フジテレビ「採用2013」の衝撃!!

 8月1日にフジテレビが発表した「採用2013」が採用戦線に大きな波紋を広げている。同社の2013年度採用の日程を告知したものだが、何しろネットエントリーが2012年3月以降、試験はアナウンサーが4月開始、一般職が5月開始、と例年なら考えられないような日程だからだ。アナウンサー試験はこれまで年内にやっていたのを、半年も遅らせるという方針で、他局にすれば「え?」という感じだろう。

 これは経団連が3月15日に発表した「採用選考に関する企業の倫理憲章の趣旨実現をめざす共同宣言」を踏まえた措置だろう。共同宣言への賛同企業は経団連のホームページで公表しているが、マスコミではエイベックス・グループ・ホールディングス、フジテレビ、WOWOWなどが名を連ねている。

http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2011/042sengen.html

 「倫理憲章」は3月に改定されたものだが、これによると採用のためのPR活動は12月1日以降、選考活動は4月1日以降とされた。年々早期化する採用活動に経団連が歯止めをかけたわけだ。大手企業の採用担当者や大学就職課などは、この影響がどうなるか気をもんでいるのだが、今回のフジテレビの発表は、そこへ一石を投じたものだ。

 例年だと各大学とも10月から会社説明会が開かれ、採用戦線が本格化するのだが、今年は様相が一変する可能性がある。学生諸君にとっても気がかりなところだ(こういう動き自体を知らない学生も少なくないが)。

 一方、例年動きの早い日本テレビは、既に「日テレパスポート」の登録を開始している。またテレビ朝日も8月4日、「プレサイト2013」を始動させた。とりあえずプレエントリーの態勢自体は作っておこうということだが、採用へ向けての告知や説明会をどうするかについては、全体の動きを見ながら今後決めて行くということのようだ。

 

マスコミはもともと、経団連などの動きにあまり縛られず、独自の採用を行ってきた。したがって今回の措置に対しても、基本的にはこれまで通りのやり方で、という考え方のようだ。ただ、フジテレビがいち早く経団連の倫理憲章に沿った採用方針を打ち出したことの影響は小さくない。新聞社などのように、そもそもこれまでも4月以降に選考を行ってきた会社は、募集情報発信のタイミングを12月にずらすこと以外に大きな変更はないと思われる。

問題は、これまで「2学年同時採用」の方針で12月に総合職の選考を行ってきた日本テレビと、10月中から選考を行っていたキー局のアナウンサー試験だろう。特にアナウンサーの選考をどうするかは、採用担当者にとって頭の痛い問題だろう。今回の事態を受けて、これまでの早期化の方針を大きく見直すのか、あるいは倫理憲章に捉われずに採用を行うのか。

危惧されるのは、アナウンサーなどこれまでもあまり日程などを公表せずに行ってきた選考がますますオープンでなくなり、採用がわかりにくくなりはしないかということだ。特に気になるのは、正規の選考日程は遅らせたとしても、その前に、セミナーなどの機会を利用して採用絡みの動きが増えてくるのではないかということだ。

かつて就職協定というのが存在して、採用活動に縛りがかかっていた時期、動きの早い大手マスコミは、ほとんどが正規試験の前に「セミナー」や「○○講座」というのを行い、目を付けた受講者を呼び出して、事前選考を行っていた。当時「青田買い」と呼ばれていたものだ。そういうわかりにくい動きが、今回の措置によって一部復活することが懸念されるのだ。

今年は、大幅な変更により、採用戦線がある程度混乱することは必至といえる。「マス読」は丹念な取材によって、できるだけ実情を把握し、メールマガジンやwebで報告していくことにしよう。