3月9日、広島地裁でマツダ無差別殺傷事件・引寺利明被告に無期懲役の判決が出ました。本当は傍聴に行く予定でしたが、仕事の都合で行けず(涙)。求刑が無期懲役だったので予想通りの判決でしたが、この間、連日のように届いた引寺被告からの手紙を読んでいたせいで、複雑な思いでした。
へたをすると死刑判決もありえたこの裁判で、弁護団は心神喪失ゆえの無罪を主張しました。検察側も精神鑑定の中身を一部勘案して、死刑回避の求刑をしたのですが、引寺被告本人はどう言っていたかというと、まず弁護団の「無罪」方針については激しく反発していたのです。引寺被告と弁護団はほとんど意思疎通を欠いており、無罪主張はあくまでも弁護団の方針でした。本人は、心神喪失については完全否定、殺意も認めていました。
このへんについては3月7日発売の月刊『創』4月号に引寺被告本人の手紙が掲載されています。
2月24日の公判で検察から無期懲役が求刑されたのですが、引寺被告は「法廷に居た人の中でワシが一番ビックリしたと思います」と手紙に書いていました。つまり本人も死刑求刑を覚悟していたのです。そして「検察が無期懲役を求刑したことにより、このマツダ事件の裁判はワシにとってだけでなく遺族や被害者にとっても茶番な裁判になってしまいました」と述懐しています。
このあたり、無期懲役判決についての本人の心情はどうなのか、死刑について本人はどう考えているかなどは『創』次号で紹介しますが、引寺被告は以前、判決がどうあっても恐らく控訴すると言っていましたから、控訴するのかどうか、成り行きが注目されます。
引寺被告は「秋葉原事件を参考にした」と語っているように、恐らく死刑を覚悟して事件を起こしたようです。ですから裁判を通じて、被害者への謝罪も反省もいっさいありません。反省といえば、死者が一人だったことについてでした。本人は大量殺害を意図して事件を起こしたのです。
結果的に死者が一人で死刑が回避されたためか、新聞・テレビのマスコミはこの裁判についてあまり大きく報道していないのですが、無差別通り魔事件としては、ある意味で、法廷で謝罪を続けた秋葉原事件の加藤被告よりも深刻な一面を持っているような気もします。法廷で被害者を侮辱するような発言を続けたという点では、引寺被告は、池田小事件の宅間守死刑囚(既に執行)を彷彿とさせます。『創』4月号で本人も書いていますが、被告人が大声を出したりなど、大荒れの裁判でした。この裁判が誰の何を裁いたのか。判決によって何かが解決したといえるのか。いろいろ考えさせられます。
日野不倫殺人事件の24年目の現実
1993年12月、日野市のアパートが放火され、子ども2人が焼死した。逮捕された北村有紀恵さんは無期懲役の判決を受け、服役中だ。その彼女の置かれた現実を通して贖罪について考える。
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