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篠田博之の「週刊誌を読む」

現職警部補の殺人事件で週刊誌に届いていた犯行声明

 昨年末、富山県警の現職警察官が殺人容疑で逮捕されたのには驚いたが、その警部補が犯行の後に『週刊文春』などに手記掲載を持ちかけていたという今回の話にも驚いた。   

その経緯を公表したのは十日発売の『週刊文春』1月17日号だ。「殺人警察官が本誌に送りつけた『犯行声明文』全文公開」と題して、経緯とともに、文書を公開している。

 昨年十二月に警部補が逮捕されたのは、八月にその犯行声明文が『週刊文春』から押収されたのがきっかけだった。匿名で送られたそのCD―Rを解析した結果、データ作成者として「カノタケシ」という名前が浮上。捜査情報を漏洩したとして十月末に逮捕されていた加野猛警部補が殺人事件でも逮捕されたというわけだ。

 ここで誰もが感じる疑問は、そのCD-Rが『週刊文春』に送られたのが犯行から二カ月後の二〇一〇年六月だというのに、なぜ二年余もそれが封印されていたのかということだ。その間、加野容疑者は二〇一〇年十月に自殺未遂を起こしている。へたをすると真相が闇に葬られていた可能性もあるわけだ。

 『週刊文春』に送られたのは「資産家夫婦殺害放火事件の犯人は私です」と書かれた文書だったが、犯行の経緯を書いた手記そのものでなく、手記を買い取ってほしいという内容だった。しかもその金額については、編集部から提示してほしいと書かれている。当時容疑者は二百五十万円ほどの借金を抱えていたというから、想定した金額は少なくとも百万単位だったろう。

 それに対して『週刊文春』は最初の回答を保留して次の接触を待った。文書には『週刊ポスト』『週刊現代』の二誌にも同じものを送ったと書かれていたが、結局、三誌とも、金銭提供が最初の条件になったため、二の足を踏んだわけだ。『週刊文春』の照会によりその文書の存在を知った富山県警は、当時から『週刊文春』に任意提出を求めたが、編集部が拒否。結局、文書は昨年八月に強制的に押収された。

 警察の任意提出要請を編集部が拒否するのは当然として、それが二年余も放置されていたというのはいったい何なのだろう。疑問を感じざるをえない。

(月刊『創』編集長・篠田博之)

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