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性表現規制めぐる東京都条例改定の動きが山場に! 15日に漫画家らが記者会見

 性表現規制をめぐる東京都条例改定の攻防戦が最終局面を迎えているのでお知らせしたい。このままだと19日の東京都議会の総務委員会で条例改定の採決が行われる可能性が高く、15日の月曜日からいろいろな動きが一気に噴出しそうだ。
 私(篠田)は1990年代の「有害」コミック規制騒動の時に、故・石ノ森章太郎さんや里中満智子さんらと「コミック表現の自由を守る会」を立ち上げ、その事務局長を務めた関係で、このテーマには関わりが深い。ということで、今回も新聞のコメント取材が入ったりしている。
 とりあえず15日(月)の動きをお伝えすると、午前中に都議会民主党が雑協(日本雑誌協会)などにヒアリング、正午から都庁記者クラブで漫画家らが会見(竹宮恵子、里中満智子、ささやななえ、呉智英、藤本由香里、他)。午後2時から会見に出席した人たちを中心に都議会議事堂2階第二会議室で集会も予定されている(4時まで)。またマンガを発行している大手出版社なども声明を出すらしいし、雑協も何らかの見解を発表するようだ。会見等についての詳細は山口貴士弁護士のHP(http://yama-ben.cocolog-nifty.com/ooinikataru/)を参照。会見開催を申し入れた山口貴士弁護士は、なるべく多くのメディアに訴えたいという意向だ。
 
 今回の条例改定のポイントは、ネットのフィルタリング規制と、児童ポルノ法改定を先取りする形での性表現規制強化で、後者は今後、国会レベルで法改正論議につながっていきそうだ。昨年来、児ポ法改定論議と東京都の条例改定の動きはセットになって進んできたのだが、問題はこんなふうに現実に条例改定がなされるという段階に至っても社会的議論がほとんど尽くされていないことだ。都議会をめぐる攻防はもう1カ月以上続いているのだが、そんな問題が起きていることすら知らない人がほとんどだろう。
 
 私の基本的立場は90年代のコミック騒動の時から変わっていないのだが、表現しかも性に関する表現というデリケートで、人によって受け止め方の分かれる問題を、法的規制で権力によって取り締まるというのは弊害が大きい、というものだ。社会的議論を経たうえで、ある種のルールを作っていく必要はあると思うが、例えば90年代の論議を経て出版流通でのゾーニング(すみ分け)はかなり進んだ。当時は「書店ではドラえもんの隣にポルノが置かれている」と非難されたものだが、いまやさすがに「ドラえもん」と大人向け性表現マンガは別の棚に分けられている。差別表現や性表現については、法的規制でなく、「思想の自由」市場における市民的ルールによって解決がはかられるべきものだ。
 ま、この議論も細かくやっていくと簡単ではないし、「児童ポルノ」の問題というのはまた別の側面もあるので、本当はかなりきちんと議論しないといけないのだが、今はそういう議論の場そのものがないのが現実だ。今回の条例改定の動きについても、新聞・テレビはほとんど報道していないため、議論の前提になる事実そのものが知られていない。こういう中で次々と表現規制がなされていくのは怖いことだ。
 ということで、来週、都議会の動きに要注目!だ。なお90年代の「有害」コミック騒動については創出版から『「有害」コミック問題を考える』『誌外戦』という2つの本が出版されており、まだ在庫もある。今日にまで至る問題の基本は既にこの90年代の議論にほとんど集約されている。参考文献としてご覧いただきたい。(『創』編集部、篠田博之)

 

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