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篠田博之の「週刊誌を読む」

自浄能力働かぬNHK/職員カラ出張で対応の悪さ

 「皆様のNHK」で先ごろ発覚したカラ出張不祥事には、誰もあきれ返ったに違いない。受信料不払いが深刻化しているさなかに、まだ内部でそんな不正が行われていたことも驚きだが、もうひとつ驚いたのはNHKの対応の悪さである。

  最初の謝罪会見が行われたのは四月十一日だが、その時の説明は、不祥事がNHKの内部調査によって明らかになったというものだった。ところが十七日になって、実は外部からの指摘がきっかけだったと謝罪訂正したのである。

 何ともわけのわからない話だが、その背後事情を『週刊新潮』4月27日号が明らかにしている。題して「『クビをかける!』と言い切って虚偽弁明をしたNHK『橋本会長のクビ』」。

 それによると、そもそも四月十一日の謝罪会見が午後八時半という異例の時間帯になったのも、同誌からの取材が入るなどしたため急遽予定を繰り上げた結果なのだという。同誌は十三日発売の号でそのカラ出張問題を取り上げており、NHKに最後の確認取材をかけていたのだった。

 NHK側は自浄能力が発揮されたという印象を与えるために「内部調査により」と説明していたのだが、十三日に開かれた自民党電気通信調査会の通信・放送産業高度化小委員会で、橋本会長ら幹部が議員に激しく責め立てられた。その結果、対応を協議したうえで十七日に当初の発表を訂正することになったのだという。

 内部調査が行われたきっかけは、四月五日に外部のスポーツ関係者からスポーツ報道センター担当部長に指摘がなされたことだという。

 その外部のスポーツ関係者は今回『週刊新潮』の取材に応じて、カラ出張の件で週刊誌から取材を受けたためNHKにそれを伝えたと語っている。

 結局、不祥事発覚は、週刊誌など他のメディアが動きだしたからと言ってよい。今回問題となったプロデューサーは、以前から不正のうわさがたっていたという。NHKがそれを放置していたのは自浄能力が働いていないことを示すものといえる。

 この間、NHKは「改革」なるものを次々とぶちあげてきたが、肝心の組織の腐敗が改まっていなかったというわけだ。これでまた受信料不払いが増えることをNHK首脳部は恐れているに違いない。

 巨大化したメディアの腐敗はいったいどうすれば改められるのだろうか。

東京新聞 2006.04.24掲載/メディア批評誌「創」編集長・篠田博之

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