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編集長の目

適性検査は何のため?   篠田博之

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 マスコミでもSPIなどの適性検査を実施する会社が多くなった。それに伴っ
て書店の就職コーナーにはSPI対策本があふれるようになった。その適性検査
の中味についてここで紹介しようというのではない。
 ここで考えてみたいのは、あの適性検査はいったい何のために実施してい
るのか、ということだ。就活に追われてそんなことを考える余裕はなくなっ
ているかもしれないが、大事なことなのでここで考えてみたい。

 もともとSPIとは70年代以降、リクルートの関連会社で労務管理のために
開発されたものだ。それがこの10年ほどマスコミにも一気に浸透したのには
理由がある。マスコミ内定者で、学業成績は優秀だが、入社後精神的不安定
になったりする人が増えたからだ。
 昔は労務管理といえば新入社員については、学生運動などに参加していな
かったかどうか身元調査をすることが多かった。ところがいまや学生運動経
験者などほとんど存在しない。それに代わって、別の労務管理問題が深刻に
なりだしたのだ。精神的に不安定になったり、自殺や薬物依存といった事例
が増えたのだ。

 だから入社時に、組織の中で周囲に溶け込めるか、精神のバランスはとれ
ているか、協調性があるかといった、パーソナリティに関わる部分をチェッ
クするようになった。学業や知識の多さなどは一般常識試験でチェックすれ
ばよい。適性検査はそうでなく、その人のパーソナリティやメンタルな面が、
その会社で仕事をするのに適しているかどうかをみるためのものだ。つまり、
採用にあたって、そういう要素を勘案する必要度がこの10年ほど増したとい
うわけだ。

 特にマスコミに合格するのは、高校・大学までは、いわゆる優秀だと言わ
れてきた者が多い。そういう人が社会に出て、人間関係でつまづいたり、組
織の中でうまく協調できなかったりして、挫折感を味わう、その機会が入社
直後であることが多いのだ。
 この10年ほど、目立つようになったのは、大手マスコミで、入社後1年以
内に辞めてしまう人が増えたことだ。これは終身雇用制の崩壊という社会シ
ステムの変化とも関わっているのだが、もっと深刻なのは、自殺してしまっ
たりする人もいることだ。適性検査はそういう悲劇を防ぐために実施してい
るのだが、次号で実際に起きた事例を紹介していこう。(以下次号)

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