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2010年7月アーカイブ

石原都知事が言明している通り、秋以降の都議会で再び青少年条例改定をめぐる攻防戦が火を吹くのは明らかです。この際、この間問題になった論点を整理するとともに、議会の裏側でどういう攻防が行われ、次の都議会にどういう案が出されるのか、それに対して今どんなことができるのか、そういうことを議論したいと思います。
ロフトプラスワンは壇上のみならず客席を含めて議論を行う場です。当日は客席にもマンガ関係者が訪れる予定なので、出演者の話を一方的に聞くだけでなく、次の都議会へ向けて具体的にどんなことをしていけばよいかなど、会場からも発言を受け、この問題について議論をしたいと思います。会場からの発言大歓迎です。

【出演】山本直樹(マンガ家)、藤本由香里(明治大学准教授)、永山薫(評論家)、
長岡義幸(インディペンデント記者)、谷雅志(日本雑誌協会編集倫理委員会副委員長)、西沢けいた(民主党都議)、兼光ダニエル真(翻訳家)、大野修一(『COMICリュウ』編集長)、揖斐憲(『サイゾー』編集長)、他
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司会・篠田博之(月刊『創』編集長)
会場・新宿ロフトプラスワン(新宿歌舞伎町旧コマ劇場斜め向かい)
 電話03-3205-6864  
http://www.loft-prj.co.jp/PLUSONE/  
開場18時半   開会19時半   終了予定22時半
前売1500円(ローソンにて発売中 Lコード39349)  当日1800円

ローソンチケットはこちら  
(ロフトプラスワンはトークライブ専門の居酒屋で、上記入場料のほか飲食代が別料金でかかります。1ドリンク500円よりの大衆料金です)

※当日会場にて『非実在青少年読本』(徳間書店)『非実在青少年〈規制反対〉読本』(サイゾー)『誌外戦』『創』(創出版)など関連書籍を販売します。

  問合せ先  月刊『創』編集部
                   電話03-3225-1413  FAX03-3225-0898
                    
mail@tsukuru.co.jp

長期にわたりつつある東京のNHK受信料裁判ですが、2010年6月29日、残念ながら2審の高裁も敗訴判決でした。各地で同様の法的督促が行われているだけに、この裁判は重要なのですが、なかなか勝訴は難しいようです。

2審判決では被告側が受信料制度を憲法に照らして批判した部分について、ほとんど退けています。次はいよいよ最高裁ですが、この間、被告側に有利な新証拠が見つかったりもしていますので、まだあきらめる必要はありません。

では以下、2審判決の憲法判断の部分を公開します。

http://www.tsukuru.co.jp/nhk_hanketsu.pdf

月刊『創』8月号は映画「ザ・コーヴ」の上映中止問題を特集しており、それもぜひ読んでいただきたいが、もうひとつ、和歌山カレー事件の林眞須美死刑囚が手記を発表しているので紹介しておこう。死刑確定者がこんなふうにメディアに手記を発表することは簡単ではなく、それゆえ死刑囚の心情についてはこれまでほとんど伝えられていないのだが、眞須美さんの今回の手記を読むと、どれほど執行の恐怖におびえているかがわかる。
 死刑確定者は、いわば執行待機の状態で、刑執行がいつあるのか、当日の朝まで知らされない。海外では事前に執行日を伝えて近親者との最期の別れをさせたりするところもあるのだが、日本の場合はそうなっていない。以前、執行を告げた死刑囚が執行の未明に自殺してしまった事件がきっかけになったといわれる。
 こんなふうに執行を事前に告げないことについては、死刑囚の間でも賛否両論あるのだが、毎日毎日死の恐怖におびえるという事態に、精神的に耐えられなくなる人もいる。眞須美さんも、今回の手記の中で自らその心配をしているほどだ。
 手記の中では、幾つかエピソードを書いているが、例えば昨年6月3日、「本日より死刑確定者として処遇します」と改まって宣告された時には、執行の通告かと思い、腰が抜けてしまったという。また昨年7月28日、2名の執行をニュースで聞いた時には「背中に冷や汗が走り、私はへたりこんでしまいました」と書いている。
 自白も物証もないまま死刑が確定したこの事件だが、眞須美さんは今でも無実を訴えている。再審請求もなされており、この7月18日(日)にも大阪の御堂筋会館(難波別院)で「支援する会」の集会が開かれる。13時開場、13時半開会で、弁護団の報告のほか、支援を行っている鈴木邦男さんや、森達也さんらがスピーチを行う(なぜか『創』人脈ばかりだが)。資料代800円。
 今回、『創』が手記を入手した経緯の詳細は割愛するが、ひとつには眞須美さんの外部交通制限がほんのちょっとだけ緩和された事情がある。彼女の方から、通信文は不許可だが、資料などを郵送することは可能になったようで、最近になって様々な人に資料類が送付されている。この4月に安田好弘弁護士らが、眞須美さんの権利制限の見直しを大阪拘置所長に申し入れたのだが、それが影響している可能性もある。
 このところ死刑問題について一般の人たちの関心は高まっているが、死刑確定者の直接の訴えが外部に発表されることはまれだ。今回の『創』の手記をぜひ多くの人が読んでほしい。

 連日繰り広げられるワイドショーなどの大相撲野球賭博報道は、例のごとく表層的でうんざりしていたのだが、7日朝のテレ朝「スーパーモーニング」など、ちょっと違ったアングルが目について面白かった。それは、この騒動の渦中で貴乃花親方が辞表を提出するという事件があったからだ。そもそも、今回のスキャンダルでは、貴乃花親方を支えていた「改革派」が壊滅状態になったとされるのだが、これが果たして偶然なのか、あるいは深い意味があるのか。これ、結構大事なポイントだと思うのだが、テレビはこれまでほとんどそこに触れなかった。
 それ以上に大事なのは、今回のスキャンダルがいったいどういう流れの中で噴出し拡大していったかなのだが、こういう分析もテレビはほとんどやっていない。周知のように、野球賭博騒動は、『週刊新潮』のスクープで火がついたのだが、ディ―プスロートというべき情報提供者がいたことは記事を読めばすぐにわかる。しかも、その後琴光喜の恐喝事件は立件され、捜査の進展とともに様々な事実が判明するのだが、最初の『週刊新潮』の記事の骨格は驚くほどしっかりしていたことが立証されていく。
 この時点では、たぶん相撲協会内部に、この機会に角界の膿を出そうと考えた者がいて、敢えて週刊誌に情報提供したのだろう、と思っていたのだが、そうではなかったことが後に判明する。それは、大嶽親方(元貴闘力)の告白によってだった。今回の騒動は、最初に琴光喜が自分が賭博で勝った500万円を回収しようとして動いて、逆に「口止め料」として1億円をよこせと恐喝脅されたというのが、『週刊新潮』の記事の骨格なのだが、この500万円云々は実は大嶽親方の話だったという。それがどうして琴光喜の話になったか、という事情を、大嶽親方は『週刊文春』7月8日号で詳しく説明している。
 実は、元ヤクザに恐喝されて困った大嶽親方は「知人から紹介された警視庁の警察官に一連の経緯を相談して、アドバイスしてもらいました」「ただ、相談した警察官には『自分ではなく琴光喜の件で』とウソをついてしまった。今となっては後悔するばかりですが、保身に走ってしまった。私が相談した方とは別に警察側の誰かが『琴光喜が賭博で脅されている』と『週刊新潮』にリークしたのでしょう。記事には琴光喜の名前が大きく出ています。これはまずい――そう思いました」
 これ、なかなか重要な証言で、つまり親方がついたウソがそのままスクープされたというのは、『週刊新潮』にリークしたのが警察筋であることを証明している。そのスクープがその後の捜査の方向に合致していたのも、そう考えれば当然のことだ。
 これでわかることは、今回のスキャンダルが、相撲協会は既に自浄能力を失い、外から揺さぶらない限り改善されない、と判断した警察の意志、大きく言えば国家意志によって火をつけられたということだ。ほぼ時を同じくして、「砂被り」席が暴力団に便宜供与されていたというスキャンダルも報道されるが、こちらも出所は警察だ。2つのスキャンダルは別のルートだったかもしれないが、いずれも警察発で、ある種の意図が働いていたことは明白だろう。
 問題は、角界と暴力団の関係にメスを入れようとした国家意志が働いたとして、果たしてこの騒動が向かう先は何なのか、ということだ。興味深いのは冒頭に書いたように賭博問題で告発され打撃を受けたのが、貴乃花親方を取りまく「改革派」だったことで、つまりこれは「角界の近代化」そのものが持つ矛盾を象徴的に示しているといえる。
 相撲界と天皇制はよく似た構造を持っている。つまり時代に合わせて近代化しようと手をつけ始めると、その本質を否定してしまいかねない矛盾に次々と逢着してしまう。膿を出して近代化を、といっても近代化自体が自己矛盾なのだ。だから今回の騒動に働いている意志が、果たしてどこに落とし所を見出そうとするのか。そこをきちんと見ないと、この騒動の本質を見誤ることになる。

 それからもうひとつ、今回のテレビ・新聞の報道で意図的に触れられていないのだが、例えば『週刊文春』7月1日号を読むと、「何十年も前から、麻雀、花札、将棋で賭けるのは、角界の日常風景でした」とか「ほとんどの力士が『こんなこと書かないよね』と記者たちの前でも堂々と賭けて、悪びれるそぶりもなかった」といった、相撲記者のコメントが載っている。つまり賭博は角界の体質にしみこんでいたし、相撲記者たちもそれを目にしてきたというのだ。でも、そうだとしたら、今になって連日のように大報道で力士たちを倫理的に断罪するマスコミも、過去一緒になってその体質を温存させてきたのではないか。様々な角界の不祥事がほとんど相撲記者会に所属していない週刊誌の告発から始まっている現実を、もう一度新聞・テレビは考えてみるべきではないのか。
 そのことに触れずにいまや掌を返したように正義や倫理をかざして追及報道を行うマスコミに、この構造的な問題を本質にまで切り込んでいく見識や資質があるのだろうか。そんな疑問を感じてしまうのだ。
 と、ここまで書いた時に、NHKが名古屋場所の中継をやめたというニュースが飛び込んできた。この騒動、いったいこれからどうなるのだろうか。  (7月6日)

 7月3日、上映中止騒動に揺れた映画「ザ・コーヴ」が全国公開となりました。今後、上映館はどんどん拡大していきます。京都・大阪などは混乱もなかったのですが、騒然となったのが渋谷と横浜でした。
この間、度重なる街宣攻撃にさらされた横浜ニューテアトルには、午後の部に右翼団体が現われ、警察部隊と対峙。「俺たちにも映画を見せろ」などと叫びながら右翼側は場内に入ろうとしましたが、警察が阻止。一時は怒声が飛び交う緊迫した事態となりました。


  RIMG0325.JPG   一方「主権回復を目指す会」が街宣にやってきたのは渋谷のシアター・イメージフォーラム。正午から街宣を行いましたが、それに抗議する市民や大勢訪れた報道陣、それに警備の警察などが入り乱れて緊迫が続きました。一時騒然となったのは、鈴木邦男さんが彼らに論戦を挑むために近づいた時で、狭い現場は大混乱。その渦中に、「主権回復~」のメンバーにマイクで顔面を殴打された鈴木さんが出血。警備にあたっていた警察が犯人を逮捕するかと思いきや、双方を引き離しただけで、鈴木さんが出血しているのを見てティッシュを渡したとか。おいおい、おまわりさん、そうじゃないでしょ(笑)。 RIMG0334.JPG

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

傘に「妨害はNG」と書いて右派団体に抗議する市民 RIMG0346.JPG

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 夜は新宿のロフトプラスワンで、右翼をまじえて討論会が行われました。壇上に登場したのは統一戦線義勇軍の議長らですが、会場には「主権回復を目指す会」のメンバーも訪れ、壇上・会場をまじえて激しい応酬。和歌山県現地からジャーナリストの吉岡逸夫さんもネット回線をつないで討論に参加するなど、熱い議論が交わされました。


 壇上の右翼メンバーも、映画「ザ・コーヴ」上映には反対ですが、映画館支配人の自宅へ行って家族を威嚇するという「主権回復を目指す会」の行動には批判的。そうした行動の是非をめぐって最後は激しい論戦となり、怒号と罵声が飛び交う、久々にロフトプラスワンらしい雰囲気となりました。動画がこちらにアップされていますので、関心ある方はぜひご覧ください。http://www.the-journal.jp/contents/info/2010/07/streaming.html

 昼間の映画館前での乱戦に始まって、夜遅くまで緊迫の論戦と、本当に関係者にとっては長く熱い1日でした。ちなみに映画はどの映画館も大きな反響で満席。これからは、映画を見た人による議論がなされるものと思います。
なお月刊『創』は7日発売の8月号で「『ザ・コーヴ』上映中止騒動」と題して大特集を組んでいます。この間、新聞・テレビの報道は事態のごく一部を紹介しただけですから、詳しい経緯はぜひこの『創』8月号をご覧下さい。http://www.tsukuru.co.jp/