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月刊「創」ブログ

JANJANも休刊。独立系メディアの危機も深刻です

3月9日付朝日新聞がインターネット新聞JANJAN休刊について大きく報道していました。既成の大手メディアに対抗して登場した媒体がこんなふうに潰れていくのは残念です。新聞・テレビの大手資本がメディアを独占していた時代が、インターネットの普及によって崩れつつあるなかで、現状では「情報は無料」というネット社会特有の壁もあり、独立系の小資本の媒体も
生き残っていくのは簡単ではないようです。
紙媒体の世界ではそれはさらに顕著で、今や一定の影響力を確保している独立系雑誌は数えるほどになってしまいました。広河隆一さんの『DAYS JAPAN』も先頃、休刊の危機に瀕しながら読者拡大運動を展開、昨日、定期購読者が9000人に達したとして存続が発表されました。
70~80年代には『話の特集』『噂の真相』を始め、独立系雑誌が群雄割拠し、言論の多様性が確保されていたのですが、昨今の出版不況で、大手資本に属さない雑誌の存続は大変厳しくなってしまいました。もちろん大手出版社の雑誌だって次々と休刊しているわけですが。
そんななかで『創』も今後どうするか改めて考えねばならない時期に直面し、とりあえず一度立ち止まって考えようということで今月号は4・5月合併号としました。そして困難な状況に直面していることを率直に読者に知らせるための説明を掲載したのですが、これが思わぬ反響を呼び、読者や執筆者から激励の声が毎日たくさん寄せられています。ジャーナリズム系の雑誌がこの1~2年次々と休刊に至っていることへの危機感も背景にあるのだと思います。
『創』今月号に掲載した説明も、内情を率直に書いた異例なもので、従来は恐らくこんなことを明らかにする例はなかったと思います。今回敢えてそうしたのは、『現代』の休刊に際して、「執筆者に何の相談もなくいきなり休刊というのはどうなのか」「もう少し広い議論に供したら何か別の道がありえたのではないか」という声があがったからです。考えてみればメディアというのは作り手だけで成り立っているものではなく、読者や書き手があってこその存在だから、そういう声があがるのは当然でもあるのです。
ということで、ここに『創』に掲載した「読者の皆さまへ」と、読者から届いた声を2~3紹介したいと思います。執筆者や同業者からの激励のメールもいろいろあるのですが、これは私信なので公開は控えておきます。「読者の皆さまへ」は公の文書というより個人的心情を書いたものなのですが、ちょうどこれを書いて『創』を校了した直後に2月26日の「小沢VS検察」シンポジウムがあったわけです。
大手メディアが取り上げないような少数意見や異論を世に問うという役割を果たしてきた独立系媒体が存続しがたくなっている今の状況は、本当に残念に思います。
『創』は5月6日発売(通常は7日発売ですが休日なので繰り上げ)の6月号は予定通り出すことにしていますが、刊行形態その他についてはいろいろなケースを検討しています。『週刊金曜日』や『DAYS JAPAN』のように直販を中心とした雑誌ではなかったのですが、事前予約の直販の比率をあげるというのも安定させるためのひとつの方策です。
よしそれならひとつ応援してやろうか、という方がいましたら、こちらをクリックして創出版のホームページから申込んでいただけないでしょうか。年間定期購読は12冊分ですが、もし合併号などが出た場合は、繰り越していきますし、もちろん万が一休刊となれば残金は返却します。どうぞよろしくお願いします。

【読者から寄せられた声の一部】
●篠田編集長の巻末のメッセージを拝読いたしました。
 私はまだここ1・2年ばかりの間に愛読をしている年数の浅い読者ではありますが、貴誌のスタンス、示されている問題やテーマに非常に刺激を受け、勉強になっています。
 次々と雑誌が休刊、廃刊になる中、『創』も厳しい経営状況ということはうすうす感じてはいましたが、編集長個人が私財を投げ打っていたことを知り、ますます『創』への愛着が増してきました。季刊にして、価格を上げても送料を読者負担にしても構いません。どうか続けていく道を探って頂けるようお願いします。     (埼玉県 41歳)
●北海道新聞の「週刊誌を読む」(平成22年、2月3日夕刊)で知りました。ついでに、週刊朝日も買い、検察のやり方に怒りを感じました。 どの大手新聞社も、検察の味方しかしないのでしょうか。今後、新聞に書いてある、裏のこと、本当のことを書くべきだと思います。歴史的にみて、今の、大手新聞には期待できません。 本当の民意は選挙です。それを踏みにじる検察。大手新聞の書けないこと。正義を貫いてください。(『創』を知ったことで、少し救われました。)   (北海道 60歳)
●定価が1200円になっても読みつづけたい雑誌です。
 宜しくお願い致します。                  (東京都 58歳)

【読者の皆さまへ】     篠田博之
 今月号を合併号にしたのは、現有勢力でこの春、森達也さん始め本誌連載の幾つかを単行本にしようという計画があるからでもあるが、実はもう少し大きな意味がある。もう30年近く続けてきた『創』を今後どうするのか、一度立ち止まって考えてみようと思ったからだ。雑誌編集は、当月号の編集をしながら次号の企画を考えるという作業の連続で、立ち止まって考える余裕があまりない。だから一度休んで考える時間をとろうと思った。
 ご多分に漏れず、弊社もこの2年ほど経営が厳しくなっている。本誌の読者数はあまり変わらないが、もともとこの雑誌は赤字で、それを『マスコミ就職読本』という効率のよい出版物で支えてきた。ところが、就職ビジネスがネットにシフトし、しかもネットは「情報はただ」という世界だから、この2~3年収益が悪化した。例えば『マス読』関連で開催しているセミナーなども、有料開催が難しくなってきた。情報は無料で、収益は企業から広告をとってというビジネスモデルをネットが一般化してしまったのだ。
 もともと就職ビジネスの世界ではそういう広告モデルが一般的だったのだが、それでは企業に対する批評はできない、というアンチテーゼから出発したのが『マス読』だった。掲載している企業が知られたくない青田買いもコネ入社の実態もきちんと載せるという姿勢で、創刊当初はいつも掲載企業とケンカになった。いわば就職マーケットにジャーナリズムの手法を持ち込んだのが『マス読』だった。この本が「マスコミ志望者」のバイブルと呼ばれるほどになったのは、その姿勢が支持されたからだ。しかし、ネットへのシフトが事情を大きく変えてしまった。
 以前発行していた会社から『創』を買い取って創出版を設立し、刊行を始めたのは1982年だが、『マス読』は『創』の赤字を補うために翌83年に創刊した。この2つは弊社の両輪だったのだが、『マス読』の収益率が落ちたことで、会社の資金がひっ迫するようになった。そこへリーマンショック以来の広告費の落ち込みが重なった。
 もともと私はもう10年近く前から、創出版からは報酬を得ていない。長年協力関係にある筆者に十分なお礼もできないのに、自分がそこから報酬を得るわけにはいかないという、これは経営者としてのモラルだと考えてきた。幸い、東京新聞の連載を始め、自分の会社以外でも仕事をして収入を得ており、生活費にはそれをあててきたのだが、最近はそこからも創出版に補填をせねばならなくなった。この30年間で、私は会社に数千万のお金をつぎこんだと思うのだが、この1年ほどは年に1000万円余をつぎこんだ。
 その資金は、相次いで亡くなった両親の残したお金だった。私の両親は貧乏をしながら子どもを大学に行かせたのだが、私は学生運動を行い、親をさんざん心配させた。そのことがずっと痛みとして自分の中にわだかまってきたのに、その親が亡くなった時のお金を
自分の会社につぎこむというのは、かなりの精神的痛みを伴うことだった。
 一方、出版不況は深刻化し、『論座』や『現代』など総合誌が次々と休刊していった。それらの休刊を見ていて、逆に私は『創』は今はつぶせないなと思った。それぞれ会社の事情があっての措置ではあるだろうが、大手の会社であれば総合誌1誌を苦しい中でも続けていくことくらい、本当に覚悟があればできたはずだ。もともと金儲けだけでやっていた雑誌なら儲からなければつぶすのは当然だが、それらの雑誌はそうではなかったはずだ。言論に対する覚悟のようなものがあるならば、もう少し違ったやり方をすべきではないかと思えた。
 82年に創出版を興して『創』の発行を続けようと思ったのは、それまで私も勤めていた前の会社が、商法改正で広告収入が減るから休刊することを決めたからだ。編集長だった私はそれに激しく反発した。
 そして、会社の措置に納得できないから休刊させるなら別会社を作ってそこから発行する、と申し出て、当時の編集者3人で興したのが創出版だった。私は当時まだ20代だった。十分な資金もなしにスタートしたから、しばらくは無給だった。人も雇えないから、書店に本を運ぶのも、返本を紙やすりで加工して梱包し再出荷するといった作業も全て自分たちでこなした。
ただ自分の作った本を自分で磨いて自分で書店に運ぶという体験は、出版という仕事の原点を体感するのにはおおいに役立った。そういう心意気を知って、手伝いたいと集まってくれる人たちもいた。無給でもいいから働かせてくれと言ってきた者もいた。
鈴木邦男さんなど、本誌の執筆陣の多くは、もう20年もの長いつきあいだ。長年発行を続ける間にはいろいろなことがあった。昭和天皇の死去の時には皇室タブーの特集で右翼団体の攻撃を受け、マンションの立ち退きを通告されたこともあった。しかし、当時は私も若かったから、たとえ編集部の事務所がなくなろうと発行を続けるつもりだった。
そうまでして続けてきた雑誌だが、最近いろいろ思うところが多いのは、ひとつには私自身がもう50代半ばを超え、体力的に無理ができなくなったこと、そしてもうひとつは底なしの出版不況で、先の展望が見通せなくなってきたからだ。つきあいのあった雑誌が次々とつぶれ、書店に総合誌のコーナー自体がなくなっていくのも大きな変化だった。
これだけ雑誌がなくなっていくのを見ていれば『創』も大変であろうことはわかるから、この1~2年、本誌連載執筆陣を始めいろいろな人から激励の言葉をいただいた。また読者からも励ましの手紙をいただくことも多い。本当にありがたいことだと思う。
そして、これからどうするか。いろいろな選択肢を考えようと思っている。例えば刊行形態を隔月にするという案だ。『諸君』などこの間、休刊した雑誌も一応、こういう方法を考えたらしい。あるいは『マス読』に替わる収益の道を考え、本誌をこのまま続けるという方法。そしてもちろん休刊という道もある。
経営的には苦しいことばかりだったが、多くの人脈に支えられて雑誌を続けてきてよかったと思うことは数知れない。例えば宮崎勤死刑囚のような人物を12年間もウオッチしてその発言を活字にしてこれたのも『創』ならではの仕事だ。最近では、獄中連載を続けた三井環さんが出所後すぐお礼の電話をくれた時も、ああ続けてきてよかったと思った。
これからどうすべきか。多くの人の意見を聞いて、考えたいと思う。

日野不倫殺人事件の24年目の現実

1993年12月、日野市のアパートが放火され、子ども2人が焼死した。逮捕された北村有紀恵さんは無期懲役の判決を受け、服役中だ。その彼女の置かれた現実を通して贖罪について考える。
200円(税込)

2018年5・6月号 マンガ市場の変貌


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