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編集長の目

ジャーナリズムの劣化

 最近最も驚いたのはNHK職員のインサイダー取引の話です。最初に問題になった職員以外に、内部調査が進むにつれ、NHKではこれまでも職員が同様に株取引をやったケースがたくさん発覚しているようです。これ、ジャーナリズムにとっては命とりともいうべき根幹に関わる事柄。不祥事が日常茶飯事になっていささか感覚が麻痺しつつあるメディア界でも、ここまでやるか、と驚きを隠せないひどい話です。何のためにジャーナリズムを志すのかという、当事者が本来持っていたはずの理想や理念がここまで瓦解してしまったのはいったいなぜなのか。これからマスコミをめざす人にちょっと考えてみてほしいテーマです。マスコミというのは情報に早く接することができるし、大手マスコミは給料も一般の人に比べてはるかに高い、いわば特権を持った集団なのですが、モラルが崩壊するとそれをここまで悪用する人が出てくるという実例です。こんなことが続くと、ジャーナリズムは自壊作用を起こすことは必至で、今回の事件は、職員が接待費をごまかしていたといったこれまでの不祥事に比べてはるかに深刻な問題です。

 でも、私は「ジャーナリズムの劣化」と呼んでますが、最近ひどい話が多すぎます。正義の味方と思われていたのがこの10年ほどで一気に信頼崩壊した職業といえば、警察官と弁護士と言われてますが、マスコミも遠くない時期にその仲間入りをするかも。

 そういえばこのところ、三田佳子さんの二男の覚せい剤事件で、ワイドショーなどの取材を受ける機会が続いたのですが、それら情報番組の見識のなさにもがっかりしている今日この頃です。私のコメントも、忙しい中を収録に1時間くらいとられて、せっかく協力したのに、放送されたのを見ると大事なところを取り上げず、刺激的な部分のみ使うというケースが多く、いったい何を考えているのかと思うことが多いのです。同業者として彼らの取材にはなるべく協力したいと思ってきましたが、今後は基本的にテレビの取材は報道番組以外は断ろうかと思っています。

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