北朝鮮ミサイル騒動は、なんとか終息しそうだが、この何日間かのテレビの報道は、首を傾げたくなるものだった。北朝鮮と日本両国政府がメディアを使って牽制しあい、情報戦を展開していたわけだが、日本のマスコミ、特にテレビは、あまりにも無自覚なままそれに全面的に乗って危機煽りを展開した。13日朝のワイドショーなどは、まさに戦時報道のようだった。
北朝鮮もひどい国なので批判するのはよいが、少なくとも日本政府とは距離をとってジャーナリズムとしての見識に基づいた報道をしてくれないと、北朝鮮の国営放送と立場こそ違え、似たようなレベルの報道だったと言わざるをえない。昨年の原発報道に対する市民からの不信感は、ジャーナリズムが政府と一緒になって報道を展開したことへの疑問から生じたものだが、大手マスコミはそのことへの自覚がなさすぎる。
最近ひどいのは、新聞の消費税増税報道もそうだ。消費税増税そのものについては、いろいろな考え方があるし、仮に新聞社が増税はいずれ必要だと考えても、それ自体はよしとしよう。ただ、それを政府の代弁をするかのように紙面で展開するのは問題だ。権力監視がジャーナリズムの役割なのだから、増税の是非論と別に、政府の今のやり方が民主主義に照らしてどうかとか、政府としてやるべきことをやっているのかといったことを批判していくべきではないだろうか。
その点でいうと、4月6日付の朝日新聞の社説「消費増税と政治 言い訳やめて、本質論を」はひどい。こう書いているのだ。
〈いまや日本のリスクは、「決められない政治」なのだ。違う点は争っても、一致する点は前向きに議論し、きちんと決める。そんな当たり前の政治の作法を確立しよう。有権者の審判は消費増税を決めたあとに仰げばいい。民主党の公約違反の責任はそのときにとってもらおう。〉
決めた後に解散、というのが「公約違反の責任」をとることには、どう考えてもならないだろう。公約と違うことをやって、決めたあとに解散すればいいという考え方こそ、民主主義を愚弄するものではないか。醜悪な野田政権がその民主主義を愚弄する方向につっ走っている時に、少なくともジャーナリズムのすべきことは、市民の多数の声を代弁して、それはおかしい、ということではないだろうか。この社説は、本来やるべきことと反対のことを主張していないか。
朝日新聞は、昨年、原発報道への市民の不信の声を聞いて、「脱原発」へと紙面方針を転換させ、「原発とメディア」など、自らの責任も問う形で、検証を行ってきたはずなのに、いったいこれは何なのだと思わざるをえない。この社説にはさすがに腹がたって、投書でもしようかと思ったが、どうせボツになるだろうからとやめた。
今の新聞・テレビは、昨年、原発報道であれだけ強い批判を受けたのに、何を批判されたのか理解していないように思えてならない。権力監視どころか、ほとんど権力の代弁者になってしまっているのではないだろうか。
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