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篠田博之の「週刊誌を読む」

松下忠洋金融担当大臣の自殺と『週刊新潮』の報道

9月10日に松下忠洋金融担当大臣が自殺した。原因が発表されたわけではないが、2日後に発売された『週刊新潮』9月20日号と関わりがあるという見方が一般的だ。『フライデー』9月28日号はこう書いている。

「警視庁関係者によれば、松下氏の自殺の原因は特定できている。遺書などから、松下氏とは20年来の愛人関係にある、鹿児島在住のTさん(70)という女性の存在、そして彼女との愛人関係が公になるのを苦にした末の自殺だと断定したのだ」

確かに『週刊新潮』のその記事「73歳『松下忠洋』痴情果てなき電話と閨房」を読むと、松下氏が精神的に追いつめられたであろうことは想像がつく。21年間も不倫関係を続けてきたという70歳の女性の告発なのだが、読む者を赤面させるような松下氏の私的メールや手紙をそのまま公開しているのだ。

 記事によると、2人の関係は昨年頃からぎくしゃくし始めたらしい。最後に会ったのは今年5月26日で、その後松下氏は手切れ金として一千万円を提示したという。ただ、女性は記事の中でこうコメントしている。 

「お金なんて受け取りたくありません。今回、話したのは、裏表のある人間だと世の中に知ってもらおうと思ったからです」

 当の松下氏は、記事の中で「こういうトラブルは私の不徳の致す所です」とコメントしている。恐らくこの取材が行われたのは、締切直前の9日か10日だろう。松下氏は、その直後に自殺したことになる。

 告発した女性にとっても『週刊新潮』編集部にとっても、予想外の結末だったに違いない。女性側の一方的主張を、しかも松下氏に逃げ場を残さないような赤裸々な描写で書くことに問題はなかったのか。そんなことを思わないでもないが、あくまでも結果論だ。

 権力の座にある政治家の女性スキャンダルを暴くことは、新聞やテレビにできない週刊誌の真骨頂だ。そうやって政治家を失脚させることを「クビをとる」という。政治家のクビをとることは、週刊誌にとって最大の栄誉とされてきた。しかし、今回の結末は何ともやりきれない。

(月刊『創』編集長・篠田博之)

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