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2008年4月アーカイブ

 映画「靖国」の上映がとうとう東京では全面中止になった。この間、右翼団体の中には映画館に街宣攻撃をかけたものもいたようだが、基本的には映画館側の自主規制といってよい。それゆえにこそ深刻なのだが。
 この問題については7日発売の月刊『創』5月号で森達也、鈴木邦男、綿井健陽の3人が鼎談を行っている。この時点ではまだ新宿バルト9だけが上映中止だったのだが。 「言論表現の自由」が、今の日本でいかに危機的事態に陥っているかを示した今回の事件だが、日本映画監督協会が声明を出すなど波紋は拡大しつつある。
 さて、この事件について新聞各紙がどう報道したか、紹介しておこう。この間、社説を含め一番熱心に報じたのは朝日新聞だ。毎日新聞、東京新聞も、きょうの朝刊で大きく報じている。興味あるのは、読売新聞、産経新聞がこれをどう報じるかだが、読売新聞は今朝の朝刊一面で大きな扱いだ。解説面では「上映中止は過剰反応」という見出しで、田原総一朗さんらのコメントを紹介し、なかなかいい記事だ。読売も「言論表現の自由」に関しては他紙と共同歩調をとるという表明だ。
 微妙なのは産経新聞だ。実は今朝の新聞でこの事件を全く報道していない。映画「靖国」については反日的だという評価らしいが、それでも上映中止には反対するのか評価するのか、そのあたり恐らく内部では議論をしているところなのだろう。ちなみに産経新聞は、同様に「つくばみらい市」の講演中止事件については右翼側に批判的な報道をし、右翼からの抗議を受けている。
 上映中止はあまりにひどい、とジャーナリストらが今回の事態に抗議し、10日に記者会見や声明発表も予定されている。私が言論表現委員会副委員長を務める日本ペンクラブも、声明を出すことになると思う。
 とにかく最近は、左右が対立するようなテーマは、集会もなかなか開けないし、言論表現の場が保障されない事態が続いている。今回の上映中止事件をこのまま前例にしてはいけないと思う。