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篠田博之の「週刊誌を読む」

格差社会への皮肉?                                                     若者の「蟹工船」ブーム

「衝撃の事実が発覚した」と作家の高橋源一郎さんが『週刊現代』6月7日号のコラムに書いている。「突然の『蟹工船』ブームについて、新聞や週刊誌の取材を受けたのである。なんと、このブームの震源地はタカハシさんだというのである!」

 高橋さんは前年、ゼミで『蟹工船』をテキストに採用したところ、「他人事ではないような気がする」と学生たちに好評だった。その話を作家の雨宮処凛さんと新聞の対談でしたのがブームのきっかけになったというのだ。

 確かに『蟹工船』がワーキングプアと呼ばれる若者たちの間で読まれているというのは、昨年から雨宮さんらが口にしてきたことだ。それも当初はある種のギャグとして言われていたのだが、いつのまにか本物のブームとして同書が真剣に読まれるようになって来た。

 ある意味では、この現象自体が、今の為政者の失政に対する最大のブラックジョークかもしれない。格差が拡大するばかりの日本社会は、これからどうなってしまうのだろうか。

 で本題に入るのだが、川田亜子アナウンサーの自殺には驚いた。同じメディアで仕事をする者として考えさせられたのである。報道によると、この間彼女は精神的に落ち込み、将来に対する不安も語っていたという。もともと報道の仕事をしたいと考え、TBSを退社してフリーになったのもそのためだったという。しかし、その後も報道の仕事では思うように評価がなされず、悩んでいたというのだ。

 この話、今の女子アナの抱える問題点を浮き彫りにしているように思える。女子アナとは、メディアの働き手でありながら一方では放送局の戦略的な商品という二面性を持つ。それゆえにメディア社会の寵児である一方、自分のイメージが一人歩きしてしまうことに思い悩む人もいるのではないだろうか。

 もちろん自殺の原因など本当のところはわからないから、詮索しすぎるのは禁物だ。週刊誌ではもうひとつ男性関係も取りざたされ、所属事務所の幹部男性が一部ではほとんど犯人扱い。『フライデー』6月13日号はその男性に直撃取材を敢行している。でもこれ、もし間違いだったら死者に鞭打つ行為のような気もするのだが。