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篠田博之の「週刊誌を読む」

マイケルさん白人願望?「思い」に触れぬメディア

 マイケル・ジャクソンに関する報道や論評を見ていて気になるのは、彼が黒人という自分のアイデンティティについてどう考えていたかという問題だ。   
 例えばマイケルが薬を使って肌を白くしていたという指摘がある。いや肌が白くなったのは病気のせいだという説もあって、ネットでは議論が真っ二つに分かれている。
 それについて『週刊朝日』7月17日号に登場した"ロシア人主治医"エフゲニー・アクショーノフ氏は率直にこう語っている。「マイケル自身、『肌を白くするため、漂白する薬を常用している』と私に打ち明けたことがありました」
 『サンデー毎日』7月19日号「マイケルがオバマになれなかった理由」はこう書いている。「マイケルが白人のロックスター、エルビス・プレスリーの娘リサ・マリー・プレスリーと最初の結婚をしたのもコンプレックスの裏返しか。一方のオバマが、奴隷の子孫である黒人のミシェルを選んだのと好対照だ」
 『SPA!』7月14日号の坪内祐三・福田和也両氏の対談では、マイケルの音楽との関わりでこの問題を論じているのだが、坪内氏がこう語っている。「黒人初のアメリカ大統領オバマが誕生した年に、『白人になりたかった黒人』のマイケルが死ぬっていうのは、すごくピタッとくる気がするんだよ」「やっぱりマイケルの音って、黒人のルーツ・ミュージック感がないんだよね。でもね、逆にそれが、70年代末期から80年代は新鮮だった」
 坪内氏は、マイケルがそうなった理由として、ちょうどアメリカで黒人解放運動が盛り上がった時期に彼がショービズの成功者になっていったという事情を指摘する。「黒人解放運動が盛り上がれば上がるほど、ショービズの世界では『お前ら黒人なのに白人よりカネを稼いで』と、激しい差別を受けるわけだから。そういうトラウマが『白人になりたい』という願望として、マイケルを捉え続けたんだと思う」
 冒頭に「気になる」と書いたのは、興味深いこのテーマについて、テレビの情報番組などがほとんど触れないことだ。差別がからむ微妙な問題だからだろうか。

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