トップ> 編集長の目 > 創出版: 2011年3月アーカイブ

創出版: 2011年3月アーカイブ

 昨夜は月刊『創』の校了で編集部は徹夜。疲れました。地震の影響で執筆者も大変で、作家の柳美里さんや精神科医の香山リカさんら連載陣は明け方近くまでがんばって原稿を書いてくれました。佐藤優さんも原稿が届いた時間が一昨日朝の5時でした。
そんな疲れ切ったところへ講談社の野間佐和子社長死去の知らせがファックスで。この2月に息子に社長の座を譲ることを決めた矢先でした。
 講談社社長が女性であることを知らなかった人もいるでしょう。実はこれにはわけがあって、彼女は元々出版人ではなかったのですが、前社長の夫が若くして死去したため、その後を継いだのです。つまり講談社社長は野間家という一族の世襲なのです。同様に新潮社は佐藤家、小学館は相賀家の世襲。大手出版社の社長がこんなふうに一族の世襲によって受け継がれていることを意外と思う人もいるでしょうね。メディア界って意外と古い体質を抱え持っているものなのです。
 講談社はトップの交代によって、役員も若返りました。若社長はデジタル化と映像化に積極的なようで、講談社の方向性も少し変わることになるかもしれません。ちなみに昨夜校了した『創』次号の特集は「マンガ市場の変貌」。マンガ志望の人は必読です。(篠田博之)

 昨日24日、東京地裁にてアキバ事件の判決公判が開かれ、加藤智大被告に死刑判決が出された。本来なら大きなニュースになる事柄だが、何せ報道は今、地震と原発に集中しており、新聞でも一面で扱わないものもあった。この裁判はもう30回くらい続いており、その大半を傍聴したが、昨日の公判にはマス読実践講座の受講者の姿も見られた。加藤被告の場合、死刑は予測通りだが、法廷で直接裁判官から死刑が宣告されるという場面は、やはり重苦しい空気に包まれる。加藤被告は普段からほとんど表情を変えないのだが、この日も宣告を受けた後、退廷時に遺族や被害者に一礼をして去っていった。死刑事案は弁護人が必ず控訴するのだが、加藤被告の場合はもう死を覚悟していると言っているから控訴を取り下げる可能性が高い。もしかすると、今回が、彼が世間に姿を見せる最後の機会だったのかもしれない。これまでの公判で証言台に立った遺族たちは、口ぐちに「極刑を」と主張し、加藤被告につめよる人もいた。死刑というものについて毎回考えさせられた裁判だった。死刑事件の裁判は何度も傍聴してきたが、今回も多くのことを考えさせられた。10年以上つきあった宮崎勤を始め、死刑囚との関わりについては、ちくま新書から『ドキュメント死刑囚』という本を出している。死刑に関心
のある人は読んでほしい。(篠田博之)

 未曾有の震災の影響は日を追って深刻になっているようです。
 現在、『創』編集部は次号の漫画特集のために連日、集英社や小学館を取に訪れているのですが、『少年ジャンプ』など来週発売号はいずれも発売期が決定しました。紙不足の問題のうえに、流通の確保ができないためで。出版界のこういう状況は今後、さらに深刻になることが予想されます。
新聞・テレビが連日、特別態勢を組んでいるのはご存じでしょうが、マスメィアにとっても今回の事態は未曾有の体験といえます。特に福島原発につては「今の報道でよいのか」という批判的声も出始めています。国民がパックに陥らぬようにというのは報道のひとつの使命ではありますが、このの報道は、政府の「安全だ」という発表をそのまま垂れ流しているとも言るからです。現在の福島原発の事態をどう見るかについては日本と海外とは大きくずれています。日本では政府がパニックを防ぐために、ネガティな情報を抑えている可能性はおおいにあるわけで、そんな状況で報道機関どういう立ち位置をとるべきかというのは大事な問題です。政府の対応を重しつつも、やはり独自の視点で報道機関は対処すべきで、政府の説明を
垂れ流すだけでは、大本営発表と同じになってしまうわけです。2~3日前ら、報道のあり方をめぐっては様々な意見も出てきています。TBS「報道集」の金平キャスターにメールで連絡をとったところ、今度の「報道特」ではまさにそういう視点も含めて、今回の事態の検証を行うようです。
また23日19時からは『デイズジャパン』の広河隆一さんらが独自に現地で放能測定などを行った結果をもとに、「福島原発で何が起こっているか?」いう集会を早稲田奉仕園で開催します。このメルマガを読んでいるのはマコミ志望の人たちですが、こういう大惨事の時にこそ、マスコミの役割はなのかが問われるべきです。そういう視点で、ぜひ報道に接し、自分の頭
で考えてほしいと思います。(篠田博之)