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篠田博之の「週刊誌を読む」

大弁護団への批判過熱/ 山口・母子殺害 顔写真を並べ立て

 まるで極悪人のさらしものである。『フライデー』7月20日号「山口・光市母子殺害  本村洋氏 を絶句させた『大弁護団21人』の素顔」。安田好弘主任弁護人を筆頭に光市母子殺害事件弁護団二十一人の実名や経歴、そして主な弁護人の顔写真を並べたてたものだ。

  六月二十六日から三日間、広島高裁で開かれた審理を伝えるマスコミ報道は予想通り、弁護団を批判する内容でほぼ一色だ。『週刊文春』7月12日号も「光市母子殺害犯『聞くに堪えない』傍聴11時間」という傍聴記を掲載している。

 確かに被害者の本村洋さんの話は胸を打つし、報道する側が被害者感情を斟酌するのは当然だ。しかし、この裁判をめぐる報道はあまりにもエキセントリックになりすぎていないだろうか。その典型が冒頭に紹介したさらしもの報道で、同様の記事は『週刊ポスト』も6月15日号で「光市母子殺害犯を守る『21人人権派弁護団』の全履歴」と題して掲載していた。

 テレビや週刊誌の弁護団非難報道を受けて、弁護士らへの脅迫や嫌がらせが続いているという。全員の実名を掲載するといった記事は、そうした風潮をあおっているような気がしてならない。

 無罪推定どころか、被告人を弁護することさえ許せないという雰囲気である。一般の市民が被害者に同情してそうした感情を抱くことは理解できないでもない。しかしマスコミがそれを一方的に煽るという風潮は、危ういと思えてならない。

  ついでに書いておけば前述の『フライデー』のさらしもの報道だが、掲載された弁護団メンバーの写真が、古い写真なのか、私の知ってる中道弁護士も松井弁護士も全然似てない。こんな写真を載せることにいったいどんな意味があるのかと思ってしまう。

 紙幅が尽きかけたが、面白かった週刊誌記事を二つ。ひとつは『週刊新潮』7月12日号「『取材陣150人』アメリカを驚かせた『ハンカチーフ・プリンス』の怪しい報道合戦」。ハンカチ王子をめぐるマスコミ報道の異常さを皮肉たっぷりに取り上げたものだ。

 もうひとつは『週刊文春』7月12日号「全番組視聴率20%割れ 徹底調査 女がテレビを見なくなったぞ」。視聴率二〇%以上の皆が熱狂する番組が年々減り、ついにこの六月十八日からの週では一本もなかった。これは過去十年間なかった出来事だという。テレビ界にとってこれ、意外と深刻な事態かもしれない。(月刊『創』編集長・篠田博之)

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