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篠田博之の「週刊誌を読む」

福島第一原発の現場作業をめぐる話

 『アサヒ芸能』4月28日号に興味深い記事が載っている。「経験不問・日給3万円『原発決死隊』求人に本誌記者が覚悟の志願!」求人サイトにあった福島第一原発作業員募集に記者が応募してみたというのだ。

仕事内容は原発での清掃作業、技術も経験も不要、「寮完備で食事付き、日給は実働3時間で3万円」。募集しているのは愛知県の人材派遣会社だった。  

応募するとさっそく連絡があったが、履歴書に血液型を書いてくれと言われ、記者は「血液型を把握するということは危険が伴う作業ではないのか」と心配する。すると先方の男は「コンクリのガラ(廃棄物)を手で運ぶ程度やから、安心してください」「防護服も支給しますから」などと応えたという。

しかし、その後、先方と連絡がとれなくなってしまい、体験取材は不発に終わる。本当に福島第一原発作業員募集だったのかどうか真相はわからない。

『週刊新潮』4月28日号には「騙されて『福島第一』に来た『孫請け労働者』」という記事が載っている。「大手ゼネコンの孫請け会社で働く、38歳の日雇い労働者」で「20年のキャリアを持つ、ベテランの重機オペレーター」の話だ。

社長に呼び出されて東北自動車道を北上、到着したのは福島第一原発近くの待機所。その場で防護服に着替えさせられ、原発に向かう。火力発電所の仕事と聞いていたので「話が違うじゃないか」と社長に詰め寄ったが、後の祭りだった。

翌日、線量計を持って四号機周辺の路面を整地する作業に従事。「作業が終わって線量計を見ると、数値はなぜかゼロ。後から聞いたら、壊れている線量計ばかりだったらしい」という。

原発作業員をめぐるこういう話は以前から指摘されていた。『週刊現代』4月30日号「原発 このとんでもない現場」は、元作業員らの証言を紹介。放射線に関する安全教育も徹底していないばかりか、「原発については素人同然の労働者たちが現場で働いているため、事故が多発する」と書いている。

原発事故の復旧作業が長引くと、作業員の確保など、様々な問題が浮上するのは明らかだ。事態は深刻だ。

(月刊『創』編集長・篠田博之)

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