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篠田博之の「週刊誌を読む」

捜査資料で「引用」合戦/ 供述と調書 違う例も

 警視庁の巡査長がウイ ニーを介して一万件もの捜査資料ファイルを流出させた事件は既に報道されているが、その資料の中身が次々と週刊誌で報じられている。

『週刊朝日』は資料に 書かれた人物に確認の電話をかけているらしく、6月29日号「警視庁極秘情報 ウイニーで流出」には電話を受けた人たちの反応が書かれている。売春クラブを利用した客の供述調書が流出した事例ではこうだ。

「『えっ、いや、そんなこと知りません。いったい、え、私はどうしたらいいんですか? 寝耳に水で、何とも言いようがありません』と動揺した様子で語った」
 そりゃ動揺するだろう よ。まさか情報が漏れると思わず捜査に協力したその調書が流出し、週刊誌からいきなり電話がかかってきたわけだから。

 複数の週刊誌が紹介しているのは、暴力団の名簿データに記載されていたという三人の女性タレント。『アサヒ芸能』6月28日号は「大物組長『情婦女優』の実名」と題して、うち一人の名前を公表している。「所属事務所にコメントを求めたところ『担当者が不在なので、わかりません』との答えだった」とあるが、真偽確認もできぬまま実名を公開したということなのか。表紙には「独占スクープ!」と書かれているが、これ本当にスクープなんだろうか。

 そのほか幾つかの週刊誌が紹介しているのは、タレントのインリン・オブ・ジョイトイさんの事例だ。ホームページ上に「死ね!」などの脅迫や暴言が書き込まれた事件で警察に被害届けを出したその調書が流出した。『フライデー』7月6日号で、本人はこうコメントしている。

 「流出した内容はすでに知られていることばかりなので困りませんが、私の情報が流出していたことを最初に知ったのが、警察からの連絡ではなく雑誌の取材だったのは残念。まず警察からの報告と謝罪が欲しかった」

 その後警察から謝罪を受けたが、彼女の怒りは収まっていないという。なぜなら、彼女が供述した内容と調書の中身に相違点があったことがわかったからだ。警察が作成した調書が供述内容と違っていることがあるというのはよく言われることだが、その違った内容が流出したというのでは、本人が怒るのも当然だ。

 今回資料を流出させた巡査長は、エロ動画を集めるためウイニーを使って、この事態を起こしたのだという。いやはや。(月刊『創』編集長・篠田博之)

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