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創出版: 2006年4月アーカイブ

 社民党の保坂展人議員が自身のブログ(2006年4月18日付)に書いている。
「大変なことが、国会で起きている。しかし、さらに大変なことは、今それを多くの人々が知らずに、後の時代に『エッ、こんな法律いつ出来たのか』と驚いてももう遅いという流れに政治が瓦解していることである」

 大変なことというのは、いよいよ審議が始まる共謀罪のことで、与党は4月末にもこれを衆院通過させる意向という。最近新聞が大きくとりあげ始めて少しずつ知られ始めたが、まだまだ知らない国民の方が多い。行為でなく思想を処罰するという、近代刑法の基本理念をひっくり返すもので「現代の治安維持法」とも言われているのだが、今の国会の与野党バランスからいえば、これが今国会で成立してしまう恐れは高い。マスコミも一致して反対するというのとはほど遠いのが現状だ。

 先頃、新宿武蔵野館で映画「白バラの祈り」を見た(お薦め!)。ナチス政権末期のドイツで反戦ビラをまいた学生が拘束され、あれよあれよという間に処刑されてしまうという映画で、おいおいこれで死刑かよ、と見ていて誰もが思うのだが、これが実話なのだから恐ろしい。そしてもっと恐いのは、反戦ビラをまいて逮捕というところまではもう日本も来てしまっていることだ。

 そこへさらに共謀罪新設……と、このままでは映画と同じ方向へ向かっているのだが、問題なのはジャーナリズムの衰退によりそういう問題がきちんと一般市民に伝えられていないことだ。ジャーナリズムの権力監視機能の衰退はまさに目をおおわんばかりで、これから特に報道をめざす人たちにはそういう現実についてぜひ考えてほしいと思う。

 ちなみに共謀罪については、国会審議と同時にテレビなども取り上げ始めるはずだし、4月26日には日本弁護士連合会が大きなシンポジウムを予定している。関心ある人は創出版のホームページに集会案内などが載っているので参照のこと(こちら http://www.tsukuru.co.jp/media/kyobozai.htm )。

 いよいよこのメルマガも無料配信はきょうまで。みなさんご愛読ありがとうございまし た。今後もマスコミ就活を続ける人は必ず登録手続きをとってください。手続きはちょっとめんどうだけど、中小マスコミの採用情報をきちんと入手できるのは、このメルマガしかないのが現実ですから。                                      (篠田博之)

 このメルマガを読んでいるのは大部分4年生だと思うが、新3年生も少しずつ動き出しているようだ。前回書いたように大学の就職課主催のガイダンスが間もなく始まるので、予定を書いておこう。最初は津田塾大学で4月27日16時20分~。次が学習院大学で5月10日18時10分~(就職課主催ではないのかも)、東京国際大学6月9日16時40分~、明治大学6月15日18時~、学芸大学7月5日15時半~といった具合。「私の大学でも開いてほしい」と言ってくる人もいるが、基本的に就職課主催のガイダンスなので、就職課に希望を出してほしい。

 そのほか5月8日から日本エディタースクールで雑誌論の講義を受け持つ。就職活動をしながら編集の基礎も学びたいという人は、こういう専門学校に通うのもよいと思う。日本エディタースクールの詳しい案内はこちら

 4月15日からは毎週土曜日に東京経済大学大学院の授業も始める。初日のこの日は、授業を早めに切り上げて院生を誘い、渋谷に映画を見に行こうと思っている。知り合いの女性ビデオジャーナリスト古居みずえさんの「ガーダ パレスチナの詩」で、上映後ビデオジャーナリズムをめぐるトークも行われる。就職試験に追われている人たちはパレスチナどころではないだろうが、関心ある人はぜひどうぞ。

 古居さんは37歳まで普通のOLだった女性だが、大病を患って奇跡的に助かり、「一度きりの人生なのだから何か表現する仕事をしたい」と、40歳で一念発起してジャーナリストをめざし、単身パレスチナに乗り込んだという人だ。これからジャーナリズムをめざそうという人たちには、その生き方を含めて参考になるはず。今回上映の「ガーダ」は彼女の初監督作品だ。映画についての情報はこちらを参照のこと。

 目先の受験勉強も大事だけど、自分は一体何のためにマスコミをめざすのかといったことも、こういう機会に考えてほしい。 …って、毎回このセリフ言ってるな(笑)。   

                                               (篠田)

 最近、コメント取材の依頼が多い。いま発売中の『サンデー毎日』には、朝日社長の息子の逮捕について、その前には朝日新聞本紙で民主党メール問題について、さらに明日の東京新聞には小林薫の『創』の手記について、はたまた今後の掲載は、自費出版の会社の倒産事件についてのコメント(東京新聞)、新聞のコラムについて(『サイゾー』)と続く。今週に限ってもほぼ連日、取材が入っていた。

 またこの数日の間に、私が宮崎勤に特別接見したというニュースがあちこちに載って、日経新聞見ましたよとか、時事通信の配信見ましたとか、いろいろな人に言われた。

 自分も同業者なので基本的に他のメディアからの取材依頼は断らないようにしている。でも、テレビの取材などやたら時間をとられるわりに放送されるのはわずか。へたをするとニュースが多くてそのネタが飛んでしまったりする。難しいものだ。

 さて、最近は5月発売の『創』のマンガ特集の取材に忙殺されている。連日、小学館・ 集英社と講談社の間を行ったり来たり。日本のマンガの大半はこの3社の手になるというほど寡占化が進んでいるのがマンガ市場の特徴だ。

 でもこういう取材をしていて痛感するのは、出版界が急速に様変わりしていること。メディアミックスというのもやや古い言い方で、いまや出版・テレビ・ネットといったメディア間の垣根を超えたコンテンツビジネスがいろいろな形で進行している。

 そうした業界の変容は、きょう発売された『創』5月号の「いま話題の出版社」で取り上げた角川書店や日経BP社でも顕著だ。角川グループなど、いまやこれを出版という枠組で捉えることは不可能といってよい。

 出版をめざす人たちにもそういう問題を考えていってほしいと思う。『創』はもちろんマスコミ就職に役に立つのだが、狭い意味での業界誌とは異なる作り方をしているつもりだ。

 話は変わるが、来年度志望者へ向けた大学就職課のガイダンスの講師依頼が次々と来ている。来年へ向けた動きが始まったわけだ。早いものだ。光陰矢の如し。

 さらに話は変わるが、新宿武蔵野館で上映している映画「ホテル・ルワンダ」はお薦め。久々に映画館で泣いてしまった。     
                                                               (篠田博之)