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月刊「創」ブログ

大阪ダブル選を前に橋下徹氏めぐる場外乱闘の報道合戦

 いやあ、すさまじい。橋下徹氏の「出自」を暴露するスキャンダル報道が『週刊新潮』『週刊文春』で吹き荒れていると思ったら、11月7日発売の『週刊ポスト』『週刊現代』がそれに対抗する論陣を張り出した。特に『週刊ポスト』は「橋下徹『抹殺キャンペーン』の暗黒」と題して、一連のバッシング報道は橋下氏の改革路線に怖れをなした既得権益集団の陰謀だ、といった感じの論調だ。これもすごい論法で、場外乱闘もここまでいくとまさに混戦としかいいようがない。

『週刊新潮』『週刊文春』の橋下叩きについては、11月6日付の東京新聞特報面に以下の論稿を書いた(コラム「週刊誌を読む」)。

 大阪ダブル選挙を前に、週刊誌による橋下徹バッシングが吹き荒れている。以前からあった「ハシズム」批判とは異なる、扇情的な「出自」暴きである。

 橋下氏が同和地区で育ったことは本人も公言していたが、それにとどまらず、父親がヤクザの組員であったこと、幼少時にその父親が自殺したことなどを『週刊新潮』と『週刊文春』が競うように暴きたてているのだ。

 きっかけは月刊誌『新潮45』11月号だった。橋下氏の叔父に取材した内容をもとに書いた出自の話が大阪で反響を呼び、売り切れ店続出で異例の増刷を行ったという。『週刊新潮』がそこに飛びついたのだった。

 同誌11月3日号の見出しは「『同和』『暴力団』の渦に呑まれた独裁者『橋下知事』出生の秘密」。橋下氏の独裁的手法や上昇志向は、ヤクザの父親が自殺し、母子家庭で育つという不遇な境遇からエリートになることによって抜け出ようとした生い立ちに秘密があったという趣旨だ。

 日発売の『週刊文春』11月3日号も「橋下徹42歳書かれなかった『血脈』」と題して父親の話を書いた。
 橋下氏はこれらの報道に反発し、ツイッターに次々と感想を書きこんだ。「実父の出自も今回の週刊誌報道で初めて知った。僕は成人だから良い。しかし僕には子供がいる」「子供の友達の親も皆知ることになっているだろう。妹も初めてこの事実を知った。妹の夫、その親族も初めて知った」「メディアによる権力チェックはここまで許されるのか」
 その批判に『週刊新潮』は翌11月10日号で「独裁者になるという為政者をメディアが監視するのは当然だ」と反論し、続報を掲載。『週刊文春』は「母の独白90分『疑いを持たれる人と一緒になった私が悪い』」と母親の証言を紹介。バッシングは収まっていない。
 ヤクザの父親と不幸な生い立ちという出自暴きは、「のりピー」こと酒井法子騒動の時と同じだ。大衆の興味をかきたてることは間違いない。そして、この逆風が選挙にどう影響するかは微妙なようだ。えげつないとも言うべき週刊誌報道に反発して橋下氏にエールを送る声も目立つという。仁義なき戦いは今後、どうなるのか。
 
 紙幅の都合で書ききれなかったが、『週刊文春』の橋下叩きは面白いことに、同じ誌面に文春新書から出た橋下氏の新刊の広告が載っている。この新書は明らかに橋下出馬にあわせて出版したものだが、その広告を載せた号が橋下叩きの特集というのでは、新書の担当者は「俺の立場はどうなるの?」という思いだろう。新書と週刊誌の編集部が互いに独立しているといえば聞こえはよいが、このチグハグさが何ともおかしい。
 それにしても心配なのは、『週刊新潮』の出自暴きキャンペーンで、これまで北大の山口二郎教授や中島岳志教授らがやってきた「ハシズム」批判、つまりもっと本質的な橋下批判がかすんでしまうことだ。まさにミソもクソも一緒になってしまったのだ。
 中島さんの「ハシズム」批判については、先日大坂のシンポジウムでの発言をほぼ全文、11月7日発売の月刊『創』12月号に収録した。その前のシンポでなされた山口二郎さんや香山リカさんらの「ハシズム」批判も、近々ブックレットが発売されるらしい。『週刊新潮』の暴露は確かにインパクトの大きさだけは認めざるをえないのだが、橋下批判を矮小化してしまった感は否めない。
 場外乱闘はいいが、議論するなら本質的で真っ当な論点でやった方がいい。

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