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篠田博之の「週刊誌を読む」

話題になった2人のアナウンサー退職

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 この四月にテレビ局を辞めた二人のアナウンサーが話題になっている。ひとりは元NHKキャスター堀潤さんだ。『フライデー』4月19日号は、同誌の記事がきっかけになったとして、その退職劇を大きく報じている。

 その記事とは、同誌3月22日号「NHK『イケメン』堀潤アナが世に問う『反原発映画』」だ。昨年からアメリカに留学している堀さんが、現地で自主制作した映画を今年2月に上映した様子を紹介したものだが、「反原発映画」という見出しに局側が反応した。    

  堀さん自身が語っているところによれば、発売当日に局から事情を聴かれ、予定していた上映会の中止を命じられた。3月15日に帰国すると、成田空港に上司が待ち構えており、留学を終えて帰国後に予定していた番組収録が全てキャンセルになったと告げられた。翌日も上層部に呼ばれ話し合いを行ったが、決裂し、退職を決意したという。

 『週刊金曜日』4月5日号のインタビューによると、堀さんは原発事故以来、NHKを含めた報道のあり方への疑問をツイッターで発信して局側から注意を受け、2011年末に退職を考えた。一度は辞意を表明したが、慰留する声も上がり、一年間、海外で勉強することにしたという。

 そして今回、再び上層部と対立して退職に至ったのだが、堀さんは既にネットのニュースサイトを立ち上げ、新たなジャーナリズム活動を始めている。

 冒頭に書いたふたりのアナウンサーのもうひとりとは、フジテレビを退職した長谷川豊さんだ。ニューヨーク支局に勤務していた昨年、経費の使い方をめぐって降格処分を受け、この春退社した。その経緯については自分のブログで詳細に明らかにしている。

 従来なら週刊誌が大きく報じたような退職劇について、活字の報道が目立たないのは、既に詳細な説明がネットで、しかも当事者によってなされているからかもしれない。特に堀さんは、退職直後からネット番組に次々に登場した。二人とも、週刊誌などで面白おかしく書かれるよりはネットで自ら説明しようという意志が強く感じられる。ネットは既にメディア界を大きく変えつつあるようだ。

(月刊『創』編集長・篠田博之)