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自粛をめぐる議論活発

自粛をめぐる議論活発
4月3日掲載

 「本当に驚くほどの公演が中止になっています」。『SPA!』4月5日号にそう書いたのは、劇作家の鴻上尚史さんだ。震災後広がる自粛ムードについて論評しているのだ。
 「この時期に、演劇やお笑いをするのは『不謹慎』だからやめるというのなら、その『不謹慎』とはなんだろうと思います」
 『週刊新潮』4月7日号の特集タイトルはズバリ「『自粛自粛自粛』で日本が滅ばないか!」。記事によると「5月20日から22日に予定されていた東京・浅草の三社祭は中止。戦後初のことだという。8月13日に開催を予定していた『東京湾大華火祭』も中止」。隅田川花火大会も開催するか検討中という。
確かに、このところの自粛ムードはいささか過剰との印象を免れない。被災者のことを思うなら、イベント中止でなく、復興支援と銘打って震災について考える機会にし、収益の一部を寄付したらよいのではないか。
 気になるのは、この自粛ムードが、突出することで「不謹慎」と非難されるのを避けたいという集団心理によるものではないかということだ。前出の鴻上さんのコラムでは、日本社会の「世間」という概念に触れ、「『世間』が強くなることで、『不謹慎』の強制力が増すのは、とても困ったことだと思います」と書いている。
 さて『AERA』3月26日号の表紙が物議をかもしている。防護マスクの写真に「放射能がくる」というコピーが大書されたもので、不安を煽るものだとして、ネットなどで批判を浴びた。それを受けて編集長がツイッターで謝罪したことがまた話題になった。
 さらに、波紋はそれにとどまらなかった。次号4月4日号の同誌誌上で、劇作家の野田秀樹さんが、前号の表紙に抗議し、連載コラムの執筆をやめることを宣言したのだ。「自分が毎週連載をさせてもらっているアエラが、まさか、より刺激的なコピーを表紙に使い人々を煽る雑誌だったとは気がつかないでいた」
 同じ号で同誌編集長は、恐怖心を煽る意図はなかったが、不快感を抱いた方には「深くお詫び申し上げます」と書いている。震災報道の難しさを象徴した事例だ。
(月刊『創』編集長・篠田博之)

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