第1回 採用戦線の行方は

 前々回からコラム「編集長の目」を掲載し始めたが、これはいろいろなエ
ピソードを紹介していくもので、採用戦線の動向といった大きな話は、「マ
スコミ採用戦線レポート」と題してシリーズ化していきたいと思う。今回は
その第1回で、この秋以降のマスコミ採用戦線の行方を紹介しよう。

 まず知っておいてほしいのは、昨年、経団連の倫理憲章の改定、という大
きな出来事があって、採用戦線の日程が大幅に変更されたことだ。それまで
採用戦線は年々早期化し、例えばテレビ局のアナウンサー面接は、10月頭か
ら始まって10月中に終了する局もあった。こういう早期化が学生の学業を圧
迫しているという声が出て、歯止めをかけることになったのだ。その前年ま
で10月に始まっていた一斉募集開始を12月からと2カ月後ろへずらし、選考
開始は翌年の4月から、と改めたのだ。リクナビ、マイナビの合同説明会も、
昨年から開始は12月以降となった。

 ただ、実はマスコミの場合、経団連に加盟していない会社も多く、当初は
果たして経団連の呼びかけがどのくらい功を奏するのかと疑いをもって見ら
れていたのだが、昨年8月に、フジテレビがいきなり倫理憲章を遵守すると
の宣言をぶちあげ、結局、マスコミ業界も経団連の動きに従うことになった。

 さて、今年はその2年目。昨年の改定に対する反省や総括を踏まえて、今
年は運用に修正が加えられる。昨年に対する反省とは、以下のようなものだ。
 第1に、12月募集開始、4月選考開始と大手企業が足並みを揃えたことで、
採用活動が極端に集中したこと。新聞社など、それまでなかったような、業
界外の会社との人材獲得競争となった。例えばそれまでは同業者の動きをマ
ークしながら内定を出していたのが、今年の春は、新聞社の選考に残ってい
る学生が同時に総合商社の面接も受けていたりしたため、採用競争が激化し
たのだ。その結果、全国紙やNHKは、4月に少しでも早く内定を出そうと
いう動きになった。こういう短期集中に対しては、各社とも今後は対策を講
じないといけないと反省の声が出ている。

 第2に、10月11月に募集活動がなかったため、11月までは就活モードが高
まらず、学生の方が企業研究ができないまま12月の一斉応募開始に突入して
しまったこと。これについては、確かに募集活動は不可だが、企業研究など
はやるべきだという反省が出ている。リクルートスーツを着て走り回るのは
12月からでよいが、企業研究・業界研究は、やはり10月からきちんとやらな
いとまずいという反省の声だ。恐らく今年は、昨年よりは、10月以降の各大
学のキャリアセンターが開催する企業研究セミナーに、企業が積極的に関わ
ることになると思う。

 それへ向けて、今年は夏休みを使ってのインターンシップが例年以上に盛
り上がっているのだが、この続きは次回のメルマガで報告しよう。