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篠田博之の「週刊誌を読む」

中国大使館一等書記官のスパイ疑惑騒動をめぐる謎

 いったい何だったのか、いまだによくわからないのが、5月末から大々的に報道された中国大使館一等書記官のスパイ疑惑騒動だ。

その裏の事情をめぐって、週刊誌では様々な論評がされている。

『週刊ポスト』6月15日号は、今回の騒動を「典型的な当局によるリーク報道」としたうえで、こう書いている。「不自然なのはスパイ活動の核心が判然としないまま、書記官と接触していた政権中枢の政治家の名が次々と漏れ、報道されていることだ」。野田政権に対する揺さぶりが行われているのではないかということらしい。

『週刊朝日』6月15日号の見出しは「『中国人スパイ事件』に踊らされた民主党"ダダ漏れ"体質」。公安警察に詳しいジャーナリストの青木理さんが、この一等書記官を「スパイでもなんでもない」としたうえで、こうコメントしている。

「日本の公安部は中国に対し、『お前らが何をやっているかわかっているんだぞ』というメッセージを送ると同時に、めったに注目されない自分たちの存在意義を示そうとした。そういう公安部的な論理が働いている気がします」

しかし一方で、同誌には作家・麻生幾さんの署名記事も掲載されており、そこでは今回の事件を「国家vs国家の"水面下の戦争"そのものなのだ」と、おどろおどろしい話が書かれている。

公安絡みの情報は、それが流された意図も含めて考える必要がある。その意味では、今回の報道についても裏読みが必要なのだが、各誌の記事を読んでもよくわからないというのが実感だ。

さて、そのほか興味深かった記事は『週刊ポスト』の「橋下徹『番記者』たちの挽歌」。橋下市長が連日行っている囲み会見をルポしたものだ。

質問する記者に「勉強不足だ」などと橋下市長が反撃するためか次第に厳しい質問を浴びせる記者が減り、大半がひたすらパソコンを打っているという。 

橋下市長も、自分の発言がそのまま伝わるテレビを重視し、しかも橋下市長が出ると視聴率が最低1%上がるとかで、テレビ側も重宝しているという。

これでいいのか、と『週刊ポスト』は書いている。

(月刊『創』編集長・篠田博之)

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