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緊急シンポ『「表現の不自由展・その後」中止事件を考える』開催!

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 8月22日に都内で開催した緊急シンポジウム『「表現の不自由展・その後」中止事件を考える』は大勢の参加者が訪れ盛況裡に開催された。「あいちトリエンナーレ2019」の「表現の不自由展・その後」中止事件以降、その出展当事者がこんなふうに何人も集まってオープンな場で発言したのは初めてだからだ。マスコミもNHKのカメラクルーが東京と名古屋と2組やってくるなど、多数、取材につめかけた。

 シンポの内容はネット放送のOurPlanetTVで動画が公開されている。

 http://ourplanet-tv.org/?q=node/2427

 

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                           このシンポについては既にマスコミでも大きく報道されており、ここでは朝日、共同、NHKの記事を紹介しよう。 https://digital.asahi.com/articles/ASM8P6F05M8PUTIL04K.html

 

 https://news.goo.ne.jp/article/kyodo_nor/entertainment/kyodo_nor-019082201001995.html

 

 https://www3.nhk.or.jp/lnews/shutoken/20190823/1000034693.html--

 

 出展者のうち、この日発言したのは下記の人たちだった。

 元慰安婦の写真を出展した写真家の安世鴻さん、マネキンフラッシュモブの朝倉優子さん、版画「遠近を抱えて」と「遠近を抱えてpart2」という動画を出展した大浦信行さん、美術家の中垣克久さん、「九条俳句」市民応援団の武内暁さん。特に安さんは、ニコンサロンで写真展が中止となった事件の当事者で、4年前の「表現の不自由展」開催のきっかけになった写真家だし、大浦さんは「天皇像を燃やした」と攻撃を受けている当事者だ。大浦さんが中止事件後、こんなふうにオープンな場で話をすることも初めてだ。今回の出展当事者ではないが、丸木美術館学芸員の岡村幸宣さんは、かつて都美術館で少女像公開が中止になった後に丸木美術館で展示された経緯があって、少女像についていろいろな事情を知る人だ。

 

 「表現の不自由展・その後」実行委員会のメンバーも駆けつけており、8月3日の中止決定が、出展していた美術家たちはもちろんのこと、実行委員会にも事前に知らされることなく会見で発表されたことなど、具体的な経緯もいろいろ明らかにされた。

 中止事件についてはいまだ連日、報道がなされ関心も高いのだが、実際にどんな作品が展示され、その出展者がどんな思いでいるかはあまり知られていなかった。問題になった平和の少女像や、天皇をモチーフにした作品についても、具体的にどういうものだったのか、当事者や関係者から詳しい説明がなされた。

 

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 例えば少女像については、丸木美術館の岡村さんから、展覧会の会場を訪れた人が隣に座れる椅子があるのだが、そこに座ると何が見えるのか、映像を使いながら説明がなされた。隣の椅子に座ってみると、少女の髪がどうなっているか、また両手のこぶしがぎゅっと握られているのが見えるなど、作品がいろいろなことを語りかけてくれるようになっているという。

 日韓の対立の象徴になってしまった感のある少女像だが、もともと作者がどういう思いで作ったものなのか、美術作品としてどういうものなのかは、ほとんど知らされないまま政治的議論だけが進行している現実のおかしさがよくわかる解説だった。

 

 大浦信行さんの昭和天皇をテーマにした作品も、天皇批判といった政治的プロパガンダでは全くないことが本人の口から直接参加した人たちに語られた。美術作品として見ようともせず、政治的文脈のみで批判されていることが、作者としてつらい、と大浦さんは語った。大浦さんが作品に込めた思いについては、8月14日に私がインタビューして16日に公開した記事を参照いただきたい。

 

https://news.yahoo.co.jp/byline/shinodahiroyuki/20190816-00138640/

「表現の不自由展・その後」で「天皇を燃やした」と攻撃されている大浦信行さんに話を聞いた

 

 中垣さんからは、今回の中止事件の経緯が美術家に対するリスペクトに欠けていることや、中止事件に対して反応の鈍い日本美術界の閉塞状況などへの怒りなども表明された。

 確かに、こういう美術作品がもっぱら政治的文脈のみで捉えられ、攻撃を受けてわずか3日で展示中止になったという現実は、この国の「表現」をめぐる状況がどういうものかを如実に示していると言える。

 

 今回、攻撃対象にされている大浦さんや、慰安婦の写真展がかつて中止になった安世鴻さんらが様々な風圧を受ける中でこんなふうに公の場に登場して発言したというのは、危機的な現実に対する当事者たちの強い思いの現れだ。

 私はこれまでも映画「天皇伝説」で知られる映画監督・渡辺文樹さんのトークイベントで右翼が会場に押し掛けて一触即発の緊迫状態になったことなども体験しており、今回もそうなるのではないかと、会場警備などに相当神経を使った。

 「表現の不自由展・その後」は、大量の電凸という第一撃で中止になってしまったのだが、こうしたことが続くと、「脅迫をすれば言論・表現は潰せるのだ」という前例が積み重なっていくことになる。言論・表現の自由がまさに封殺されていくわけで、今回、それに対して、表現者たちが自ら勇気をもって公の場で発言したことの意味は大きいと思う。

 美術研究家の武藤祐二さんは、パワポを使って、この10年間、美術作品が展示中止になるといった事件が増えていることを資料に基づいて指摘した。また中止事件に対する抗議と展示の継続を求める声明を8月3日にいち早く表明した日本ペンクラブからは滝田誠一郎言論表現委員長が登壇し、国際ペンを始めとして、今回の事件が国際的に注目されている事実も説明された。

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 出展当事者や関係者たちの発言を受けて、第2部では、金平茂紀さん(TVジャーナリスト)、森達也さん(作家・監督)。鈴木邦男さん(元一水会顧問)、香山リカさん(精神科医)、綿井健陽さん(ジャーナリスト・監督)らが、表現をめぐるこの現状をどう捉え、私たちはどうすべきか発言した。

 

 

 中止事件をめぐっては、「表現の不自由展・その後」以外の「あいちトリエンナーレ2019」の出展作家らが次々と抗議行動を起こしている。社会的に大きな問題を提起したこの事件、いまだ決着はついていないし、日本における「表現の自由」がまさに岐路に立たされていると思う。

 

 

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日野不倫殺人事件の24年目の現実

1993年12月、日野市のアパートが放火され、子ども2人が焼死した。逮捕された北村有紀恵さんは無期懲役の判決を受け、服役中だ。その彼女の置かれた現実を通して贖罪について考える。
200円(税込)

皇室タブー

篠田博之(『創』編集長)

定価:本体1500円+税 

ISBN 978-4-904795-58-3

 

皇室タブーを初めて正面から取り上げた衝撃の書!1961年、右翼少年による刺殺事件が出版界を恐怖に陥れ、深沢七郎さんの小説「風流夢譚」は封印された。その後50年を経て、封印は解かれつつあるのだが、果たして出版界は皇室タブーの呪縛から逃れられているのだろうか。皇室を扱った表現がその後も回収や差し替えにあっている現実をたどることで何が見えてくるのか。改元と天皇の代替わりが単なるお祭り騒ぎだけで終わろうとしている現在、象徴天皇制とは何なのか、改めて考えてみたい。