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相模原事件・植松聖被告が面会室で「死刑は怖くないか」との問いに答えた言葉は

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 本業である月刊『創』の締切時期だが、毎日慌ただしい。相模原障害者殺傷事件・植松聖被告に3月16日に出された死刑判決をめぐって連日、いろいろな動きがあるからだ。このままだと31日朝に控訴期限を迎え、死刑判決が確定する。まさにカウントダウンに入っているのだが、この間、私のところにいろいろな人からアプローチがあった。
 一番多いのは、あんな本質に迫れない裁判でこの事件を終わらせるのは納得できないから何とかしてほしいという声だ。障害者問題に関わってきた人や精神科医を含め、多くの人からそういう声をいただいた。

 

もうひとつ、この間、関係者からもアプローチがあった。植松被告と親しかった友人知人が最後の面会をパンドラ書影.jpgのサムネイル画像したがっているのだが、今はマスコミ関係者が連日、接見取材を希望して朝から拘置所につめかけているので、調整をしないといけない状況だ。面会は1日1組で1度に3人に制限されている。私は植松被告に、マスコミに会うのも構わないが、それよりももっと大事な、最期に会っておかない人がいるだろう、と提言している。
 前回3月19日に接見した時、その友人らの意向を伝えたのだが、今はマスコミの面会依頼が多いため、ダブルブッキングなどやや混乱が生じている。自分の死刑がもうすぐ確定するという時期だから冷静でいられないのは確かに無理はないけれど。
 

3月19日、植松被告に接見した
 19日は『創』の執筆者でもある森達也さんと一緒に接見したのだが、森さんは控訴を強く進言していた。私はといえば、植松被告が法廷で「控訴しません」と宣言したのも見ていたし、その後の接見でも決意が固いので、難しいだろうという思いもある。
 法廷で「控訴しない」と宣言したのは、そこに自分を追い込んでしまおうという気持ちもあったのでは?と訊くと、本人もそうかもしれないと言っていた。
 控訴する意思はもう本当にないのか、尋ねると、案の定、こう言った。
「今からやっぱり控訴しますというのでは筋が通らないでしょう」
「死ぬことは怖くないのか」と(確か森さんが)尋ねると、こう答えた。
「悲しいなとは思います。死刑に納得しているわけではない。でも仕方ないと思います」

 裁判にも納得しているわけではないという。そして何よりも接見禁止がついて「今まで会ってきた人たちと会えなくなってしまうのが残念だ」という。

 その面会でも植松被告は、9月6日に震災があり、7日には原爆が落とされるから、とイルミナティカードに基づく話を真顔で語っていた。死を覚悟したのはそのこともあるらしい。植松被告の根底には終末思想のようなものがあって、自分が救世主となって革命を起こすという考えからあの事件を起こした、というのが裁判でも語られた。その点ではオウム真理教と非常によく似ているのだ。
 ただ違いは、世界的に広がる「生産性のない者は生きる意味がない」という排外主義的な風潮の影響を強く受けていることだ。植松被告がそういう考えに傾いていった2016年2月頃、トランプ大統領候補が連日テレビに映っており、彼はそれに心酔していく。差別的な言辞を平気で吐いて、最初は相手にされなかったけれど、次第に支持を獲得していく。そして最終的にアメリカ大統領にまでのぼりつめるのだが、そのことに植松被告は自分を重ねていったようだ。事件前に金髪にしたのもトランプの影響だとされている。

判決文が認定した犯行動機の中核
 裁判が全く本質に迫れていないと前述したが、判決文の中にこういう一節がある。
《犯行動機の中核である被告人の重度障害者に関する考えは、被告人自身の本件施設での勤務経験を基礎とし、関心を持った世界情勢に関する話題を踏まえて生じたものとして了解可能であり、病的な思考ないし思考障害によるものとはいえない》

 裁判所が認定した犯行動機は「施設での勤務体験」を基礎とし、「関心を持った世界情勢に関する話題」を踏まえたもの、というわけだ。判決後に会見した津久井やまゆり園の入倉園長は、その「施設での勤務体験を基礎とし」を重く受け止め、検証したいと語っていた。植松被告がなぜ障害者を支援する立場でありながらあのような考えに至ったのか。その「基礎となった施設での体験」とはどういうものなのか。これはとても大事なテーマだ。
 そして同時に、植松被告が影響されたという世界的な排外主義の風潮が事件にどんな影を落としているのか。それが、もっとつきつめなければいけない課題だ。

 でも読んでみればわかるように、判決はその2つを「病的な思考ないし思考障害によるものとはいえない」、つまり責任能力はあるという結論に落とし込むプロセスとしか考えていない。実際、その2つに対する掘り下げは裁判では全くなされなかった。
 こんな浅薄な追及で事件を終わらせてしまってよいのだろうか。それがこの事件に関心を寄せている多くの人の感想だ。

 だからこれで終わらせてはならない、と植松被告にも言ってはいるが、本人の意思を覆すのはそう簡単ではない。しかも、やまゆり園前会長の尾野剛志さんが常々言っているが、死刑判決が被害者家族や遺族の率直な思いで、それが確定するまでは落ち着かないという。凄惨なあの事件に対する被害者の処罰感情はかなり激しいのだ。そうした感情もまた重たく受け止めなければならない。
 控訴期限を迎える今月末にどう判断すべきか。それは結局、植松被告本人が決めるしかない。
 私はこれまでつきあった多くの死刑囚の最期を見送ってきたから、自分にできることはしようと思っている。でも実際にはできることは限られているのが現実だ。

 最近でいえば国会議員の木村英子さんの証言、「自分も施設で植松被告と同じことを言われ続けた」という話が、聞くたびに衝撃を受ける。3月21日にTBS「報道特集」でのインタビューを聞いて、改めて深刻な気持ちになった。相模原事件は、考えてみなければいけない多くの問題を提起している。でも多くの人が、もっと究明し、もっと議論すべきと自覚しなければ、あっという間に風化していくと思う。植松被告が刑を確定させ、これでもう社会との接点を断たれることに私が危惧するのはそれゆえだ。 パンドラ書影.jpg

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日野不倫殺人事件の24年目の現実

1993年12月、日野市のアパートが放火され、子ども2人が焼死した。逮捕された北村有紀恵さんは無期懲役の判決を受け、服役中だ。その彼女の置かれた現実を通して贖罪について考える。
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特集【相模原事件裁判報告】

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