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島田紳助引退騒動の背景にあるものは何か

 8月23日のタレント島田紳助の引退騒動が大きな話題になっている。『週刊文春』9月1日号によると、紳助が今回、事務所に呼び出されたのは会見2日前の21日深夜。そこで幹部から、暴力団との関係を示す携帯メールをつきつけられたという。事務所側は謹慎や休業という処分を考えていたようだが、紳助は引退を決意。会見当日の昼まで話し合いが続いていたという。

 その引退会見の日、問い合わせが殺到したというのが、ノンフィクションライター森功さんだった。『週刊現代』5月7・14日号で今回の事態を予見するような記事を執筆していたからだ。この4カ月前の『週刊現代』の記事は、見出しが「ガサ入れで見えた『暴力団と芸能界』」。大阪府警の暴力団担当刑事の証言を紹介したものだが、今読み返すと、府警が暴力団と芸能界、特に山口組と吉本興業の関係についてどう考えていたかよくわかる。その意味で極めて参考になる記事だ。

 府警の刑事の証言は、今回紳助の会見で「Bさん」と紹介された極心連合会会長宅への家宅捜索で、紳助直筆の手紙や写真が見つかったという話なのだが、この記事を紳助も吉本興業も否定してしまったため、当時は大きな騒動にはならなかった。

 それと今回の引退のきっかけになった携帯メールだが、『週刊朝日』9月9日号が書いているように、もともとは2007年6月に作成された府警の捜査報告書だという。その年にタレント羽賀研二と、元プロボクサーで今回の紳助の会見で「Aさん」と紹介された渡辺二郎が恐喝事件で逮捕されたのだが、その捜査過程で押収された渡辺二郎の携帯電話から出てきたもの。この恐喝裁判で検察側が証拠として提出したものだという。
 それが今この時期に吉本側に提示されたのは偶然の要素もあるだろうが、4カ月前の刑事の証言の報道といい、吉本ないし紳助と山口組の関係に対する警察の意向が背景として作用していたといえるだろう。ちょうど2007年に吉本の創業家当主だった林マサによる告発手記が『週刊新潮』に掲載され大きな騒動になったが、ここでも問題になったのは吉本と山口組との関係だった。この3~4年、吉本と山口組の関係について、府警が大きな関心を持ってきたことは間違いない。
今回の騒動が暴力団排除条例を全国的に整備してキャンペーンを展開しようとしていた警察庁にとって、願ってもない事態なのは確かだ。1日の定例会見で警察庁長官はさっそくこの問題を取り上げ、暴力団排除を訴えた。

 昨年の大相撲野球賭博騒動も、以前も書いたように警察主導だった。今回の騒動が今後どう展開するか見るうえで、騒動の背後に権力の意志が働いていることは認識しておくべきでないかと思う。

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