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篠田博之の「週刊誌を読む」

美川憲一さん独立騒動の背景に演歌の窮状

 9月5日、歌手の美川憲一さんが会見を開き、新事務所の立ちあげを発表。一カ月近く続いた独立騒動が決着したことを報告した。

 騒動が起きたのは8月上旬。美川さんが25年間所属してきた事務所で、給料遅配でスタッフが退社、美川さんのギャラも未払いになっているとの報道がなされた。8月14日に美川さん本人が会見に応じて事実関係を認め、事務所社長側も週刊誌などの取材に応じた。社長によると、この2年ほど収入が激減し、「半年ほど前から金庫は空っぽでした」(女性自身9月4日号)というのだ。

 そんな中で『女性セブン』9月6日号は、この7月に美川さんの自宅が都税事務所に差し押さえられていたことを報じた。記事には「滞納分を支払ったため差し押さえは解除されているが、いずれにしても、彼が実はお金に窮していたことは事実だろう」とあった。

 週刊誌の報道によると、紅白歌合戦に出場できなくなった一昨年から美川さんの仕事が減って、事務所経営が赤字になったという。ただ美川さん本人は、会見で「仕事はそんなに減っていない」とそれを否定した。

 こういうゴタゴタで双方の言い分が食い違うのはよくあることだが、この騒動で気になったのは、背景に音楽業界をめぐる構造的な問題がひそんでいることだ。『週刊女性』9月4日号「美川憲一『紅白落選』で幸子と歩む演歌の茨道」には、芸能関係者のこんなコメントが載っている。「美川は最盛期の営業が年間250本あり、ギャラは当時最高ランクの1本800万円といわれていましたが、現在はその単価がウン百万円も下がりました」

 演歌というジャンルそのものが危機に瀕しているというわけだ。美川さんの事務所社長も記事の中で、経営悪化についてこうコメントしている。「震災もあったしね。減ったね。それは認める。演歌の人って、みんなそんな感じだよ」

 美川さんとの衣装対決で話題になった小林幸子さんの事務所騒動も先頃報じられたが、こうした騒動が相次ぐ背景には、やはり構造的問題があるのかもしれない。そのあたりを芸能マスコミはもっと掘り下げてほしい。

(月刊『創』編集長・篠田博之)

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