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消費増税を新聞はどう報じたか。全国紙と地方紙で鮮明な違い

醜悪な政治的駆け引きの末に消費増税関連法が10日に成立した。この問題については全国紙が全て政府支持に回り、翼賛体制が確立したといえるエポックメイクな出来事かもしれない。一時はリベラルな紙面で知られた毎日新聞も11日の社説は「増税法成立 『決める政治』を続けよう」という見出し。いったいどうしちゃったの?という感じだ。在京紙では東京新聞だけが消費増税反対なのだが、全国紙のこの状態には失望を禁じ得ない人も多いと思う。

そんななかで興味深かったのが8月11日の朝日新聞に掲載された「増税、地方紙は批判的」という記事だ。全国紙は増税支持だったが、地方紙は、北海道や中日、中国、西日本などほとんどが増税に批判的だと指摘したもの。地元読者の目線を大事にするのが地方紙の特徴であるゆえに、そうなったという解説もなされている。全国紙の体たらくに失望していた人にとっては、希望を感じさせる記事といえる。

興味深いというのは、記事内容もさることながら、社説で増税支持を打ち出している朝日新聞にこういう記事が載ることの意味合いだ。実は、同紙は8月6日にも「消費税『朝日はどっちだ』読者から声 多様な論点 伝え方模索」という大きな記事を掲載している。

朝日新聞は社説では増税支持を打ち出しているが、記事では批判的なものもあり、いったいどっちなのだという読者の声が多数寄せられているとして、それについての回答を載せたものだ。内容は、社説は論説委員室での議論を通して決められていくのだが、それは個々の記者の記事や論評を縛るものではない、というものだ。これも興味深いのは、朝日新聞が、この記事を一面全部を使って大きく掲載したことの意味合いだ。

4月初めに掲載された朝日新聞の消費増税推進の社説は本当にひどいものだったが、社の内外で、いろいろな反響があったことを、これらの記事は示しているのではないだろうか。読売新聞などは、社論が紙面全体に貫徹していると言われるが、朝日新聞は、増税推進の旗を掲げたものの、内外には異論も渦巻いている。そのことを反映しているのではないだろうか。読者から突っ込みが入って、紙面で弁明しているだけ、まだ多少の救いはあると考えられないこともない。

以前もブログに書いたが、遠い将来、消費税をどうすべきかという議論はあってよい。しかし、いまジャーナリズムがやるべきことは、その民意を無視した法案の通し方や、民主党の変節のひどさを批判することではないか。これだけ「主権在民」の理念が踏みにじられているのに、それを「決められない政治からの脱却」などと賛美するのは、政治と同じくらい新聞が堕落したことの象徴ではないだろうか。昨年の原発報道では、政治に対する不信がマスコミへの不信に直結していったのだが、最近の大手マスコミのひどさには、本当にため息が出る思いだ。 (篠田博之)

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