トップ> 月刊「創」ブログ > 古賀茂明さんが「報道ステーション」で告発したものは何だったのか

月刊「創」ブログ

古賀茂明さんが「報道ステーション」で告発したものは何だったのか

テレビ朝日系「報道ステーション」3月27日放送での元経産官僚・古賀茂明さんの爆弾発言が話題になっている。最初は自分がコメンテーターとして降板になったという話だったが、CMをはさんで最後はプロデューサーの更迭という話にも及んだ。録画を見直してみると、古賀さんの行為が用意周到で、覚悟のうえでの行為だったことがわかるのだが、番組を見ていた人には何が問題になっていたのかわかりにくいかもしれない。ここで整理しておこう。

 

結論から言えば、3月末で「報道ステーション」のプロデューサー、レギュラーコメンテーターの恵村順一郎さん、それに古賀さんの三人が降板したのは偶然ではありえず、局の自主規制によるもので、その背後には安倍政権の圧力があった、というのが古賀さんの主張だ。それを生放送中に暴露し、キャスターの古舘伊知郎さんと口論にもなった。

生放送中だからスタジオは大騒ぎだったろうが、その経緯を古賀さん自身が『フライデー』4月17日号で語っている。CMに入るや局側が飛んできて「打ち合せにないことを言わないで下さい」と注意したが、古賀さんは拒否。番組終了後には報道局長も来て激論になったが、古賀さんはこう言ったという。「圧力に屈して政権監視・批判番組を作らなくなるのは報道機関の役割の放棄に当たる」。これが古賀さんの言いたかったことだろう。

 

局側は、圧力によってプロデューサーらを更迭したという古賀さんの主張は事実と違うと説明している。このあたり、そもそも安倍政権の意向を局側が斟酌して異動を行っていたとしても、その背景に圧力があったのかどうかわかりにくいのが自主規制たるゆえんだ。だから真相を見極めるのは簡単ではないのだが、一連の経緯を考えると、局側の「通常の異動」という説明もそのまま受け入れるわけにいかないのは確かだろう。比較的そのあたりに踏み込んで書いているのは『週刊文春』4月9日号だが、「報ステ」のMプロデューサーが安倍政権に批判的だったのは確かで、古賀さんを重用していたのもこの人だった。

 

局内でそのプロデューサーの処遇が議論されるようになったきっかけは、昨年9月の川内原発に関する報道が編集が不適切だったとして問題になり、謝罪することになった事件だったようだ。この事件ではBPOからも問題を指摘され、Mプロデューサーらが減給処分を受けた。『週刊文春』によると、反原発のスタンスだったMプロデューサーそれを機に年末に異動の打診を受けたという。そしてそれは、番組関係者の間で局側の自主規制ではないかと取りざたされるようになったらしい。

『週刊ポスト』が「古舘を支えたプロデューサーは"更迭"か テレ朝『報ステ』は安倍批判を自主規制する!?」という記事でそれを伝えたのは2月27日号だった。ちなみに『週刊文春』は、この記事のネタ元は古賀さん本人ではないかと書いている。

 

Mプロデューサーは3月で同番組を離れ、経済部長になるのだが、形式上は栄転にして実質上現場をはずすというのはよく使われる手口だから、今回の一連の異動は、安倍政権の意向を組んだテレ朝上層部の自主規制と考えられなくもない。1月に古賀さんが番組内で日本人人質事件をめぐるコメントで「アイム・ノット・アベ」と発言したことで政権側からのバッシングも強まったと言われる。この何カ月間か、安倍政権と局側と「報ステ」現場との間で綱引きが行われていたのは確かだろう。そして古賀さんは、これが最後の出演の機会と思われた3月27日に、その局側の自主規制に対して告発を行った。それが今回の事件をめぐる経緯だろう。

 

『週刊新潮』4月9日号「『安倍官邸』剛柔のカギ爪」も指摘しているように、いまテレビ局や新聞社を安倍政権が揺さぶっているのは確かだ。NHKは既に安倍政権によって送りこまれた籾井会長のもとで換骨奪胎されつつあるし、新聞界におけるリベラル派の雄だった朝日新聞も昨年の激しいバッシングで萎縮しつつある。安倍政権によるメディアの制圧がじわじわと進んでいるのは間違いない。

 

そういうメディアへの攻勢と軌を一にして改憲へ向けた地ならしを次々と推進しているのが安倍政権だ。戦後、これほど民意を無視して暴走する政権はなかったと思われるが、それを許しているのは、野党が壊滅状態にあることと、政権を批判すべきジャーナリズムが次々と抑え込まれている現実があるからだろう。そういう状況に古賀さんは怒りの告発を行ったわけだが、さてメディア界はこれを今後、どう受け止めていくのだろうか。

日野不倫殺人事件の24年目の現実

1993年12月、日野市のアパートが放火され、子ども2人が焼死した。逮捕された北村有紀恵さんは無期懲役の判決を受け、服役中だ。その彼女の置かれた現実を通して贖罪について考える。
200円(税込)

2018年5・6月号 マンガ市場の変貌


試し読み

ご購入はこちら

紙版

電子版

◆『コロコロコミック』『ちゃお』

 児童誌のゲーム、アニメとの連動

◆『ジャンプ』『マガジン』『サンデー』
 少年マンガ誌三者三様の行方

◆集英社が『マンガMee』立ち上げ 
 女性マンガの映像化とデジタル化

◆『空母いぶき』『キングダム』など期待作が
 実写映画で青年マンガに期待

◆LINEマンガ含め各社のデジタルコミックの現状は
 拡大するマンガのデジタルとライツ

◆フジテレビ、テレビ東京のアニメ戦略とは...
 アニメ市場拡大とテレビ局アニメ戦略

◆『「なろう系」と呼ばれるweb上の小説のコミカライズ
 コミカライズとKADOKAWAの戦略

◆「海賊版」をめぐる迷走の内幕
 「暴走」の末に頓挫した海賊版対策......川本裕司


◇寝屋川中学生殺害事件被告手記(続)
 死刑を宣告された私の近況と逮捕をめぐる経緯......山田浩二

◇『DAYS』性暴力事件をめぐる経過報告
 『DAYS JAPAN』広河隆一さんの性暴力問題を考える......篠田博之

◇被害から25年目の今、性犯罪受刑者との対話を望む
 性暴力被害者の私が、なぜ加害者との対話を求めるのか......にのみやさをり

◇同性愛差別が続く社会で起きた事件と波紋
 一橋大学アウティング裁判が社会に投げかけた問題......奥野斐




トラックバック(0)

このブログ記事を参照しているブログ一覧: 古賀茂明さんが「報道ステーション」で告発したものは何だったのか

このブログ記事に対するトラックバックURL: https://www.tsukuru.co.jp/mt/mt-tb.cgi/2891

コメントする