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月刊「創」ブログ

審議入りした共謀罪法案、問われるのはメディアのあり方だ

4月6日に審議入りした共謀罪法案だが、安倍政権は5月には成立をと目論んでいるようで、あと1カ月が勝負だ。反対運動も今後一気に拡大していくのだろうと思う。秘密保護法、安保法制に続く、3番目の、安倍政権と市民が真っ向から対決する闘いだ。

 一般市民は監視対象にならないと政権側は説明しているが、そんなことはありえず、これが成立すれば今後、政権を批判するような運動が壊滅的な打撃を受ける恐れがある。「平成の治安維持法」と呼ばれる、安倍政権の切り札がいよいよ登場である。

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 それにしても、この間の金田勝年法務大臣の答弁があまりにもお粗末なうえに、法案にテロの文言がないことを追及されるや慌てて盛り込むとか、とにかく政府の対応はひどすぎる。こんなことが許されているのは、「安倍一強」体制に政権自身があぐらをかいていることの現れだろう。

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 ちょうど約10年前、共謀罪法案が廃案になった時も、日比谷野音で集会をやったのを思い出した。連日、国会前に全国から市民が集まり、その熱気が状況を突き動かした。私も連日、国会前に行ったが、その現場の熱い空気は、民主主義がまだ死滅していないことを思い知らせてくれた。
 その10年前に比べて、いまや野党は圧倒的少数だし、メディアも批判力を減退させているが、それを突破する可能性を秘めているのが民主主義の力だと思う。
 4月6日の市民グループの日比谷野音でのE3000人規模の大集会に続いて、7日は日本ペンクラブ主催の、表現者らが一堂に会する集会が行われ、9日には安保法制で大きな反対運動を展開した学者グループの集会が行われる。今国会最大の激突法案と言われる共謀罪法案をめぐる火ぶたが、切って落とされたといってよいだろう。

 私は日本ペンクラブ言論表現委員会の副委員長を務めており、7日の集会の準備に、この半月ほどかなりのエネルギーを費やしてきた。ひとつには一昨年の安保法制の時、学会と弁護士会の集会で上智大教授の中野さんの「学会も法曹界も声をあげた。では報道界はどこにいるのか」という発言に会場から拍手が起きたあの光景が胸に刺さったということがある。

 かつては戦争反対とか言論表現の自由に関わる大事な状況においては、言論表現に関わる人たちが必ず声をあげたものだ。ところが約10年前の個人情報保護法反対運動以降、そういう動きが本当に弱くなった。何よりも新聞・テレビを包括する大組織である日本新聞協会がまともな反対声明を出せなくなってしまっている。

 特にこの何年かは、安倍政権による飴とムチの揺さぶりによって、メディア界は自粛と萎縮に覆われてしまっている。安保法制は百歩譲って、思想性が問われるテーマだからメディア界が保守とリベラルに分かれるのもわからないではない。しかし秘密保護法や今回の共謀罪のような、どう考えても言論表現の自由を脅かすと思われる法案には、昔ならメディア界が一致して反対の声をあげたものだ。ところがそれが今や全くできなくなっているのが実情だ。
 だから明日のペンクラブの集会は、できれば言論表現に関わる人たちが小異を捨てて一緒に反対の声をあげてほしい、と考えたものだ。一昨年の安保法制の時に「ジャーナリズム界は何をやっているんだ」と叱責されたことへの反省でもある。

 今回の共謀罪法案をめぐっても、実情を言えばメディア界は対応が真っ二つに分かれている。どこがどうなのか、わかりやすいのは、報道にあたってこの法案を「共謀罪」法案と呼んでいるメディアと、政府の呼び方にならって「テロ準備罪」と呼んでいるメディアとに二分されている現実だ。見出しに「共謀罪」法案と謳っているのは、在京紙では朝日、毎日、日経、東京だ。それに対して読売、産経、NHKは「テロ準備罪」だ。この呼称は法案の本質をどう捉えるか、そのメディア自身が法案についてどんなスタンスをとっているかをわかりやすく表している。
 もちろんそれぞれの陣営でも温度差はあって、政府以上と言えるほど推進の立場を打ち出しているのが産経新聞だ。同じ推進側でも読売と産経のスタンスは微妙に違う。NHKは、一昨日の「クローズアップ現代+」でも法案について取り上げていたが、基本は「テロ準備罪」との呼び名だ。従来の「共謀罪」とこの法案の違いについて弁明めいた解説が長々となされていたのを見ていて、いったいあなた自身はどう考えているの、と突っ込みたくなったが、忖度に忖度を重ねた報道になっているのが今のNHKだ。籾井会長時代の後遺症とも言える。籾井会長が去った後、NHKの報道はだいぶ良くなってきたと評価する向きもあるが、籾井体制による打撃がかなり大きかったのは確かだと思う。それでも報道現場ではその状況を何とかしようと試みている人も少なくないし、彼らの頑張りには期待したいと思う。
 秘密保護法案に続いて共謀罪についても、意外にもというと失礼だが、「共謀罪」という名称を掲げ、時に批判的な報道を行っているのが日本経済新聞だ。それと、そんなふうに二分している中央メディア以外を見れば、ブロック紙や地方紙は、北海道新聞を始めほとんどが「共謀罪」という呼称を使い、批判的な報道だ。
 だから全体として見れば、まだジャーナリズムは、権力を監視するという本来の役割を失ってはいない。しかし、政権による揺さぶりを受けて、萎縮と自粛の風が吹き荒れているのが多くのメディアの現実だ。それを突破して、共謀罪に対する強力な反対キャンペーンを張っているのが東京新聞だ。

 治安維持法が当時のジャーナリズムを根こそぎ抑え込むのに使われたように、共謀罪法案が成立すれば、今後はより一層自粛が拡大するのは明らかで、そのうち政権に反対の声をあげるのも難しい状況に追い込まれていくかもしれない。そもそも安倍政権がこの間、民意を無視して次々と危ない法案を強行採決していること自体、それをチェックすべきジャーナリズムの機能が既に弱くなってしまっていることの現れだろう。
 その意味では、今回の「共謀罪」法案をめぐって、メディアがどんな報道を行うかは、まさに最後の試金石と言えるかもしれない。たぶんこれが成立すれば次に安倍政権は悲願の憲法改定を持ち出してくるのだろう。多くの人が危機感を表明しているように民意がこれほど無視され、主権在民といった戦後の基本理念がこの何年かこれほど急激に破壊されていくとは誰も想像してはいなかったのではないだろうか。
 言論表現に関わる多くの人が声をあげてほしいと思う。ペンクラブ集会の発言者は以下の人たちだが、そのほかにも映画監督の原田眞人さんが夕方、メッセージを送ってきてくれたりしている。共謀罪に多くの表現者が危機感を抱いているのは確かだと思う。

浅田次郎(作家、日本ペンクラブ会長) 雨宮処凛(作家) 内田麟太郎(絵本作家、日本児童文学者協会理事長) 江成常夫(写真家) 香山リカ(精神科医・作家) 金平茂紀(TVジャーナリスト) 田近正樹(日本雑誌協会人権・言論特別委員会、日本書籍出版協会出版の自由と責任に関する委員会) ちばてつや(漫画家) 中島京子(作家) ビッグ錠(漫画家) 森絵都(作家・日本ペンクラブ常務理事) 森達也(作家・映画監督) 山口勝廣(写真家、日本写真協会専務理事)

日野不倫殺人事件の24年目の現実

1993年12月、日野市のアパートが放火され、子ども2人が焼死した。逮捕された北村有紀恵さんは無期懲役の判決を受け、服役中だ。その彼女の置かれた現実を通して贖罪について考える。
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2017年8月号 特集【安倍「一強」 vs メディアの攻防】

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◆幕引きを図る安倍政権とメディアの攻防は...
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