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篠田博之の「週刊誌を読む」

男性アナ盗撮を隠ぺい/影響力に見合わぬ制作側意識

 日本テレビ男性アナが盗撮で書類送検されていたという報道が、五月十七日に一斉になされた。盗撮が行われたのは三カ月も前の二月二十日。こういうニュースが突然、「~であることがわかった」と報道されるのは、週刊誌のスクープが前日に漏れた場合が多いのだが、今回もそうだった。

 十八日発売の「週刊文春」5月25日号が「日テレアナ『どっちの料理ショー』降板理由は『盗撮逮捕』」という記事を掲載していたのだ。新聞は男性アナが起訴猶予処分だったこともあり匿名報道だが、こちらはバッチリ実名と顔写真が掲載されている。

 記事によると、もともとこの事件、その男性アナが突如番組を降板し、視聴者から問い合わせがなされるといった事態から発覚したらしい。日テレ内部には箝口(かんこう)令が敷かれ、「事情を知りうる立場の社員に『内部情報を社外に一切漏らしません』と一筆を書かせた」(日テレ社員の匿名証言)という。

 自社の報道番組で盗撮をたびたび告発してきた手前、社員の盗撮は隠したいのだろうが、その結果が、隠ぺい工作を含めて週刊誌に暴露されるというのでは、お粗末すぎるというほかない。

 テレビ局の騒動ではもうひとつ、TBSで五月六日に放送された「白インゲン豆ダイエット」をめぐる放送事件がある。調理法の説明不足から実際に試した視聴者が嘔吐(おうと)や下痢に見舞われ、苦情が殺到した。

 「週刊ポスト」5月26日号がこの問題を取り上げているが、あらためて驚くのはテレビの影響力の大きさだ。番組放送後、全国各地で白インゲン豆の注文が相次ぎ、卸業者が例年の百倍の売れ行きだと語ったコメントが載っている。

 こういう事件からいつも思うのは、マスメディア、特にテレビの影響力が途方もなく巨大化したのに、作り手側の意識がそれに伴っていないという現実だ。

 さて、社会問題になっている共謀罪についての報道も紹介しよう。取り上げているのは新聞社系週刊誌が多いのだが、出版社系で、この雑誌ならではと言える取り上げ方なのは「アサヒ芸能」5月25日号。山口組総本部の定例会で共謀罪が議論になったというのだ。

 今は労組や市民団体への拡大適用が議論になっているのだが、確かにヤクザにとっては大きな関心事だろう。記事中で組長が「恐ろしい法律やで」と語っている。

東京新聞 2006.05.22掲載/メディア批評誌「創」編集長・篠田博之

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