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メディア先行!「婚カツ」詐欺事件の展開

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 『フライデー』11月27日号によると、埼玉県の「婚カツ」詐欺事件報道の過熱ぶりに、「捜査に多大な影響を及ぼす」として、さいたま地検が抗議し、記者クラブの取材を拒否しているという。

 しかし週刊誌などの報道は過熱の一途だ。問題の女性と最後に同居していた男性は週刊誌各誌に登場しているし、女性がブログで本命であるかに書いていた「Sさん」なる男性のもとへも取材陣が押しかけているらしい。 

 『週刊朝日』11月20日号には記者がその男性の職場を直撃した様子が描かれている。「S氏の勤務先を訪ねると、応接室で記者の名刺を見るなり、『例の件ですよね?』と自ら切り出した」「『何も言えません。職場にこんなふうに来られると怪しまれるので、本当に勘弁してください』と困惑した様子」

 まさにメディア先行の事件展開だ。時を同じくして鳥取県でも三十五歳の女性の周辺で六人の男性の不審死が伝えられ、週刊誌はこちらも大々的に実名報道を行っている。

 中高年男性が次々犠牲になったばかりか、両事件とも容疑者女性が決して美人とはいえない肥満型。いったいなぜ...という世俗的関心に週刊誌は焦点をあてている。『SPA!』11月17日号の坪内祐三・福田和也両氏の連載対談の今回の見出しはズバリこうだ。「力士並みの詐欺女に貢ぐとは。中高年の男は寂しいものなのだ」

 それにしてもこのところ殺人事件のニュースが多い。島根県の女子大生殺人事件も連日報道されているし、十日の市橋達也容疑者逮捕時はテレビの過熱ぶりがものすごかった。

 その同じ十日に、写真家・篠山紀信氏の事務所などが警視庁の家宅捜索を受けた事件も気になるところだ。昨年夏に撮影され、今年一月に出版された写真集が公然わいせつの疑いをかけられたというのだが、今なぜ?という疑問は拭えない。

 『フライデー』11月27日号によると、ここ数年、路上や電車内など公共の場で撮ったアダルトビデオの関係者が次々と立件されており、今回の件は有名写真家といえど例外ではないという当局の意思を示したものではないかという。表現に関わる問題だけに、この件はフォローが必要だ。(月刊『創』編集長・篠田博之)

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