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創出版: 2005年11月アーカイブ

  雑誌『創』が締切で忙しい時期だが、きょうは1日、他のことに追われた。ひとつは宮崎勤事件の最高裁での最終弁論が行われ傍聴をしたのだが、『創』今月号に宮崎被告の手記が掲載されているため、新聞・テレビから問い合わせや手紙原文の撮影依頼がたくさん来たこと。日本テレビ、TBSなどは長時間かけて手紙を接写していった。きょうのニュースと明日朝の「朝ズバ」「ズームイン」でなど放送予定。

 新聞は、先週金曜日の毎日新聞が大きく宮崎裁判の解説を載せ、『創』についても紹介したが、恐らく明日の朝日新聞の朝刊や東京新聞などにも掲載される予定(もしかすると読売も)。

 裁判傍聴には、佐木隆三、吉岡忍、大塚英志らおなじみの作家が勢揃い。普段は九州にいる佐木さんとは久しぶりに顔をあわせた。

 宮崎事件というのは、多くのジャーナリストにとっても思い出深い事件だ。犯罪史上まれにみる凶悪事件だっただけでなく、オタクとかサブカルなど文化面でも大きな影響を及ぼした。きょうの法廷では、宮崎被告が精神障害なのかどうかが最大の争点になっていた。本日で結審。早ければ来年1月にも死刑が確定するのではと言われる。

 さてもうひとつ、最近気になっているのはNHK記者が放火容疑で逮捕された事件だ。記者クラブが家宅捜索をうけるという前代未聞の事態もさることながら、問題は入局2年という若い記者がどうしてああなってしまったかということ。マスコミはあまり突っ込んだ報道をしていないが、彼は恐らく精神的不安定な状態だったと思われる。一部週刊誌はうつ病とも書いていた。

 実はマスコミに入って精神的不安定になってしまう例が近年目立つ。昨年末も『週刊新潮』に入社して1年めの記者が自殺した。マスコミに入るというのは、概して頭がよくてナイーブな人が多い。そして恐らく就職して職場で先輩から「バカヤロー」と怒鳴られるのが人生最初の挫折体験となる。今回のNHK記者もデスクにいつも激しく叱咤され、しかも失恋が重なって不安定となり、夏頃から職場を離れ実家に帰っていたという。

 最近マスコミで適性検査を課す会社が増えたのは、ひとつには精神面のチェックという意味があるのだと思う。この問題、あまり知られていないが、マスコミにおいては深刻なテーマになりつつある。今回の放火事件を機にもう少しそういう問題について議論すべきだと思う。

 そういえば本日の最高裁の傍聴、マス読実践講座の受講者なども訪れた。最高裁の中に 入る機会というのはめったにない。こういう機会に現場へ足を運んでみるというのはすごく大切。マスコミ就職対策というと、筆記対策やOB訪問しか頭に浮かばない人が多いが、実は社会問題に触れる機会を持つというのも大事なことだ。マニュアルを覚えるよりも現場の人やものに接する機会を持ってほしい、というのが『マス読』からのアドバイスだ。同時に、29日からスタートするマス読実践講座の3期にもぜひ多くの人たちが参加してほしいとお願いしておきたい。

(篠田博之)