朝日新聞採用担当部長が語る「3・11後の採用活動」

 『マスコミ就職読本』は今年も例年通り9月より各巻順次発売になるが、実はその取材は7月からスタートしている。会社側と昨年受験した学生諸君に丹念な取材を行い、その膨大なデータを整理して出版物にまとめていくのである。

 その過程で得た情報の中には、鮮度の高いうちにある程度紹介した方がよいものもある。紙媒体とwebでの情報発信の連動がこれまで以上に大切になっていることに鑑み、今年からは、『マス読』制作過程で得た情報も、ある程度はその都度発信していくことにした。

 随時更新するので、ぜひチェックしてほしい。

 今回は、先頃、朝日新聞社の堀江浩・採用担当部長を取材してお聞きした内容の一部を紹介しよう。朝日新聞社は例年、4月の第一日曜日に筆記試験を行うのだが、今年は3月11日の震災の後だったために、選考方法に変更を加えざるをえなかった。一番大きな変更は、例年、書類選考の後の1次選考は筆記試験と面接を同時期に行い、その総合判定で絞り込みを行っていたのだが、その最初の面接を中止したことである。当時、報道現場は東北の被災地の取材で大変な状況で、その現場記者たちが面接を行うことができなかったからである。ただし、これは記者職のみで、ビジネス部門などは従来通り、筆記試験と並行して面接を行った。

 もともと1次選考で面接を行うというのは、筆記試験で絞り込みを行っていた従来の選考だと、記者の資質がありながらペーパーテストで落ちてしまう受験者がいるため、それを補おうと「全員に会う」という方針を掲げたものだった。ただ、全員の受験者に面接を行うのはかなり大変なことで、現場社員がほとんど総出で行うことになる。今年は震災取材でとてもそこまで手が回らなかったわけだ。また書類選考についても、今年は1次選考の前に行わず、筆記試験の後にその評価を合わせて行ったという。但し、朝日新聞社の場合、書類選考で落とすのは、不備なものや丁寧に書かれていないものなど、ごくわずか。今年もそれは変わらなかった。

 今年の選考方法の変更はもうひとつ。朝日の選考の名物とも言われる「1日がかりの2次選考」を簡素にして半日ですませたことだ。「模擬取材と原稿執筆」という選考を割愛したのである。丁寧な選考だとして採用する側にとっても受験者にとっても好評だったものだけに、来年は復活する可能性もある。ただ、1次選考の面接を来年復活するかどうかについては、従来から負担が大きいと言われていた経緯もあり、未定だという。

 朝日新聞社はこの8月に秋採用の試験を行うのだが、これも春採用にならって、記者職の場合、1次選考での面接は行わない予定だという。

 周知のように朝日新聞社はこの春から、「朝日新聞デジタル」という新媒体を創刊した。春の採用時点では創刊されていなかったので、採用には影響はなかったが、来年は面接などで話題になるのは必至。就職活動を機にiフォンを購入する学生諸君も多いと思うが、朝日新聞志望者は「朝日新聞デジタル」をチェックしておく必要があるだろう。

 その他、堀江部長にはいろいろなことをお聞きしたのだが、そのインタビュー内容は、『マス読』入門篇に掲載される。「求める人物像」なども含めた朝日新聞社の採用全体の方針も語られるから、ぜひ読んでほしい。