌の入れ込みは相当なものだし、「週刊現代」も「江原啓之のスピリチュアル連載」なるものを始めた。

 江原の著書は続々ベストセラーになっており、その種のジャンルの新たな権威になりつつある。細木という権威に週刊誌が挑戦するのは歓迎だが、同時に別の権威を持ち上げているように見えるのは気になるところだ。

東京新聞 2006.05.29掲載/メディア批評誌「創」編集長・篠田博之

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