トップ> 篠田博之の「週刊誌を読む」 >上海領事自殺の闇/女性使った新手の国際的詐欺も

篠田博之の「週刊誌を読む」

上海領事自殺の闇/女性使った新手の国際的詐欺も

「上海領事自殺『慟哭(どうこく)の遺書』これでもシラを切る鉄面皮・中国」(週刊文春4月13日号)「読売新聞にスッパ抜かれた中国美人局外交の全貌(ぜんぼう)」(週刊朝日4月14日号)「『電信官見殺し事件』外務省に潜む中国側スパイは誰だ?」(週刊プレイボーイ4月25日号)。
 
 二〇〇四年五月に起きた上海領事の自殺は、中国情報当局に女性関係をネタに脅され、外交機密提供を強要されたのを苦にしたものだった。読売新聞が三月三十一日付でその遺書をスッパ抜いたのを機に、この事件が再び波紋を広げている。

 発端は、昨年末の『週刊文春』のスクープだった。同誌1月5・12日合併号「激震スクープ 中国情報機関の脅迫に『国を売ることはできない』と首を吊った上海総領事館領事」と題する六ページにも及ぶ記事だ。

 続いて同誌は1月19日号「上海総領事館『電信官自殺』記事に小泉首相が『聞いてないぞ』と激怒!」、1月26日号「『上海領事自殺事件』国会追及で外務省・官邸・中国のウソが暴かれる」などと、連続してキャンペーンを張った。

 その報道がこれだけ大きな問題になったのは、日中関係の緊迫という政治背景もあるが、『週刊文春』の報道が極めて具体的だったためだろう。領事の自殺が闇に葬られたまま一年七カ月も経過したことに疑問を抱いていた内部関係者が恐らく情報源なのだろう。

 それにしても、ハニートラップと呼ぶのだそうだが、美人局(つつもたせ)の手口が外交の裏側でこんなふうに実際に使われているのが明らかになったのは驚きだ。

 さて『週刊文春』の発売中の4月20日号に、これも女性を使った国際的詐欺の話が載っている。題して「『シャラポワ詐欺』って何だ?」。

 ネットを使ってロシア女性と交際を呼びかける出会い系詐欺が横行し、シャラポワ詐欺と呼ばれているという。メールでやりとりし、実際にロシアへのお見合いツアーも存在するらしいのだが、登場する美人のロシア女性はサクラで、結局は日本人男性がお金をだましとられるのだという。

 詐欺としての手口は別に新しくない。ただ舞台が国際的で、ロシア女性が舞台装置に使われるというのが目新しい。「シャラポワ詐欺」という呼び名も何となくわかりやすい。でもシャラポワ自身は何の関係もないのだから、本人が聞いたらイヤな顔をするだろうな、きっと。

東京新聞 2006.04.17掲載/メディア批評誌「創」編集長・篠田博之

トラックバック(0)

このブログ記事を参照しているブログ一覧: 上海領事自殺の闇/女性使った新手の国際的詐欺も

このブログ記事に対するトラックバックURL: