最後は出版に絞り志望会社に合格

Nさん/大手出版社内定


 就活は絶対に出版業界を志望する。そう決めたのは大学に入って間もない頃だ。ファッション誌を始め、雑誌そのものが大好きだった私は、その頃からこれしかない!と、雑誌の編集者を目指していた。だから実際の就活でも、少しは他業界も受けてはみたものの、結局最後は出版一本になって奮闘することになった。就活を終えて感じるのは、自分が「好きだ」と思える分野にひたすらのめり込んできて良かったなということ。思い返せば3年間、大好きな服、雑誌を追いかけてばかりだったような気がする。

一気に早まった集英社の動きに焦り

 就活について現実的に意識し始めたのは大学3年の夏頃だった。サマーインターンの解禁日が6月1日で、周りが一斉に動き出したからだ。私の周りには出版志望の友人がおらず、商社や広告業界などを志望する子たちは夏休みを利用してインターンをしていた。一方で出版業界はほとんど音沙汰なし。
 興味を持てるファッション誌を取り扱わない出版社は受けるつもりがなかったため、私の就活は夏休みにはスタートしなかった。しかしその代わりに、同時期から知り合い数人でzineを制作したり、メンズファッションやカルチャーを取り扱うウェブメディアでアルバイトを始めたりと、自分の趣味をどんどん突き詰めるようになっていった。
 私の就活がしっかりとスタートしたのは、12月半ばのキャリタスが主催するイベントの中でやっていた、「出版三社合同パネルディスカッション」に参加した時である。このイベントは、小学館の採用ページの内定者体験記を眺めていた時に見つけ、滑り込みで参加したものだった。パネルディスカッションの内容は、講談社、小学館、集英社の人事部長が登壇し、お互いの印象や採用戦線のぶっちゃけ話をするもので、そのイベントが超満員だったことから「本当に出版業界って狭き門なんだ」と焦りを感じ、動き始めたのである(冷静に考えれば他業界のブースだってもっとすごい)。
 それから年が明け、説明会の数も日に日に増えていった中、私をさらに焦らせたのが、「今年度の集英社のES締切は2月13日」ということだった。『マスコミ就職読本』は読んでいたものの、例年に比べてあまりにも早すぎる締切に、諦めた人も多かったのではないだろうか。私はなんとか間に合ったが、本当にギリギリで書き上げたことで誰にも添削をしてもらう暇がなく、まるで自信がなかった。うまく書けずに、採用担当に伝わらなかったら意味がないからだ。だからこそ他人に読んでもらうことは本当に大切であり、これからESを書く方たちには、誰でもいいし一度でもいいから他人に読んでもらうことをおすすめしたい。

集英社、小学館、講談社と続けて筆記で敗退

 しかし結局、ESを送った9社の出版社の内ESの段階で落ちることは一度もなかった。私は自分が書く文章に自信があるわけではないので、雑誌編集者になりたいという想いから行動に移してきたことの内容が、功を奏したのかもしれない。書く上で意識したことは、「本当にこの仕事がしたいから志望していて、だからこういったことをしてきたし、こういうものに興味を持っています」といったように、ES全体に一貫性を持たせることだった。
 出版社のES内容は幅広く、その項目は志望動機や“ガクチカ”に加え、好きな作品や趣味、最近関心を持ったこと、企画、作文にまで及ぶ。しかしそんな中でもできる限りは紐付けし、意思が単純かつ明確に伝わるよう心がけていた。
 ESだけは調子が良い私だったが、次には「筆記試験」という大きな壁が立ちはだかる。筆記試験は、前半年ほどの期間の幅広い分野における時事問題をカバーし、加えて作文、クリエイティブ試験、適性検査が企業によって組み合わせを変えて入ってくる。  私は政治経済などのニュースに全くうとかった上に、漢字も苦手、英語も得意ではない状態だったため、筆記試験の壁が一番難関だと感じていた。個人的な最難関を突破するためにまずとった対策としては、新聞やニュース、クイズ番組に目を通すようにすることと、一般常識と漢字は『一般常識&最新時事 一問一答 頻出1500問(高橋の就職シリーズ)』を苦手な部分だけ繰り返し読むことだった。
 また作文は3〜4人の友人に添削をお願いし、適性検査は学校でSPI対策を受けてその問題を解いたのと、英語は大学受験用の長文問題を解く練習をした。クリエイティブ試験は対策が難しいと感じたため、ぶっつけ本番で立ち向かうことにした。ただそこはやはり個人的な最難関。集英社、小学館、講談社と立て続けに筆記で敗退し、その時には本当に焦りを感じたのを今でも鮮明に覚えている。
 誰よりも編集者になる準備をしてきたつもりだったのに、その話を一言も話せないまま終わってしまうのではないかという恐怖でいっぱいになった。大事なのは、自分に合ったスタイルを早く見つけて効率よくやっていくことだと思う。大手出版社の内定者に話を聞くと、「大丈夫だって〜」とたくさん言われる(私もそうだった)が、本気で入りたいと思っているなら、後悔したくないなら、是非面接対策と同じくらい抜かりなく気合いを入れて、筆記試験に望んでほしい。

出版社の面接対策として役に立ったことは

 さて、大の苦手である筆記試験は軽く触れるだけで置いておきたい。通った方が、運が良かったと感じているくらいだ。一方で、面接まで繋がった出版社に関しては一度も落ちることがなかったので、これまた人それぞれで参考になるのかはわからないが、そちらの話をしっかりしていきたいと思う。
 面接まで繋がった出版社はどこも雑誌やファッション、カルチャー重視の出版社だ。ポジティブに、やはりそっちと相性がよかったのだと思いながら、毎回の面接に臨んでいた。面接の内容については、各社大きな違いはなかったと思う。
 まず自己分析は軽くでもしておいたほうが、いざという時に役立つと感じた。たまにふと、大学以前の頃や生い立ちについて問われることもあるからだ。私の場合は雑誌志望だったために、「いつ頃から雑誌を読み始めたの?」や「最初にどんな雑誌を読んでた?」と聞かれることもあったし、誰でも共通しそうなものだと「大きく後悔をした経験はある?」とか、「一番長く続けたものは何で、どれくらいですか?」といった質問もあった。
 私はとある会社にワンデーインターンに入った際に教えてもらった、A41枚に自分の年表を作ってみるといったやり方で自己分析をした。小学校高学年〜大学4年までについて横に書いていき、それぞれ印象的だった出来事に対して、「なんでそうなったのか」「どうしてそういった決断をしたか」を肉付けしていった。そのあとは、それらを俯瞰的にみて自分がどういった考えを持っているかを分析する。これだけで十分足りた印象だ。他己分析も大事だという人もいるが、私はそちらに関しては特にやってもらわなかった。
 次に必要になってくるのは、各社の分析だろう。何をどうやっていいのかがわからなかったため、ネットの情報をもとに、きっと大衆派であろう国会図書館に通う方法をとった。ファッション誌志望だった私は、読んだことがないものも含め各社の雑誌をただひたすら読み、傾向や良い点悪い点をメモしていった。特に志望する雑誌については1年分ほどバックナンバーを読んで、好きな企画、あったらいいなと思う企画、その雑誌だったらやりたい企画を考えておくようにしていた。
 また最近では、付録をつけるか否か、電子版の雑誌についてどう思っているのかについても各社は敏感なので、そちらにも必ず触れ、考えを掘り下げておくことがマストだと思う。実際にどこの会社でも紙とデジタルに関する質問は必ずあったし、今はいくらビジュアルを重視する雑誌だって「やっぱり紙をやりたい」だけでは通用しない。デジタルやリアルなイベントなども混ぜ合わせながら、いかにしてその媒体をブランディングするべきなのかのビジョンを明確に持っておいたほうがいい。  ただ細かい戦略については、もちろん私たちより会社の方々の方が確実に知識を持っているということを忘れてはいけない。決して無理に背伸びはせず、学生らしく自分なりに思ったことをぶつけ、しっかりと考えているということが伝わればいいのではないだろうか。
 そのほか面接で感じたことといえば、他業界に比べて圧倒的に面接官の人数と回数が多かったことだ。例えば光文社の面接は1次と2次が20分を2本で面接官は各4人ほど、最終面接は20分を3本で面接官は各7人だった。それぞれ話し倒すことになるので喉はカラカラになるし、集中を切らさないように体力が必要で、終わった後どっと疲れが来た感覚があった。何回も似たようなことを繰り返すし、同じ質問が飛んでくることもあるが、どの面接でも後悔のないよう伝えきることを意識した。

最終的に5社のうち3社から内定

 面接に進んだ出版社はどこも選考が遅めで、5月下旬から6月上旬に筆記、6月から面接がスタート、7月上旬に内々定の流れで進んだ。私は残っていた5社の進行が丸々被ってしまい、6月は国会図書館で企業研究を進めると同時に、毎週火〜土に毎日1社ずつ面接があってパンクしそうになっていた。
 だから余裕がある人たちは、就活を始める前から気になる雑誌を読む際にメモしておくだけでもやっておくといいし、筆記試験を勉強する段階から軽く企業研究も進めておくだけでも面接前が全然楽になると思う。  最終的に5社のうち3社から内々定をもらい、残る2社はそれに伴って最終面接の前に辞退する形となったが、各社最後までやってみて、どの企業もその企業らしい質問が飛んでくる面接だったと感じた。冗談交じりに、雑誌が強い会社に対して「ポジティブに、やはりそっちと相性がよかったのだと思いながら」と前述したが、のびのびとまた時に楽しく面接を受けることができたので、その他の会社に比べたら本当に運とご縁があったのでは? と自分では思っている。  みなさんもここしかないと思える会社があるのなら、是非まっすぐそこに向かってぶつかっていってほしい。納得のいく就職活動になるよう、応援しています!


試験を受けていて「ここで働きたい」という気持ちが…

Tさん/キー局、出版社内定:
文章を読んでほっとする。映像を見て涙する。人の無事を願ってニュースに聞き入る。そうやって自分の感情を揺さぶられて生きてきた。

やりたい事と適性は別…だから面白い

Sさん/全国紙、キー局内定:
小学生の時からずっと、小説の編集者になりたいと思っていた。書く才能はなかったが、なんとか本に関わる仕事に就きたいと思っていたし、「この人にこんな作品を書いてほしい」と考えることが多かったからだ。


「広告業界に行きたい!」と声を大にして言い続けた

Yさん/放送局内定:
中学生の頃、「マズい、もう一杯!」という青汁のCMに出会った。「人の本音や世の中の本質を見抜き創られたものは、多くの人の心を揺さぶるのだ」と強く感じ、

ただただ記者になりたかった

M君/全国紙、出版社内定:
中学1年生の時、「クライマーズ・ハイ」という映画に出会った。1985年の日航ジャンボ機墜落事故とそこにある事実を、地元新聞社の記者が追っていく作品である。


「記者になりたい」との夢を叶えるまで

Y君/放送局、出版社内定:
記者になりたい」。幼い頃から抱いていた夢だ。自分が生まれ育った町は、衆議院選挙の激戦区で、与野党問わず多くの大物政治家が駅前で応援演説を行っていた。

50連敗に涙した後、奇跡の第一志望内定へ

Kさん/ブロック紙、地方紙内定:
2勝50敗。私の就活の戦績だ。
文章を書く仕事がしたい。そう漠然と意識するようになったのは、小学生の頃だった。