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NHK受信料督促裁判を考える

月刊『創』07年3月号②

NHKから届いた「督促状」の中味は

 今回、筆者が接触した人物を仮に青木雄一氏と呼ぶ。青木氏は、都内東部に在住。妻子持ちのごく普通の会社員である。簡裁を通じて送られてきた支払い督促によれば、請求金額は4万1850円。滞納期間は、04年4月以降の30カ月分とされている。青木氏が受信料の支払いをストップした理由や、支払い督促が送られてくるまでのNHK側とのやり取りについて詳述する前に、まずは、実際の督促状とはいったいどのようなものなのか、そこに書かれている内容から紹介していくことにしよう。

 青木氏のもとへ届いた督促状は、A4の用紙5枚がホッチキス2カ所でとめられたもので、1枚目には、事件番号、一回り大きな「支払督促」の文字、東京簡易裁判所の担当書記官の名前などとともに、以下のような文言が綴られている。

〈当事者の表示、請求の趣旨・原因は、別紙記載のとおり。

 債務者は、請求の趣旨記載の金額を債権者に支払え。

 債務者がこの支払督促送達の日から2週間以内に督促異議を申し立てないときは、債権者の申立てによって仮執行の宣言をする。〉(原文ママ・以下同)

 ここでいう債権者とはNHKのことであり、債務者とは青木氏のことにほかならない。それについては、2枚目の「当事者目録」に、それぞれの住所と名前入りで明記されているのだが、注目すべきはNHKの代理人弁護士の欄。東京・丸の内にあるH法律事務所が送達場所に指定され、代理人として4人もの弁護士の名前が書き連ねられているのだ。元NHK関係者によれば、「同法律事務所はNHKの外部コンプライアンス窓口に指定されていたように記憶している」とのことだが、端から見ればちょっとしたドリームチーム(大弁護団)の趣であり、青木氏に限らず受け取った側に相当の精神的プレッシャーをもたらしたであろうことは想像に難くない。

 続く3枚目には、「請求の趣旨および原因」とあり、請求金額や請求の原因などについて説明がなされているのだが、これがお世辞にも分かりやすいとは言えない悪文ときているのだから、始末に悪い。大事な部分なので、少々長くなるが以下に引用すると--。

〈請求の趣旨

1 金41850円

2 上記金額に対する、本支払督促送達の日が奇数月に属するときはその月の翌月初日から、本支払督促送達の日が偶数月に属するときはその月の翌々月初日から、完済の日が奇数月に属するときはその月の前々月末日まで、完済の日が偶数月に属するときはその月の前月末日まで、約定の2か月あたり2%の割合による遅延損害金。

3 金3500円(申立手続費用)。

請求の原因

1 放送法および日本放送協会放送受信規約

 債権者は、放送法に基づいて設置された法人であり、同法第32条第3項に基づき、総務大臣の認可を受けて、別紙日本放送協会放送受信規約概要記載のとおり放送受信契約の内容を定めた日本放送協会放送受信規約(以下「規約」という)を定めている。なお、次項以下において「期」とあるのは、規約第6条に定める2か月ごとの支払期間をいい、4月および5月を第1期とし、以後第6期まで同様である。

2 放送受信契約の締結

 債権者と債務者は、平成14年5月28日、カラーの放送受信契約(以下「本件契約」という)を締結し、支払区分・支払コースを訪問集金・毎期払とすることに合意した。

3 放送受信料の不払い

 しかるところ、債務者は平成16年4月1日以降の放送受信料(平成16年第1期以降の放送受信料)を支払わない。

4 まとめ

 よって、債権者は、債務者に対し、本件契約に基づき、カラー、訪問集金・毎期払(月額1395円)による平成16年4月1日から平成18年9月30日(平成16年第1期から平成18年第3期)までの30か月分の放送受信料合計41850円およびこれに対する本支払督促送達の日が属する期の翌期の初日である請求の趣旨記載の日から、完済の日が属する期の前期の末日である請求の趣旨記載の日まで約定の2か月あたり2%の割合による遅延損害金の支払を求める。〉

 こむずかしい用語が並んでいるため、ザッと目を通しただけでも気が滅入ってくるが、ここで見落としてはならないのは、NHKが滞納額に対して2カ月あたり2%の遅延損害金と、申し立ての手続き費用として別途3500円を請求している点だろう。これまでNHKは、滞納額以外の付帯請求に関しては詳らかにしてこなかったので、今回、それらの内容が明らかになったことは注目に値する。

 また、ここでは省略するが、残る4枚目と5枚目には、日本放送協会放送受信規約概要がこれ見よがしに印刷されており、いかにもという印象が拭えない。さらに付け加えるならば、この督促状が各自に送達されたのは昨年12月の第2週頃のことであり、あらかじめ、ちょうど異議申し立てのタイムリミットが年末近くになるように設定されていたことになる。そうでなくても世間が多忙を極める年の瀬に、冷静に異議申し立て書をしたためたり、すぐに弁護士の手配に動けた人がそうそういたとは思えず、これを受け取った人たちの多くは、渋々NHKの言いなりになるしかなかったことだろう。4人の弁護士の連名といい、こむずかしい文章の羅列といい、この督促状は、極めて高圧的で初めから債務者に混乱を与えることを目的とした、まるで〝脅迫状″まがいのシロモノだったと言っても過言ではないのではないだろうか。

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