トップ> NHK受信料督促裁判を考える >月刊『創』07年3月号①

NHK受信料督促裁判を考える

月刊『創』07年3月号①

NHKが訴訟を送り付けた人物に接触!
「裁判は受けて立つ」
NHK受信料拒否者の証言
(月刊『創』07年3月号)
七瀬恭一郎[フリーライター]

受信料不払い者へのNHKの「法的督促」が新たな局面を迎えた。
遂に民事訴訟が開始されたのだ。
この後も続々裁判が始まるのだが、その不払い者に筆者は接触。
局側との応酬の詳細を誌上報告する。


「法的督促」からついに訴訟へ

 1月24日、昨年11月からNHKが実施していた、受信料不払い者に対する法的督促が新たな段階へ突入した。ついにNHKと不払い者の直接対決とも言うべき民事訴訟の火蓋が切って落とされたのだ。

 1月23日までに、NHK広報局が発表した資料によれば、昨年11月29日に都内の受信料不払い者(NHKは放送受信料未収者と呼称)33件を対象に行った支払い督促に対する反応は、支払いに応じたのが16件、異議申し立てにより民事訴訟へ移行したのが9件(うち2件は東京地裁に移送)。4件が支払い督促が確定したことにより今後、給与の差押えなど強制執行に進む可能性が高いことが明らかになっている(残り4件は未送達など)。

 世間の注目は、何と言っても異議申し立てによる民事訴訟の行方に集まっているが、本稿校了直前(1月24日)に、先陣を切って開始された初の口答弁論では、被告は東京簡裁に姿を見せず、まずはNHKの思惑通りという印象が否めなかった。全国紙・社会部記者によれば、

「被告は、03年1月にカラーテレビの受信契約(月額1395円)を締結したものの、同年8月から不払いになっている都内の女性で、請求額は5万3010円。口答弁論には出廷しませんでしたが、事前に分割払いを希望する答弁書を提出しているため、今後は和解に向けた手続きが進むことになります。同様に、異議申し立てを行った中には分割払いを希望しているケースが別に2件あり、いずれも和解を希望するものと見られています」

 民事訴訟に移行した9件中、3件が分割払いを希望しているとのことなので、法廷で実質的な審理が行われるのは6件ということになるが、それぞれの被告の〝プロフィール″などについては、これまでにNHKが発表した、都内在住の不払い者(04年7月以降に発覚した一連の不祥事による不払い者を除く)であることと、その平均滞納額は約5万9000円であることしか明らかにされてはいない。なるほど、今回の法的督促の根拠とされているNHKとの受信契約締結義務をうたった放送法第32条第2項と、同第3項に基づく「日本放送協会放送受信規約」に照らし合わせれば、彼らが法的督促を受けたのも自業自得によるものと言えるのかも知れない。だが、彼らは都内だけでもおよそ19万件、全国的に見れば100万件は下らないとも言われる同じような不払い者の中から、あくまでもNHKによって恣意的に選ばれた、いわば〝見せしめ″にされた人々であることも忘れてはならないのではあるまいか。

 『創』1月号に掲載されている、拙稿「受信料不払いと政治介入… NHKが抱える内憂外患」の中でもレポートしたが、NHKが今回の法的督促の開始を表明した昨年10月1日から31日までのわずか1カ月間で、自主的に受信料の支払い再開や新たな受信契約の締結を申し出た件数は、2万4789件にも達した(支払い再開数:1万9203件、新規契約数:5586件)。その後も法的督促効果によって受信料収入は増加の一途をたどり、1月17日に菅義偉総務相に提出された07年度の予算案では、前年度比3・2%(190億円)増の6130億円を計上。06年度の決算でも、当初予定していた5940億円を120億円上回る6060億円になるという、強気の見通しが発表されたばかり。まさにNHKの狙いは効果てき面だったわけだが、それならばなおのこと、前述した33件の対象者が選出された経緯も含めて、今回の法的督促の「実態」について、改めて検証してみる必要があるだろう。

 当初、あまりにも具体的な情報に乏しく、インターネット上でも当事者サイドからの書き込みなどがまったく見られなかったことから、一部でNHKによる〝サクラ説″までささやかれた今回の法的督促だったが、その後、筆者は民事訴訟に移行した9件のうちの1人との接触に成功。おぼろげながら、その「実態」についてつかむことができた。かの人物が、確率にしてわずか0・02%にも満たない法的督促のターゲットにされたのは何故か。その証言から浮かび上がってきたのは、これまでのNHKの説明とは食い違う、驚くべき「実態」だった。

トラックバック(0)

このブログ記事を参照しているブログ一覧: 月刊『創』07年3月号①

このブログ記事に対するトラックバックURL: