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篠田博之の「週刊誌を読む」

皇族の被災地訪問をめぐり週刊誌で議論に

 震災の被災者を皇族が見舞う光景が報道され話題になっている。

 守旧派の立場から皇室にツッコミを入れる『週刊新潮』は、5月5・12日号に「慰問『天皇陛下』をカシャカシャ撮影する『避難所のマナー』」という記事を掲載している。

「多くの人が両陛下に近寄っていき、携帯電話でカシャカシャと撮影し始めるんです。"うわー""来たー"などと言って、50㌢もないかと思えるほどの至近距離に近づき、カシャカシャやる10代の若者もいた」。この光景をいかがなものか、というわけである。

 実は同誌は4月14日号でも「両陛下『お見舞い』に胡坐で応じた避難者に誰か礼儀を」という記事を掲載。天皇皇后が膝を折って話しかけているのに被災者が胡坐で応じたのは何事かと書いていた。

 興味深いことに、この記事に対して宮内庁のホームページにこんなコメントが掲載された。「天皇皇后両陛下は日頃から側近に対し、身体の不自由な人、あるいは何等かの事情により正座のしづらい人には決して無理をさせないようにとおっしゃっています」

 『女性セブン』4月28日号「雅子さま『子離れ』実現に被災者への誓い」にも興味深い話が載っている。避難所を訪れた雅子妃に「愛子さまは、学校のほうは大丈夫なのですか」と問いかけた母親に、隣にいた三十代の女性が「母親の言葉にびっくりというか、身が縮みました」と語っているのだ。

 慰問に訪れた皇后に小さな子どもが「おばあちゃん」と話しかけたという逸話もある。皇室タブーの時代を知る人には仰天のエピソードかもしれない。でも市民の空間に入るとはそういうことだ。無遠慮に携帯を向ける若者の行動も、皇室側は覚悟のうえだろう。 

『週刊ポスト』5月6・13日号「天皇『被災地巡幸』の御心」は、今回の皇室の被災地訪問を、敗戦直後の昭和天皇の全国巡幸を彷彿とさせる、と書いている。そして、両者の決定的な違いは、今回天皇皇后が膝をついて被災者に言葉をかけていることだという。

皇室のあり方を考えることは、日本人を考えることでもある。今回の皇族の行動はその大事な素材を提供しているように思える。

(月刊『創』編集長・篠田博之)

 

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