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篠田博之の「週刊誌を読む」

首相VS朝日 政治対立に/広告の影響力、問題複雑化

 以前書いた安倍首相と 『週刊朝日』の対立が大きな問題になりつつある。安倍首相の秘書ら三人が九日、ついに朝日の提訴に踏み切ったのだ。

 このニュースを読売新 聞は社説も含めて、また産経新聞は夕刊フジの一面トップで、大きく報じた。いずれも朝日にやや批判的なスタンスだ。さらに十日には、中川秀直自民党幹事長が「提訴は当然」と安倍首相を掩護射撃した。

 気になるのは、安倍首相と朝日が対立し、読売・産経が朝日に批判的なスタンスでそれを報じるというあり方が、例のNHK番組改変騒動の時と全く同じ構図であることだ。この問題、当事者の予想を超えて、大きな政治対立の流れに巻き込まれてしまったようだ。

 話を複雑にしているのは、読売新聞が社説の見出しで「新聞広告、中吊りも同罪では」と書いたように、週刊誌の広告の影響力が雑誌本体よりも大きいという現実があるからだ。週刊誌の新聞広告や車内吊りが掲載される数は、週刊誌本体の部数をはるかに超える。

 『週刊朝日』が今回の件で謝罪広告を毎日新聞、岐阜新聞といった特定の新聞に掲載したのは、それらに載せた広告がよりどぎつい表現だったからだ。週刊誌の記事でなく、その広告表現が問題になった場合、どんな対応をすべきかという、新しい問題を今回の件は浮き彫りにした。果たして裁判所はどんな判断をくだすのだろうか。  

 話題転換。以前本欄で書いた吉本興業のお家騒動だが、その過程で明らかになった吉本と暴力団との黒い関係がNHKで問題になった。週刊誌で暴力団との関係を報じられた中田カウス氏の収録分をNHKが放送しないことを発表したのだ。『週刊新潮』5月17日号「中田カウスの『テレビ界追放』がNHKから始まった!」によると、NHKの対応を見て、今度は民放がどうすべきか頭を抱えているという。

 『FLASH』5月22日号は「吉本興業お笑いコンビはシャブ常習者だった!」という暴力団幹部の証言を掲載している。吉本お家騒動は思わぬ問題に飛び火しつつあるようだ。

 でもこの騒動、相変わ らずテレビのワイドショーや情報番組は報道しない。有力タレントを抱える吉本興業やジャニーズ事務所のスキャンダルはタブーで扱えないのだ。テレビ界のこういう情けない体質には、いつもながら呆れるばかりだ。

(月刊『創』編集長・篠田博之)

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