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2011年8月アーカイブ

ツイッターで何気なくつぶやいた一言が騒動に発展してしまう事例が続いているが、今回のは驚いた人も多かったろう。発端は、俳優の高岡蒼甫が7月23日につぶやいた一言だった。
「正直、お世話になったことも多々あるけど、8はマジで見ない。韓国のTV局かと思うこともしばしば」。
韓流ブームへの違和感の吐露なのだが、平日午後に韓流ドラマを放送しているフジテレビを名指しで批判したことが問題になった。いろいろなタレントを抱えている所属事務所のスターダストプロモーションにすれば、フジテレビを名指しで批判するのは幾ら何でもまずい。結局、28日に高岡は事務所を辞めざるをえなくなってしまう。これをツイッターで公表したことで、スポーツ紙など芸能マスコミが一斉に報道し、騒ぎになった。

 高岡は人気女優・宮崎あおいの夫なのだが、今回の騒動は宮崎の仕事にも波紋を投げたようで、週刊誌はこの2人の関係にスポットを当てた報道を行った。「宮崎あおいと高岡蒼甫 格差婚4年『語られざるドラマ』」(週刊文春)「宮崎あおい『それでも"暴走夫"と別れない理由』」(フライデー)「宮崎あおい 親族が明かす『女優を取るか、夫を取るか』(女性自身)等々。高岡はこれまでも09年にグラビアアイドルと一緒のところを『女性セブン』に「深夜の密会」と報じられるなど、騒ぎを起こしたことがあっただけに、週刊誌はほとんどが、宮崎あおいはなぜ高岡を見捨てないのかという論調。これ、たぶん高岡のプライドをかなり傷つけたのではないだろうか。

 さて、騒動がそこで終わっていれば、こうして取り上げることもなかったろうが、これが意外な方向に飛び火した。韓流ブームに反対する人たちがネット上での呼びかけで、8月7日、お台場に集まり、フジテレビに抗議行動を行ったのだった。それもネットに映像がアップされているから見ればわかる通り、最初はデモ申請もしていないし、集まった人たちもそうおおごとにする気はなかったようだが、ネットで中継を行ううちに、たくさんの人たちが集まりだしたらしい。たくさんの日の丸を手にした人たちがフジテレビの周囲を抗議の声をあげて練り歩くということになった。こんなふうにネットで同時中継をしているうちに賛同する人たちが集まってくるというのは昨年の映画「ザ・コーヴ」抗議などでも同じ。今回は明らかに、その前に竹島問題をめぐる日韓対立がニュースで大きく報道されたことが背景にあるといえる。

 もちろんフジテレビが平日午後に韓流ドラマを流しているのは政治的立場とは無縁の判断からだ。局員が『週刊現代』8月20・27日号でこうコメントしている。

「韓国のドラマは、視聴率も2時間で平均4%台と、あの時間帯としては上々。そしてなに
より、放映権が破格に安いんです」

 この騒動は、「嫌韓」と呼ばれるネット社会のナショナリズムに火をつけてしまったようで、21日にはさらに規模を拡大してフジテレビに抗議デモが行われるという。一昨年にNHKに度重なる抗議を行った時と同じように、「チャンネル桜」など右派メディアが呼びかけを行っている。
 当の高岡はもともと有名になったのが映画「パッチギ!」に出演したことで、当時は2ちゃんねるで「反日分子」呼ばわりされたこともあったという。今回の発言も別に政治的な背景はなかったようで、この騒動には困惑しきり。ブログでこう書いている。「日本の事を呟くと右だとか左だとかそういう話になって、今は普通の会話をしようとしてもそうはいかなくなっていってる」「なんか方向性が明らかに違う気がする」。
http://blog.livedoor.jp/tkok_sosk_8228/
事態を何とか収めようと、高岡は10日にブログで正式に謝罪を行う。今週発売の『週刊文春』によると、この事態収拾のために芸能界の大物が動いたのだという。ネットではスポンサーの花王などへの抗議も呼びかけられており、フジテレビとしてもこの成り行きは気にしているに違いない。
 ちょっとしたきっかけでナショナリズムに火がつく。今回の騒動が示したのは、日本が今、そういう空気になりつつあるという現実なのだろう。

 


 

 この何年か、日本では南京虐殺事件が次第にタブー化しつつあります。虐殺の規模などをめぐって様々な論争が起き、しかもその描き方に抗議を受けることが多いため、次第にこの問題に触れること自体を避けるようになりつつあるのです。2004年には『ヤングジャンプ』連載の歴史マンガ「国が燃える」が抗議を受けたのがきっかけで出版中止になりました。映画についても「南京!南京!」「ジョン・ラーベ」など海外で話題になった映画が、日本では公開できないというケースが少なくありません。しかもこの2本の映画は、日本人俳優が出演している作品なのですが(前者は主役が日本人、後者は香川照之ら有名俳優が出演)、それが日本で公開できないでいるのです。
 そういう現状に風穴を開けたいと、中国映画「南京!南京!」をこの8月21日(日曜日)、都内で自主上映しようという試みが進められています。作品に対する評価はすごく高く、国際的な映画賞も受賞している映画であるだけに、中国人監督自身も何とかして日本で上映してほしいと強く希望し、今回の上映が実現することになったものです。実はこの映画の場合、タブーに触れるといった問題のほかに、もうひとつ大きな問題を抱えていました。中国では音楽著作権が厳しく扱われていないため、作品中に出てくる音楽の著作権がクリアされておらず、著作権者との交渉がこじれてしまっているのです。実はこの映画は、昨年春まで、日本の配給会社が正式に名乗りをあげ、試写日程まで決まっていながら、公開が延期されてしまったのでした。
 今回の自主上映については、実行委員会が著作権管理団体ジャスラックとの手続きをクリアしましたが、まだ配給会社との紆余曲折も予想される状況です。
 自主上映については予約も受け付けており、詳細はこちらのサイトへアクセスを。http://jijitu.com/filmfestival2011/
私(篠田)はもちろん、既にDVDで映画を見ましたが、確かによく出来た作品です。日本兵の残虐なシーンはもちろん出てくるので反発する人もいるとは思いますが、ぜひ公開したうえで議論に供されるべきだと思います。今回の自主上映には監督自身も来日。当日、通訳付きで監督の講演も行われます。そのため、不測の事態を警戒して、当日は会場警備も行われる予定。ちょうど昨年、上映中止騒動になった映画「ザ・コーヴ」を右翼の抗議行動が予想される中で、『創』編集部が主催して初の大規模な自主上映を行ったのが、なかのゼロ小ホールでしたが、偶然にも今回の会場も同じ場所。ここは会場前の道が狭いので右翼の街宣車が入りにくいのですが、昨年の「ザ・コーヴ」の上映にも右の人たちが抗議にやってきました。
 『創』編集部は鷹揚なので、上映中止を求めるビラは自由にまいてもらい、むしろ一緒に議論しようと呼びかけたところ、何と終了後の打ち上げに彼らがやってきて、酒を飲みながら激論を交わすことになったのでした(普通ならありえない展開ですが)。今回の映画「南京!南京!」も、一応右翼団体の抗議に備えて弁護士らが会場警備にあたったりするようですが、さてどうなることか。もちろん鈴木邦男さんらも当日は駆け付けるし、私も行ってみる予定です。時間の都合で会場からの発言時間はないようですが、映画上映と監督の講演にどんな反応が出るものか興味はあります。討論の時間がないのは残念ですが、南京事件の映画がタブー化しつつある日本の状況を考える契機にはなると思います。
まだ空席もあるようなので、関心ある人はぜひ足を運んではどうでしょうか。なかのゼロ小ホールはロビーにスペースがあるので、当日実行委員会の許可を得て、鈴木邦男さんの新刊『新・言論の覚悟』を販売する予定です。この本は、日本の言論・表現が次々と自主規制でタブーになっていく現状を批判したものですから。

9/15(木) 緊急シンポジウム「原発とメディア」第3弾!

3月以降の原発報道は、政府・東電の発表を「大本営発表」よろしくタレ流した大手マスコミへの市民の不信感をかつてない規模で噴出させた。記者クラブ制度にもたれかかり、権力監視という本来の機能を喪失させたマスメディアに今後どう対応すべきなのか。

2011年9月15日(木) 開場18時20分 開会18時45分 閉会21時30分(予定)
定員:370名  入場料:1000円

第1部 原発報道の検証――いまメディアに何が問われているのか 
18時45分~20時10分
出演:上杉隆(ジャーナリスト)/森達也(作家・監督)/高田昌幸(ジャーナリスト・元北海道新聞報道本部次長)/司会:篠田博之(月刊『創』編集長)

※上杉さんはこの間、既存の記者クラブメディアを徹底批判した急先鋒のジャーナリスト。先頃出版した『報道災害【原発編】』が評判だ。森達也さんはオウム真理教を描いた『A3』で講談社ノンフィクション賞を受賞。創出版から『極私的メディア論』を出版するなどメディア論でも知られる。高田さんは、北海道警裏金追及キャンペーンを道新デスクとして主導しながら、道新に対する道警の巻き返しともいえる訴訟攻撃を受けてきた(『創』2011年1月号の高田さんの署名記事参照)。結局、この6月道新を退社。この高田さんをめぐる経緯そのものがマスメディアの問題を浮き彫りにしているといえる。現役記者の時代から記者クラブ制度批判を続けてきた高田さんに、今のマスメディアのどこがどう問題なのか語っていただく。

第2部 原発と市民運動 20時20分~21時20分
雨宮処凛(作家)/鎌仲ひとみ(監督)/鈴木邦男(一水会顧問)/司会・篠田博之

※鎌仲ひとみさんは映画「ミツバチの羽音と地球の回転」の上映運動を全国で展開している監督。『創』最新号(9・10月合併号)でその映画の上映と原発問題について語っている。
雨宮さんと鈴木さんは、この間、原発反対運動に積極的に関わっており、先頃、創出版からそれぞれ『ドキュメント雨宮☆革命』『新・言論の覚悟』を出版。今注目されている論客だ。

以上、今回もベストメンバーでお届けする『創』主催のシンポジウム。座席を確保したい方は事前予約をお願いします。

取材や執筆を体験し、議論を重ねていくという『創』『マス読』ならではの講座です。

主な特徴
1、終戦記念日の靖国神社や旧オウム教団、秋葉原などへ足を運んでルポを行うのですが、実施の前後に受講者で議論を行うなど、丁寧なプロセスを重ねていきます。
2、現役の記者・編集者による講義と質疑応答。授業後は酒を飲みながら講師をまじえて懇親会。これもなかなかできない体験です。

名物ともいうべきこの講座には、毎年、北海道や九州など遠方からわざわざ東京に泊まり込んで受講する人もいます。受講者同士の交流も活発で、他大学の学生や社会人とこんなふうに議論をしたり一緒に現場へ行ったりという経験は、他ではなかなかできないことです。ぜひ申し込んで下さい。マスコミ就職志望だけでなく、現場取材を体験してみたい人、マスコミに関心のある人も歓迎です。社会人も受講できるよう、時間など融通をきかせます。
 
講座日程/内容 
●主な内容
8月11日(木) 18~20時半(四谷教室)今後の説明&事前学習 文章の書き方など講習。授業後、懇親会
    15日(月) テーマ「8月15日の靖国神社」。 正午から夕方までに現場訪問(社会人は夕方)
     ※8月15日は靖国神社にとって1年に一度の特別な日です。戦争体験者など戦争について思いをはせる人たちが全国から集まってきます。その人たちに取材し、戦争について考え、議論。18時半頃から四谷教室にてその取材体験を作文にまとめます。
  23日(火) テーマ「秋葉原」 夕方16時30分頃より現地を訪問し18時30分から教室で議論と作文執筆を行います。
  25日(木) テーマ「オウム事件とは何だったのか」 17時30分ごろから旧教団「光の輪」を訪問し、信者に質疑応答。終了後場所を移して議論。
  30日(火) ES・面接対策/実習

9月 1日(木) 特別講義 日本テレビ報道・清水潔「事件と報道」講演と質疑。清水さんは足利事件のスクープなど放ってきた事件記者。『フォーカス』時代には桶川事件の大スクープで知られています。
9月 6日(火) 特別講義 『文藝春秋』編集長・木俣正剛「雑誌ジャーナリズムの現場」。受講者全員があらかじめ『文藝春秋』を読んでおき、現役編集長と語り合うという得難い体験をします。
9月 8日(木) 最終回。特別講義 共同通信・原田浩司「戦場取材と福島原発」講演と質疑、議論終了後、講師と飲み会。
         原田さんは、ペルー大使公邸人質事件で世界的なスクープを放つなど写真記者として知られた人です。
教室は通常は四ッ谷駅近くの会議室。映像を使う場合はお茶の水の教室を使います。授業時間は18時から20時半。但し、フィールドワーク(現場取材)はその時間外に行います。

懇親会第1回と最終回の終了時に実施(飲食代2000円必要)。その他の回については、人数が集まれば講師を囲んで随時実施します。著名なジャーナリストと飲めるというまたとない機会です。

受講者同士の交流もメーリングリストを設け、行います。講座終了後も、受講者同士で様々な交流や情報交換を行います。

 

【特別講師】
原田浩司(共同通信社 映像センター)
96~97年のペルー日本大使公邸人質事件と、2001年のアフガニスタン・カブール陥落取材でそれぞれ日本新聞協会賞を受賞。 ペルー公邸人質事件では世界で始めて公邸内取材を敢行。世界的なスクープとなる。


木俣正剛(文藝春秋 月刊『文藝春秋』編集長)
文藝春秋デラックス編集部 、週刊文春編集部を経て、月刊文藝春秋編集部次長、週刊文春編集部次長など。 97年週刊文春副編集長、2000年週刊文春編集長、2004年 第一編集局次長、文藝春秋第二出版局長、2010年月刊『文藝春秋』編集長。


清水潔(日本テレビ報道部)
産経新聞社、新潮社を経て日本テレビの報道局へ転職。 新潮社記者時代には、桶川ストーカー殺人事件で警察より早く犯人にたどりついた大スクープをものにした。また2008~2009年は足利事件・菅家さんの冤罪をめぐり大キャンペーンを展開。数々のスクープを放つ。

【講師】
篠田博之(月刊『創』『マスコミ就職読本』編集長)
1951年生まれ。月刊『創』『マスコミ就職読本』編集長を30年間務める。東京新聞、北海道新聞に「週刊誌を読む」を連載中。 著書は幼女殺害事件・宮崎勤死刑囚との12年間に及ぶ接触をまとめた『ドキュメント死刑囚』(ちくま新書)など。

(講師の詳細なプロフィールはこちら)


特典・受講者には『創』3カ月分進呈
・『マスコミ就職読本』2012年度版(既刊)の希望の巻を進呈

 

料金25,000円(作文などの添削・指導含む)


問い合わせ先:E-mail weekly@tsukuru.co.jp

創出版「夏期実践講座」係

申し込み方法お申し込みはこちら >>
http://xc523.eccart.jp/h575/item_detail/itemId,200/

 8月7日(日)正午から阿佐ヶ谷ロフトAにて鈴木邦男さんを中心にトークイベントが行われる。何しろ出演者が盛りだくさんだ(全て予定とあるから全員来るかどうかわからないらしいが)。『創』編集長も鈴木さんの新刊『新・言論の覚悟』持参で馳せ参じることにした。ぜひ会場へ足を運び、まだ『新・言論の覚悟』を購読していない人はそこで購入して鈴木さんのサインをもらおう。

会場地図など詳細はこちらを参照。http://www.loft-prj.co.jp/lofta/

【当日の主なゲスト】
金廣志(塾講師、元・赤軍派)
塩見孝也(革命家、元・赤軍派議長)
若松孝二(映画監督。作品に「実録・連合赤軍あさま山荘への道程」「キャタピラーなど」)荒木浩(Aleph[アレフ]広報部長)
北芝健(作家、犯罪学者、空手道場支配人)
飛松五男(作家、元兵庫県警刑事)
筆坂 秀世(元参議院議員、元日本共産党中央委員会常任幹部)
佐川一政(作家、小説家、1981年に起きたパリ人肉事件の犯人)
青木理(ジャーナリスト、元・共同通信社記者) 他