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篠田博之の「週刊誌を読む」

小池環境相の“病気”/報道で膨らんだ怪情報

  何とも不可解だったのが小池百合子環境相の病気報道だ。彼女が三月二十九日に救急車で病院へ搬送されたのは確かなのだが、翌日から永田町では怪情報が乱れ飛んだらしい。四月六日発売『週刊新潮』4月13日号の見出しは「『危篤』『自殺未遂』説まで流れる小池環境相の病名」だった。
 
  自殺説は、倒れたのが風呂場だったという話からリストカットが連想されたようだ、などと怪情報を紹介したうえで、同誌は匿名の環境省幹部のこういう談話も掲載している。「脳梗塞(こうそく)です。ただし、ごく軽いもので、後遺症などはないようですがね」。
  しかも、この記事は末尾がこうだ。「彼女の道程に黄色信号が灯ったことだけは確かである」。これを見れば、誰もが小池環境相は危ないのではと思ったに違いない。

  翌日発売の『フライデ ー』4月21日号も「緊急入院 小池百合子『ほんとうの病状』」という見出し。小池環境相の秘書の「こちらでは(小池氏と)話をしていないのでなんとも言えません」という談話を紹介したうえで、「事務所スタッフがまったく会話していないという説明には、やはり不安が残る…」としめくくった。これらの報道が怪情報の火に油をそそいだのは間違いない。
 

 ところが、である。週明けに発売された『週刊ポスト』4月21日号を見ると、あれれ。グラビアに当の小池環境相が登場して「自殺未遂でも脳梗塞でもないわよ(笑い)」と語っている。見出しは「小池百合子『ピンピンしてます!」。

 熱が四十度以上あったことは認め、まだせきがひどいとは言うものの、「失恋が原因で自殺未遂って、デートするヒマもないのに、バカバカしい!」と怪情報を一笑に付す。記事の末尾は、こうだ。「永田町には、ガセネタが多い」。今回の騒動は、いったい何だったのだろうか。

 話題転換。理解不能な事件が目につく昨今でもとりわけ衝撃的だったのが、先の川崎マンション児童突き落とし事件だ。週刊誌は容疑者に昨年来、不可解な行動が見られたことを様々な証言で伝えている。被害者ばかりか容疑者の家族も衝撃を受けているだろうから取材・報道は慎重を要するが、こういう事件はきちんと解明されないと社会不安を招きかねない。
 

 RKB毎日放送記者のレイプ事件ともども、いったい日本社会はどうなっていくのかと暗然たる気持ちにさせられる。

東京新聞 2006.04.12掲載/メディア批評誌「創」編集長・篠田博之

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