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創出版: 2010年3月アーカイブ


 この1週間ほど、都条例改定問題に忙殺された。15日のマンガ家らの記者
会見をきっかけにマスコミが一斉に報道を行い、出版業界団体などが連日反
対声明をあげていった。私は日本ペンクラブの言論表現委員会副委員長も務
めており、この件については声明の起草にも関わることになった。1~2日
かけて文案を練り上げて18日に発表。この問題でペンクラブが声明を出すこ
との意味は大きく、きょうの新聞でも紹介されている。

 先週までは知らない人が多かったこの問題だが、わずか1週間でここまで
議論が大きくなったのは異例といえる。

 流れを変えたのは15日のマンガ家らの会見と、その後開かれた集会に、
100人の会場に400人近くが押し掛けるという事態だった。危機感を持った人
たちの熱気が事態を動かすという、まさにこれが民主主義だ。

 都議会には16日、2000件のメールや電話があったという。表現の法的規制
というデリケートで大事な問題が、広い議論に供せられることもなく議会で
決まろうとしていることに多くの人が一斉に声を挙げたせいで、改定案の成
立が土壇場で止まるという異例のケースだった。

 一昨年の映画「靖国」上映中止事件の時もそうだが、様々な表現者が声を
あげ、議論が拡大すると事態を動かすことができるという意味では、相当ア
ブナイ状況になっている日本の民主主義もまだ死滅したわけではないことを
実感させる。

 今回の騒動は、これから表現やメディアの仕事に関わりたいと思っている
人たちには重要な問題だ。この1週間の経緯については『創』ブログに連日
書き込みを行い、近々専用サイトを立ち上げる予定だ。ぜひご覧いただきたい。

「創」HP
http://www.tsukuru.co.jp/
月刊「創」ブログ
http://www.tsukuru.co.jp/tsukuru_blog/

 3月11日、秋葉原無差別殺傷事件・加藤被告の公判を傍聴した。初公判は
傍聴希望者が殺到したらしいが、だいぶ落ち着いて、この日は倍率が1倍強。
大半の傍聴希望者が入れた。事件当時に報道された加藤被告の顔は血まみれ
で、みなあの顔しかイメージにないと思うが、実際はスーツを着て、若きビ
ジネスマンといういでたちで出廷。入退廷時に、被害者の席もある傍聴席に
向かってお辞儀をし、係官の指示にも一礼して従うといいう様子だ。ただ起
こした事件は取り返しがつかないもので、その日証言台に立った被害者友人
も、極刑を希望、「死にたいと言って事件を犯した犯人がいまだにのうのう
と生きているのは許せない」と述べた。

 公判は今後、3月15日、4月27日、5月21日...と続いていく。もう傍聴を
希望すれば殆どが入れる状況なので、興味ある人は裁判所に足を運んではど
うだろう。開始時間などは東京地裁刑事部に問い合わせれば教えてくれる。
マスコミ志望の学生諸君なら皆が当時は関心をもった事件だと思う。

 今は入社試験直前で忙しいという人もいるだろうが、実はこれが大きな間
違いだ。マスコミ人に必要なのは、好奇心や行動力などと言われるが、もし
あなたが採用側だとして、家で受験参考書を読んでいる志望者と、事件現場
や法廷に足を運ぶ人と、どちらがその「求められる人物像」に近いかと尋ね
られたら、後者と言うのではないだろうか。

 マスコミ受験対策を、参考書などの暗記やマニュアルの覚え込みと考えて
いる人は、まずその認識が間違っていることを知ってほしい。もちろん筆記
試験はパスしないといけないから、ある程度の受験勉強が必要な人もいると
思うが、面接などを含めた選考全体で見られるのは、実はもっと違う適性な
のだ。私の経験から言っても、特に報道志望の場合は、受験シーズンで忙し
い時期でも、社会問題に関わるような場へ足を運んでいたような人がやはり
合格している。採用側だって、そのへんはよく見ているのだ。

 『マス読』を時々、マニュアル本などと間違えて呼ぶ人がいるが、悪しき
マニュアル主義を批判しているのが、『マス読』の基本姿勢なのだ。

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