月刊「創」ブログ
『ドキュメント死刑囚』出版しました 篠田博之(『創』編集長)
内閣改造で法相が代わったことで死刑執行はどうなるか注目しています。鳩山前法相は2カ月にいっぺん執行を行ってきたのですが、ちょうどこの8月が執行の月にあたるからです。それと軌を一にするかのように7月に小林薫死刑囚の控訴取り下げ無効の申し立てが最高裁で棄却になりました。もともと小林死刑囚は死刑を望んでいた人ですから、宅間死刑囚のように早期執行になる可能性が高いケースでした。それが弁護士の説得もあって裁判のやり直しを求める手続きを申請していたのですが、最高裁で棄却。しかも高裁から最高裁へと本当に短い審理で判断をくだされました。このままでは早期執行になりはしないかと心配です。
そんな折に、ちくま新書にて『ドキュメント死刑囚』という本を上梓しました。宮﨑勤、小林薫、宅間守という3人の死刑囚について書いた本で、書店に並んだばかりです。
宮崎勤、小林薫、宅間守の3人には、いずれも父親を激しく憎んでいたことなど驚くほど共通点があります。彼らとの関わりを通して、私はいつも、今の司法システムや死刑制度は本当に人を裁き、凶悪犯罪を抑止するために有効に機能しているのか、という疑問を抱き続けてきました。この本はそういう思いをまとめたものです。
最近、動機不明の無差別殺人が目につきます。これは恐らくこの社会の何かが壊れつつあることの現れだと思いますが、先の3つの死刑事件にそうした兆候は端的に現れていました。死刑囚であることの意味がどの程度認識されていたか疑問を感じざるをえなかった宮崎死刑囚にしても、死にたいという願望を実現するために法廷で事実関係を争うことを放棄した小林死刑囚にしても、私は、今の司法制度が彼らを裁くという機能を果たし得ているのか強い疑問を感じました。
彼らはいずれも社会とのコミュニケーションがとれず、「反社会性人格障害」という診断をされたのですが、その社会との断絶が家族関係の崩壊に象徴的に表われていました。父親は恐らく彼らにとって「社会規範」の象徴だったのではないかと思います。
この本を脱稿した直後に、宮崎死刑囚の刑執行という、私には衝撃的な事態が起きました。彼との関わりは12年に及び、私にとっては、身近な人間が突然処刑された衝撃は、予想を超えたものでした。そしてもう一人、小林薫死刑囚も、いつ処刑されても不思議でない状況にあります。
この何年かの厳罰化の流れの中で、死刑問題がこの社会にとって早急に議論すべき大きな課題として浮上しつつあることは確かだと思います。そうした論議に、今回の本が少しでも役に立てばと願っています。『創』での仕事がこの本のベースになっていますが、資料などを改めて確認する作業を含め、本書を書きおろすのに約1年の歳月がかかりました。
ぜひ多くの人がこの本を読んで、一緒に死刑について考えてほしいと思います。
日野不倫殺人事件の24年目の現実
1993年12月、日野市のアパートが放火され、子ども2人が焼死した。逮捕された北村有紀恵さんは無期懲役の判決を受け、服役中だ。その彼女の置かれた現実を通して贖罪について考える。 200円(税込)
2018年5・6月号 マンガ市場の変貌
◆『コロコロコミック』『ちゃお』
児童誌のゲーム、アニメとの連動
◆『ジャンプ』『マガジン』『サンデー』
少年マンガ誌三者三様の行方
◆集英社が『マンガMee』立ち上げ
女性マンガの映像化とデジタル化
◆『空母いぶき』『キングダム』など期待作が
実写映画で青年マンガに期待
◆LINEマンガ含め各社のデジタルコミックの現状は
拡大するマンガのデジタルとライツ
◆フジテレビ、テレビ東京のアニメ戦略とは...
アニメ市場拡大とテレビ局アニメ戦略
◆『「なろう系」と呼ばれるweb上の小説のコミカライズ
コミカライズとKADOKAWAの戦略
◆「海賊版」をめぐる迷走の内幕
「暴走」の末に頓挫した海賊版対策......川本裕司
◇寝屋川中学生殺害事件被告手記(続)
死刑を宣告された私の近況と逮捕をめぐる経緯......山田浩二
◇『DAYS』性暴力事件をめぐる経過報告
『DAYS JAPAN』広河隆一さんの性暴力問題を考える......篠田博之
◇被害から25年目の今、性犯罪受刑者との対話を望む
性暴力被害者の私が、なぜ加害者との対話を求めるのか......にのみやさをり
◇同性愛差別が続く社会で起きた事件と波紋
一橋大学アウティング裁判が社会に投げかけた問題......奥野斐
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