篠田博之の「週刊誌を読む」
原発特集で「週刊現代」を筆頭に部数増
原発事故をめぐる政府の対応への市民の不信感が頂点に達し、同時に政府発表を伝えるマスコミへの不信感も高まっている。
そんな大衆意識に依拠する週刊誌ジャーナリズムは、政権や新聞・テレビなど大手マスコミ批判を展開、部数を伸ばしているようだ。特に目立つのが『週刊現代』で、震災以降、女性タレントの代わりに震災や原発の写真を表紙に据え、大々的な特集を組んでいる。実売部数もかなり伸びているという。
5月21日号は「原発マネーに群がった政治家・学者・マスコミ」と表紙に大書し、一冊の大半を原発関連にあてるという大特集だ。昨年、検察批判の空気が市民社会に広がった時に、それに合わせた誌面展開で部数を伸ばしたのが『週刊朝日』だったが、今回の原発問題では『週刊現代』がその位置を占めているといえそうだ。
ライバル誌の『週刊ポスト』に「政府・東電の無能をいいことに煽り放題!」(同誌4月22日号)などと名指しで批判され、確かに従来から地震報道などで危機煽りといった印象はあるものの、『週刊現代』の原発特集、なかなか読みごたえあるのも確かだ。
今回の原発事故で明らかになったのは、従来の政治家や学者を含めた日本の原子力をめぐる体制全体が歪んでいたということだ。5月21日号は、その構造にメスを入れている。例えば「楽しい原発視察ツアーと湯水のごとき広告費」という記事では、こんなエピソードが紹介されている。
スポーツライターの玉木正之氏が過去、原
発の広告記事への出演を依頼された時、代理店から提示された謝礼は五百万円。玉木氏は原発反対だったため、折り合いがつかず掲載されなかったが、謝礼の額に「桁がひとつ違う」と驚いたという。
また、原子力専門学者についても、高木仁三郎氏のように原発反対を唱えるとアカデミズムの世界で徹底的に排除されたという事例が紹介されている。国策とされた原発推進のためには湯水のように金が使われ、反対するものは徹底的に迫害されたというわけだ。
そういうこの国の原子力をめぐる従来のあり方が問われている。皆が自分の問題として考えるべき事柄だ。
(月刊『創』編集長・篠田博之)
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