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創出版: 2012年4月アーカイブ

 北朝鮮ミサイル騒動は、なんとか終息しそうだが、この何日間かのテレビの報道は、首を傾げたくなるものだった。北朝鮮と日本両国政府がメディアを使って牽制しあい、情報戦を展開していたわけだが、日本のマスコミ、特にテレビは、あまりにも無自覚なままそれに全面的に乗って危機煽りを展開した。13日朝のワイドショーなどは、まさに戦時報道のようだった。

 北朝鮮もひどい国なので批判するのはよいが、少なくとも日本政府とは距離をとってジャーナリズムとしての見識に基づいた報道をしてくれないと、北朝鮮の国営放送と立場こそ違え、似たようなレベルの報道だったと言わざるをえない。昨年の原発報道に対する市民からの不信感は、ジャーナリズムが政府と一緒になって報道を展開したことへの疑問から生じたものだが、大手マスコミはそのことへの自覚がなさすぎる。

 最近ひどいのは、新聞の消費税増税報道もそうだ。消費税増税そのものについては、いろいろな考え方があるし、仮に新聞社が増税はいずれ必要だと考えても、それ自体はよしとしよう。ただ、それを政府の代弁をするかのように紙面で展開するのは問題だ。権力監視がジャーナリズムの役割なのだから、増税の是非論と別に、政府の今のやり方が民主主義に照らしてどうかとか、政府としてやるべきことをやっているのかといったことを批判していくべきではないだろうか。

 その点でいうと、4月6日付の朝日新聞の社説「消費増税と政治 言い訳やめて、本質論を」はひどい。こう書いているのだ。

〈いまや日本のリスクは、「決められない政治」なのだ。違う点は争っても、一致する点は前向きに議論し、きちんと決める。そんな当たり前の政治の作法を確立しよう。有権者の審判は消費増税を決めたあとに仰げばいい。民主党の公約違反の責任はそのときにとってもらおう。〉

 決めた後に解散、というのが「公約違反の責任」をとることには、どう考えてもならないだろう。公約と違うことをやって、決めたあとに解散すればいいという考え方こそ、民主主義を愚弄するものではないか。醜悪な野田政権がその民主主義を愚弄する方向につっ走っている時に、少なくともジャーナリズムのすべきことは、市民の多数の声を代弁して、それはおかしい、ということではないだろうか。この社説は、本来やるべきことと反対のことを主張していないか。

 朝日新聞は、昨年、原発報道への市民の不信の声を聞いて、「脱原発」へと紙面方針を転換させ、「原発とメディア」など、自らの責任も問う形で、検証を行ってきたはずなのに、いったいこれは何なのだと思わざるをえない。この社説にはさすがに腹がたって、投書でもしようかと思ったが、どうせボツになるだろうからとやめた。

 今の新聞・テレビは、昨年、原発報道であれだけ強い批判を受けたのに、何を批判されたのか理解していないように思えてならない。権力監視どころか、ほとんど権力の代弁者になってしまっているのではないだろうか。
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 4月13日、首都圏連続不審死事件の木嶋佳苗被告の判決公判がさいたま地裁で開かれました。予想通り死刑判決で、内容は新聞・テレビをご覧いただきたいのですが、驚いたのは傍聴希望者が40数席の一般席を求めて約1300人も押し掛けたこと。といってももちろん大半はマスコミが動員した人たちなのですが、シルバー人材センターから派遣された、いかにもという感じのお爺さんたちや、一目で動員とわかる人たちが100、200人単位で地裁前に群がっているのです。ほとんどお祭り状態でした。「創」からは、編集者2人とマスコミ志望学生らが計9人で並んだのですが、2枚も傍聴整理券を引き当てました。



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 並んでいたなかには、佐野眞一さんや北原みのりさんらおなじみのライターのほか、「創」の常連執筆者・阿曽山大噴火さんや、久々に見かけた佐木隆三さんらの顔も。北原さんは発売中の「創」に木嶋佳苗被告についてのインタビューが載っているのですが、「『創』のインタビューはなかなか評判になっています」とご本人のコメント。阿曽山さんは、TBS「サンデージャポン」の仕事でしたが、大勢の人を見て「どう見ても入れないなあ」とつぶやいてましたが、無事入れました。

 木嶋被告については、ネットなどで「ブスだ」「いやそうでもない」と論争になっているようですが、見た印象は「フツーのオバサン」。傍聴人が法廷に入ると、既に木嶋被告は入廷していて、弁護人席の端に座っていたのですが、服装もホントにフツーで、風景に溶け込んでいるという感じでした。きょうは判決文が読み上げられる間、ずっと証人席で裁判官の方を向いていたため、傍聴席からは後姿しか見えませんでした。










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 午前10時開廷後、裁判長が判決文朗読を始めたのですが、まず「判決理由から読みます」と言った直後に報道席から何人もの記者が飛び出していきました。主文を後回しにするのは死刑判決とほぼ決まっているためです。恐らく午前のニュースで一報を流すのでしょう。大事件の判決公判はいつもそうなのですが、とにかく報道席の記者たちがひっきりなしに出たり入ったりするため、判決文朗読がよく聞きとれません。また裁判長も、どう見ても傍聴人がわかるように伝えようという意志が皆無で、ぼそぼそと早口で朗読するので、断片的にしか聞きとれないのです。

 法廷が緊迫したのは11時45分頃、いよいよ量刑についてのくだりで、死刑判決の理由に入ったあたり。最後に主文の「被告人を死刑に処する」が読まれた時は、さすがに法廷に緊張が走りました。死刑という言葉はやはり重たいもので、閉廷直後、木嶋被告も少し緊張したような顔をしていました。
 死刑事件なので控訴は確実で、次は高裁での審理に移ることになります。

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 4月9日の午前10時過ぎ、静岡市内で映画のポスターを掲示していた映画監督・渡邉文樹さんが突然、公安警察に取り押さえられ、現行犯逮捕された。ここに公開するのは、その逮捕の瞬間、手錠をかけられた映像だ。

 渡邉監督は自主映画を自分で制作・上映し、宣伝も自分でポスターを街中に掲出してというスタイルをとってきた
が、この無届けのポスター掲出が違法だとして、しばしば警察が介入していた。もともと渡邉監督の映画は、天皇制などタブーに挑戦したもので、「天皇伝説」などは各地で会場に右翼団体が押し掛ける騒ぎになってきた。公安警察も渡邉監督を追尾し、上映会前に規制を行ったり家宅捜索を行うなどの措置をとってきた。上映会前に逮捕されて、上映会が中止されたこともある。

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 今回は、静岡県の条例違反容疑で逮捕されたもので、このまま勾留が続くと13日から静岡市内で予定していた上映会そのものが中止に追いこまれる怖れもあった。しかし、結果的に渡邉監督は、本日無事に釈放され、上映会は予定通り行われる。ただ罰金として30万円を科されることになった。


 権力がいかに規制しようと、右翼団体がいかに襲いかかろうと、それを跳ねのけて表現活動を展開する渡邉監督のスタイルは、自主規制だらけの大手マスコミが失った原点を教えてくれるし、今回のような逮捕事件を含めて渡邉監督の表現活動だともいえる。渡邉監督は別にイデオロギー的に極左であるとかそんなことは全くなく、表現活動の原点を極めてわかりやすく踏襲しているだけだ。

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 13日から15日までの静岡での上映会は、今回の逮捕も含めて、表現活動のあり方を議論するよい機会だ。罰金30万円を上回るくらいの収益があがるように、静岡の人たちはぜひ上映会に足を運んでほしい。日時や会場は以下の通り。13日は渡邉監督の主催だが、14・15日は連合赤軍事件の植垣さんが企画したトークも含めた上映会だ。鑑賞料金は1作品につき1000円。問い合わせは080-6749-4925(渡辺監督)へ。







4月13日 [会場]静岡市民文化会館(電話:054-251-3751)。
 ◆10時 「罵詈雑言」
 ◆12時 「三島由紀夫」
 ◆14時 「赤報隊」
 ◆16時10分 「天皇伝説」
 ◆18時 「金正日」

4月14日 [会場]スナックバロン

(静岡市呉服町2-5-22 ソシアルカドデビル4F 電話:054-221-5236)。
◆14時 「天皇伝説」
◆16時 「金正日」
◆19時30分 トークショー

4月15日 [会場]スナックバロン。
◆14時 「腹腹時計」
◆16時 「金正日」
◆19時30分 トークショー

上映会は元連合赤軍の植垣康博さんによる招待企画。
14日と15日の19時半からは、「連合赤軍」をテーマに渡辺監督と植垣さんとのトークショーも。
トークショーの料金は5000円(飲食代含む)。
会場への問い合わせはスナックバロン(054-221-5236)へ。

渡辺文樹監督作品の上映会が4月13~15日の3日間、静岡市で開かれる。
会場・上映作品は以下の通り。鑑賞料金は1作品につき1000円。

※4月9日に渡邉文樹監督がビラ貼りの際に逮捕されたため、以下のスケジュールは未定となりました。お問い合わせください。

4月13日 [会場]静岡市民文化会館(電話:054-251-3751)。
◆10時 「罵詈雑言」
◆12時 「三島由紀夫」
◆14時 「赤報隊」
◆16時10分 「天皇伝説」
◆18時 「金正日」

4月14日 [会場]スナックバロン(静岡市呉服町2-5-22 ソシアルカドデビル4F 電話:054-221-5236)。
◆14時 「天皇伝説」
◆16時 「金正日」
◆19時30分 トークショー

4月15日 [会場]スナックバロン。
◆14時 「腹腹時計」
◆16時 「金正日」
◆19時30分 トークショー

上映会は元連合赤軍の植垣康博さんによる招待企画。
14日と15日の19時半からは、「連合赤軍」をテーマに渡辺監督と植垣さんとのトークショーも。
トークショーの料金は5000円(飲食代含む)。
問い合わせはスナックバロン(054-221-5236)もしくは080-6749-4925へ。