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2014年10月アーカイブ

柳美里さんがご自身のブログに『創』の原稿料支払いが滞っていることを指摘する記述をしています。

そこに書かれた柳さんの主張は正当です。『創』はこの何年か、赤字が累積して厳しい状況が続き、制作費がまかなえなくなっています。その雑誌の赤字を個人で補填してきたわけですが、私はもともと会社からは報酬を得ていないので、補填するにも限界があり、いろいろな人に迷惑をかけるようになってしまいました。

もちろんその状況を改善すべく努力をしてきたのですが、出版不況はそれを超える深刻さでなかなか実効性があがりませんでした。ビジネスとして考えるなら雑誌を休刊させるしかないのですが、休刊させずにがんばってほしいと言ってくれる人も多かったので、無理を重ねてきました。連載執筆者の方たちには事情を説明して、原稿料にあたる分を出資という形にしてもらい支援していただけないか、と2年前の設立30周年の時にお願いし、応じていただいた人もいます。ただそのあたりは個々のお考えもあるだろうし、一律にお願いはしていませんでした。

そこまで無理をして続けるという判断が正しいかどうかは悩むところですが、出版不況の中でもともと利益にならない総合誌あるいはノンフィクション系の雑誌が次々と休刊させられていく状況に常々疑問を呈してきたので、利益が出なければやめるという判断にはすぐにはならなかったわけです。

柳さんとは、最初のきっかけは彼女のサイン会中止事件の頃ですから長いおつきあいになるし、連載をお願いしてからでも7年。イベントなどがあると必ず声をかけていただく関係でした。外部に対する連絡先を『創』編集部にしていただいていたことも含めて、良好な関係と思っていました。それゆえ連載終了と言われて、私の説明ができていなかったことや認識不足を思い知らされてショックを受け、一度お会いして話をしてからと思っていました。11月号で終了の説明をしなかったのは、話しあいのうえでと考えたからです。

今回聞いてみると、その9月締切の号で柳さんなりに考えがあったようでした。そういう事情についても私が対応できずにいたことは本当に申し訳ないと思っています。

プロの書き手として柳さんが言われていることは当然のことで、異論の余地はありません。早急に話し合いをし、対処したいと考えています。柳さん自身が書いているように、貴重な執筆の時間を妨げたことも申し訳ないと思っています。

                        月刊『創』編集長・篠田博之